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第六話…格好つける生き物。

鶴羽が攫われてから3日後の夕刻。

桃太郎の住む納屋では…


桃太郎「勘解由小路…鬼ヶ島…獅子王…」


ブツブツと繰り返し3つの単語を呟き続けている。

すると上からいつものように拳骨が落ちて


爺さん「働けバカ息子!」

桃太郎「何しやがんだ!病み上がりだぞ!」

爺さん「金がねぇとまんま食っていけねぇんだよ!お前、結局桃をただ食いしただけじゃねぇか!!」

桃太郎「息子やってんだろ!?ワガママやってんだろうが!!!」


いつものように2人が歪みあっていると…

納屋の戸がトントンとなる。

婆さんは2人に出てくれと頼むが歪み合う2人は当然のように気が付かない。

婆さんは呆れた顔で客人を迎えにいき納屋の戸を開けると町の顔役…東條が立っていた。


東條「頼みがあって来た…。あんたらが知る限り強き者を紹介してくれないだろうか?金ならいくらでも払う!」


その言葉を聞いて爺さんと婆さんは思わず桃太郎へと目を送る。


爺さん「どうぞ…使ってやって下さい!!!」


桃太郎をすぐに差し出す。

しかし、婆さんは我に返り…


婆さん「汚いとこですが上がって下さい。まずは話を聞かせて頂けますか?」


東條を納屋へと招き入れる。

東條は町の顔役…自分たちの存在も息子が居らず孤立無縁なことも知ってるはずなのに訪れた訳を知りたかったのだ。

東條は爺さん婆さんに鶴羽誘拐の一連の出来事を話した。


東條「私は…このまま勘解由小路を野放しにすることは出来ない。やつにこの町と民を渡す選択を私はしない!だから、強き者を集い…鬼ヶ島を襲撃しようと考えているのです。そこで山中にも該当する者は居らぬかと思いお二人にも知恵を借りたく参ったのです。」


桃太郎は鬼ヶ島という言葉に反応していた。

東條が話終えると桃太郎が立ち上がる。

しかし、すぐに言葉を放ったのは婆さんだった。


婆さん「申し訳ございません。わしらはもう歳でね…そういった争い事にはご協力できない身。ましては知り合いなどおりません。」


そう告げると東條は残念そうな表情を浮かべ…


東條「突然の訪問失礼した。もし、誰か居たならば…明朝、私の屋敷に来てくれたし。とお伝えください。」


東條は一縷の望みをかけ、その場を後にする。

3人になって納屋の中には沈黙が流れる。

その沈黙を切り出したの桃太郎だった。


桃太郎「俺…行くよ。」

婆さん「何を馬鹿なこと言ってるの?さぁ、ご飯の支度を手伝ってちょうだい。」


と言いながら台所へと向かおうとする婆さん。


桃太郎「いや…俺…」

婆さん「お腹減ったんでしょ?なら、爺さんと野兎でも捕まえて来て。」

桃太郎「母ちゃん!!」


桃太郎の叫び声と共に婆さんのビンタの音が納屋を包む。


婆さん「行かせません!勘解由小路の連中とやりやって3日も眠っていた息子を誰が行かせたいと思うかい!どこに死地へと息子を向かわせる親がいるかい!」


再び納屋には沈黙が流れる。

婆さんは台所へと姿を消す。

思ってもいなかった婆さんからのビンタと強い言葉を言い放ちながら涙を流し悲しい表情に桃太郎はその場から動くことも出来なかった。

すると目の前に1本の刀がゴロンと落とされる。


爺さん「大したもんじゃないが…桃太郎、お前にやる。」

桃太郎「じじい…」

爺さん「どうせ、行くんだろ?男だもんな。俺は分からなくねぇよ。獅子王とかいう男に借りを返したいんだろ?けど、刀の一つも持ってないようじゃ話にならねぇ…。だから、俺が昔…」

桃太郎「ありがとよ…じじい。」


桃太郎、最後まで言葉を聞かずに納屋を飛び出して東條の後を追っていく。

その遠退いていく背中を見つめ…


爺さん「父親として俺に出来ることは…おめぇの背中を押すことだけだ。」

婆さん「どこからあんなものを?」

爺さん「昔、芝刈りしてて拾ったもんだよ。」


と言いながら、囲炉裏に炊いた火を背に眠りにつく爺さん。


婆さん「男ってのは、語りたいのか語りたくないのか…格好を付ける生き物だよ。つけたついでに火くらい自分で消せないものかね…。」


少し微笑みながら…陽が沈む中、消えていく桃太郎の背中をずっと見送る婆さんであった。

普段は舞台の出演・脚本・演出をやっています。

もっと多くの方に知って頂く機会と自分の可能性を少しでも追い求めて作品投稿を始めました

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