第十三話…それぞれの理由(わけ)
飛猿・申を仲間に加えた桃太郎たちが勘解由小路の館に足を進めている中…鬼ヶ島では勘解由小路の部屋で勘解由小路が怒りを露わにしている。
勘解由小路「飛猿…よくノコノコと顔を出せたものだ。恩を仇で返す、この私に!何のために飯もろくに自分で調達できないガキを育ててやったと思っている…!」
扉の外から「勘解由小路様…失礼します。」と声がして降魔が部屋へと入ってくる。
降魔「飛猿の位置が掴めました。」
勘解由小路「随分と早かったわね。」
降魔「罠にかかりました。」
勘解由小路「仕留めたの?」
降魔「その場で仕留めるはずだったのですが…余所者の邪魔が入り、その場での決行とは至りませんでした。そして、飛猿はその者たちと共闘。恐らく、鶴羽を取り戻しに来た者たちかと…。」
勘解由小路「どんな連中だい?」
降魔「男2人、女1人。蓼丸たちの報告にあった名を耳にしました。」
勘解由小路「桃太郎…。」
降魔「如何なさいますか?」
勘解由小路「…このことを全員に報告。ここまで辿り着いたなら、私がまとめて相手してあげるだけよ。」
降魔、一礼すると颯爽と部屋を飛び出し各持ち場へと足を走らせた。
その降魔が出て行き扉が閉まる直前、降魔の目に飛び込んできたのは勘解由小路が不敵に笑う顔だった。
そして、その報告を受けたものたちの反応は様々だった。
気怠そうな反応を見せる者・殺意に満ち溢れる者・戦いに備える者…
獅子王は目を閉じ瞑想をしていた。
そこに赤鬼・青鬼が姿を見せる。
赤鬼「獅子王の旦那…俺たちに稽古をつけてくれ。」
獅子王は目を閉じたまま言葉を放つ。
獅子王「何を焦っている?」
青鬼「飛猿も帰って来た…それに桃太郎が向かってんだ!」
赤鬼「悔しいが今の俺たちじゃ役に立たない。」
獅子王「主らは何のために戦う?」
赤鬼「俺たちは住む場所もないどうしようもない、ならず者だった。そんな俺たちに生きる場所と家族を作ってくれたのは勘解由小路だ。だから、力になりてぇ!」
青鬼「血の繋がりはなくとも…黙って家族に手を出させるつもりはねぇ。」
獅子王が目を開け立ち上がる。
2人の目を見つめ無表情で問いかける。
獅子王「我々は…その家族を他者から奪って来た。その思いを踏み躙ってきておいて…都合の良い理由だな。」
獅子王の最もの言葉と冷めた表情とどこか冷たい視線に固唾を飲む2人。
獅子王はその姿を見て、その場を後にしようとする。
それでも強くなりたい2人は拳を強く握り思いをぶつける。
青鬼「俺たちの…俺たちの居場所を作るための犠牲だ!」
赤鬼「自分が生きるための…犠牲だ。」
獅子王、足を止める。
獅子王「生きるため…か。俺から主らに教えることはない。」
赤鬼「待てよ!あんたは何のために戦ってんだ!?」
獅子王、天井を見上げて口を開く。
獅子王「死に場所を求めて…。」
獅子王は2人から逃げるように遠ざかり姿を消す。
2人は顔を見合わせ理解できない様子。
そこに現れる妲己。
妲己「あんたらじゃ、あの男の思考が理解出来なくて当然だよ。」
青鬼「なんだよ…。」
赤鬼「じゃあ、てめぇには分かるのかよ?」
妲己「分からないさ。無敗の男…獅子王。あんな男がなんで勘解由小路の下についたのかも。」
赤鬼「金とかじゃねぇの?」
妲己が赤鬼を冷たい顔をして見つめる。
赤鬼「なんだよ?」
妲己「死にたい人間が金のために動くと思ってんのかい?恐らく、勘解由小路って人間がそれだけ危ない…否、危うい橋を渡ろうとしてる男だってことを見抜いているんだろうね。」
赤鬼「その橋の崩壊を待ってるだけって事か?」
妲己「…そうかもね。」
妲己はキセルを吹かしながら、どこか寂しそうな表情を見せる。
青鬼「あの野郎…!」
青鬼が勢いよく立ち上がり、獅子王の後を追おうとするが…。
妲己「行ってどうするんだい?」
青鬼「死にたいなら殺してやるんだよ!」
妲己「勝ち目は…?勝ち目はあるのかい?」
妲己が再びキセルを吹かしながら問いかける。
青鬼はその言葉に何も答えることは出来ない。
赤鬼に助けを求めるが赤鬼もそれに対して反応できない。
そんな2人を妲己は抱きしめて…。
妲己「あんたは馬鹿だね。ただ死ぬつもりはないから戦って来たんだよ。今回も奴は手を抜くつもりはない。目的の場所を求めて…。だから、今回も本気で刀を振るう。つまり、いつもと何も変わらない。鬼ヶ島は負けないってことだよ。」
青鬼「たまには…」
赤鬼「良いこと言うじゃねぇか。」
赤鬼・青鬼は悩みが晴れた顔をして戦いに備えるため再び持ち場へ戻って行く。
妲己「勘解由小路は…やらせない。」
キセルの煙が舞い、その煙に紛れ妲己は姿を消す。
それぞれが強い思いが交錯していく中で…
雨は上がり月上がりが勘解由小路の館を照らし始めていた。
普段は舞台の出演・脚本・演出をやっています。
もっと多くの方に知って頂く機会と自分の可能性を少しでも追い求めて作品投稿を始めました。




