第四話…襲来する鬼の牙
座敷に寝転ぶ桃太郎。
その隣にこれまた寝転んでいる爺さん。
桃太郎「おい、くそじじい。」
爺さん「お前は口の利き方に気をつけろってんだ!」
爺さん、思わず立ち上がり桃太郎に拳骨を落とす。
桃太郎もそれに怒り立ち上がる。
桃太郎「てめぇ、何しやがんだ!?」
爺さん「てめぇじゃねぇ!この家に来てからもう1週間も経つってのに学ばないな!このクソ息子!」
息子という言葉を口にして、にぱー。と笑う爺さん。
それを見て軽蔑するような視線を送る桃太郎。
爺さん「なんて顔してんだ!桃太郎、父上様と呼んでみる!」
と言いながら爺さんが掴み掛かろうとするが…
桃太郎はサラッと躱し爺さんの頭を押さえ。
桃太郎「母ちゃん、帰り遅くないか?」
爺さん「なんで婆さんは母さんなんだよ!?…ん?」
いつも出かけたとしても2時間程度で帰ってくるはずの婆さんが家を出てすでに5時間ほどが経っていた。
あたりは少し薄暗くなり夜空と夕焼けのコントラストが美しくも少し不気味に見えた。
桃太郎「じじいは家で待ってろ。俺、ちょっと様子を見てくる。」
慌てて飛び出そうとする桃太郎。
爺さん「桃太郎!婆さんを…ワシの大切な妻を…頼んだぞ。」
桃太郎「…死ぬの?」
爺さん「てめぇ、この野郎!今いい感じだっただろうて!」
桃太郎が家の戸に手をかけた瞬間、戸は開く。
そこには恰幅の良い男と眼鏡をかけた男。獣の毛皮を身に纏う女が立っていた。
恰幅の良い男の肩には婆さんが担がれていた。
それを見て桃太郎は思わず構えた。
桃太郎「なんだ?てめぇ…」
言葉の途中で拳を振り下ろす大柄の男。
桃太郎、その拳を腕をクロスにし受け止め。
桃太郎「うちの母ちゃん…落としたら許さねえぞ?この野郎。」
「ほぅ…話に聞く実力は本物のようですね。凸守の攻撃を受け止めるとは…凸守、もう下がりなさい」
凸守「命令するな。蓼丸。」
と言いつつ後ろに下がる凸守。
入れ替わるように女が前に出てきて桃太郎の顔に自分の顔を寄せ口を開く。
「あんにゃババァが母ちゃん?笑っちゃうにゃ〜」
イラついた桃太郎はアッパー気味に拳を出す。
しかし、女は宙返りで攻撃を躱わし四つん這いの体勢から飛び掛かる。
桃太郎もその飛び掛かる姿に応じようと体勢を立て直す。
蓼丸「ちょっと待ちなさい。猫屋敷。それと…あなたも」
間に入った眼鏡をかけた男、蓼丸は猫屋敷の頭を押さえ桃太郎の首には針のように細く尖った剣を突き立てていた。
全く気が付かなかった。野生で感覚を研ぎ澄まして来た桃太郎ですら…唖然とさせられたのだ。
猫屋敷「いつもいつも死角から現れるにゃ!離せ!」
猫屋敷、蓼丸の手を振り払い凸守の隣にちょこんと座る。
蓼丸「すみません…文字通り、貴方の視覚を使っただけですよ?あの二人と比べて私は殺気むき出しじゃないですから」
桃太郎、突きつけられた剣を握り。
桃太郎「丁寧に説明ありがとよ。お前のやり口はもう通用しねぇよ。」
蓼丸を睨みつける。
蓼丸、眼鏡をあげる素振りを見せながら…
蓼丸「あらら…これは困りましたね。けど、大丈夫です。あなたは今死んでもらうので。」
握られた剣を真っ直ぐに突くように桃太郎側へとスライドする。
刃がない剣は、そのまま桃太郎を襲う。
桃太郎は胸に向かってくる剣の先を握ったまま右脚に体重を乗せ体を変え剣先を地面へと向かわせ、その力を利用し身体を反転させ左肘で蓼丸の背中を打ち付け蓼丸に膝をつかせ眼鏡が吹き飛ぶほどの蹴りを入れ。
桃太郎「視覚を利用すれば良いんだったよな?」
猫屋敷「おみゃー!」
と猫屋敷も桃太郎に向かい手についた鉤爪を上から下から左右に振り攻撃してくる。
それを躱し壁に追いやられる。
猫屋敷「もらったにゃー!」
猫屋敷は壁に追いつめた様子を見て力を込めた一撃を振り下ろす。
蓼丸「猫屋敷、だめです…。」
桃太郎、ニヤリと笑みを浮かべしゃがみ込む。鉤爪は納屋の板目に挟まる。
桃太郎「ここは俺の家だぞ?」
猫屋敷のお腹に掌底を入れ猫屋敷を跪かせる。
桃太郎「おい、てめぇの仲間はぶっ飛ばした。母ちゃん離して仲間担いで帰りやがれ!」
凸守、ゆっくりと立ち上がり肩に担いでいた婆さんを持ち上げ投げ捨てる。
桃太郎は婆さんの元へ走りなんとか掴むことに成功するが…そこを凸守の大きな拳が襲う。
桃太郎、万事休すかと思われたが…
凸守の拳は桃太郎と婆さんではなく違うものを捉えた。
婆さんが投げられた瞬間、桃太郎と同時に走っていた爺さんは凸守の狙いに気が付き2人を守る選択をしたのだ。
桃太郎の目の前を吹き飛ばされる爺さん。
桃太郎「じじぃ!!!」
爺さん「桃太郎…婆さんは無事か?」
額から血を流す爺さん、爺さんの元に婆さんを抱えて近づき横に下す。
桃太郎「この通り、あんたが守ったんだ」
爺さん「あんたじゃねぇ…父上様だろ?」
爺さん、笑みを浮かべゆっくり瞼を閉じる。
凸守「あぁ、もう邪魔だなぁ。」
再び、凸守の拳が桃太郎を襲う。
凸守の拳が桃太郎の額を捉える。
が、拳を引き痛がっているのは凸守だった。
桃太郎「おい…てめぇ…言ったよな?うちの母ちゃん落としたら許さねえってよ!」
桃太郎は額から血を流しながらも頭突きで受け止め拳を砕き
そして、その腕を掴み凸守の巨体を外へと放り投げた。
桃太郎は以前の野生で育った頃よりも狂気的な表情を浮かべ蓼丸と猫屋敷の髪を掴み、凸守同様に外へと追いやる。
桃太郎「てめぇら…生きて帰れると思うなよ?」
深くダメージを負った3人を喰らわんばかりに睨みつけ近づき拳を振り上げる。
だが、その振り上げた拳が振り下ろせない。
獅子王「そのあたりにしておけ。」
獅子王が桃太郎の手首を握っていた。
桃太郎はカッと睨みつけ問う。
桃太郎「…誰だ、てめぇ。」
獅子王「獅子王…ただの用心棒だ。」
桃太郎「離せ。じゃねえと…」
桃太郎、獅子王の顔を目掛け殴り掛かる。
手を離しスッと首を傾けて躱わし、再び殴りかかった拳に拳をぶつける獅子王。
勢いは相殺され、両者に2メートルほどの距離が出来る。
獅子王「まだやると言うならば…俺が相手になる。」
桃太郎「上等だ」
獅子王、桃太郎の姿をまじまじと見て。
獅子王「貴様、刀は持たぬのか?」
桃太郎「んなもん、いらねぇよ」
桃太郎、再び獅子王に襲いかかる。
懐へ低い姿勢から入った桃太郎はアッパー気味に拳を振り上げるが獅子王は刀の鞘で受け止め振り払い大きく開いた桃太郎の腹部を刀の柄で強打する。
それでも向かってくる桃太郎を躱し刀を抜き首元に峰打ちを浴びせ桃太郎は地面に突っ伏した。
獅子王「牙も持たぬ主では俺は倒せん。お前たち帰るぞ。」
蓼丸「しかし、獅子王さま!こやつを…」
獅子王「帰る…と言ったのが聞こえなかったか?」
蓼丸「…承知しました。」
それぞれが身体を気にしながら、納屋の前から去っていく。
帰っていく獅子王に向かい口を開く桃太郎。
桃太郎「許さねえ…。爺さんの分も…婆さんの分も…俺より強いことも…全部許さねえぞ。てめぇ、殺しに行くから首洗って待ってろ…。」
獅子王立ち止まる。
獅子王「俺は勘解由小路の館…鬼ヶ島。そこにいる。来るならば刀を持ち死ぬ気で来い。」
獅子王は再び歩き出し、その姿は納屋から見えなくなっていく。
桃太郎「獅子王…鬼ヶ島…。」
そう呟くと桃太郎は3日間眠るように気を失ったのだった。
普段は舞台の出演・脚本・演出をやっています。
もっと多くの方に知って頂く機会と自分の可能性を少しでも追い求めて作品投稿を始めました。




