第十二話…猿と申。
雨が降り注ぐ中、桃太郎たちは再び鬼ヶ島へと帆を進めていた。
先頭に白雉、桃太郎、少し離れて小犬丸で道を進む。
小犬丸は歩くのに飽きてきている様子。
小犬丸「おい、白雉…ほんとにこの道であってんのかよ!?」
白雉「うだうだうだうだ煩いなぁ。この道が見つからずに近づけるのよ!」
小犬丸「んなもん、片っ端からぶっ飛ばして進めば良いだろう!!」
小犬丸、刀を抜き振り回し始める。
白雉「バカなの!?体力温存!!こんなところでバテたら元も子もないでしょ?ねぇ、桃太郎!」
桃太郎も何故か刀を抜き、小犬丸に対して刀を構える。
桃太郎「一層、全員ぶっ飛ばした方が楽だな。」
小犬丸「お!稽古すっか!?」
小犬丸と桃太郎は手合いを始める。
白雉「あぁ…聞く相手を間違えた。」
呆れる白雉を尻目に2人は刀に夢中になっていく。
桃太郎に対して小犬丸に基本的な動きを叩き込んでいく。小犬丸は気が付いていた…基礎以外の応用を教えて型にハマってしまえば桃太郎の強さが発揮されない。
桃太郎の戦う才能は群を抜いている。
だからこそ、基礎だけを知れば誰も想像出来ない剣士になる。そして、刀に夢中になっている2人。
白雉が呆れて座り込むと隣に飛猿が座っていた。
白雉「だぁー!!誰!?」
飛猿に驚く白雉の声に反応する2人。
2人は刀を飛猿に向け突きに行くが飛猿は高く飛び上がり、それを躱わす。
飛猿「あれ?この道なら誰にも会わないはずなんだけどな…」
小犬丸の足を狙った切り上げを再び飛び跳ね、それを躱わす。その飛んだ瞬間を桃太郎が見逃さず袈裟斬りで身体を狙うが…飛猿は宙で身体を捻り、そのままバク転し桃太郎の刃も躱わす。
飛猿「せっかちだねー。それじゃ、女にモテないよ?な、嬢ちゃん?」
白雉「いや、知らないわよ!」
飛猿「まだ分からないかぁ…。」
白雉「なんか、こいつ腹立つなぁ。」
小犬丸「おい!俺たちを…」
桃太郎「無視してんじゃねぇ。」
2人はまた同時に掛かる。
袈裟斬り・突き・切り上げ…あらゆる攻撃を繰り出すが飛猿に刃は届かない。
2人の体制が崩れた瞬間、2人の間に瞬時に移動し2人が同時に出した刀を刀を抜かず鞘で受け止める。
桃太郎「何者だ?お前。」
飛猿「飛猿…君が大将だね?」
桃太郎「だったら…?」
飛猿「君を倒せば見逃してもらえるよね?」
白雉がハッと気がつく。
白雉「飛猿!そいつ鬼ヶ島の幹部だよ!」
桃太郎、小犬丸の2人は一気に距離を取り警戒を強め構え直す。
小犬丸は思う…自分の長刀に対して初見でこれほどの反応をされたことはなかった。
鬼ヶ島の幹部が全員このレベルだったとしたら勝機はあるのか…と。
そう考えていると飛猿が小犬丸の方に一歩踏み出す。小犬丸はそれに反応し刀を振ると桃太郎に一気に近寄る。小犬丸の方に踏み込んだのは、ただの助走だった。
桃太郎の腹部に拳を打ち込もうとするが、桃太郎はそれに反応して手でその拳を落とす。
飛猿「ありゃ?」
飛猿が体制を崩したところに刀を振るが飛猿は左手で支えそれを躱し、身体を捻り次は足を狙い蹴りを打ち込みに行くが桃太郎が飛び跳ね躱しながら踵を落とす。
その踵落としを両手をクロスし受け止める。
飛猿「やるねぇ…。」
桃太郎「お前は、まぁまぁだ。」
両手を上に跳ね上げ、桃太郎は体勢を崩す。
飛猿はその隙を見逃さず桃太郎の顔へ蹴りを浴びせにいく。が、桃太郎はその勢い活かしてバク宙に入り躱わす。桃太郎が着地したと思うと突きの構えに入り、そのまま飛猿に突っ込む。
飛猿、躱わすのがギリギリになり頬を刃が掠める。
飛猿も思ってないスピードに驚きを隠せない様子。桃太郎が飛猿に向かい構え直すと…
飛猿「参った、降参。」
と飛猿は座り込む。
突然の降参に呆気を取られる桃太郎一同。
小犬丸「ふざけるな!やられっぱなしで終われるか!」
桃太郎「じゃあ、そのまま座ってろ。すぐ楽にしてやるよ。」
桃太郎、飛猿に近づき刀を振り上げる。
小犬丸「待った待った!」
桃太郎を抑える小犬丸。
小犬丸「おい〜、なんで?男なら正々堂々的なカッコ良さあるじゃない?」
桃太郎の刀を奪う白雉。
白雉「こいつは殺されても仕方ない存在。私がやる。」
白雉が飛猿に対して刀を振り上げる。
その刀の刃を桃太郎が握り振り下ろさせない。
白雉「離して!こいつは私がやる!」
白雉が力づくで刀を振ろうとするが桃太郎は離さない。
桃太郎「お前…変だぞ?」
白雉「…はぁ?」
桃太郎「なんか、らしくねぇ。」
飛猿「嬢ちゃん、何があった?」
小犬丸「あんたは今絶対しゃべっちゃダメ!」
桃太郎「こいつとの間に何があったかはわからねぇ。ただ、お前がこいつを消して欲しいなら俺が今すぐ消してやる。」
桃太郎の握った手から溢れる血が刀を伝い白雉の手に流れてくる。
白雉はハッとし思わず刀を離す。
桃太郎「どうする?殺すか?」
白雉「…。」
桃太郎「よし、殺す。」
桃太郎、再び飛猿へと刀を向け振り下ろす。
白雉「やめて!」
桃太郎の振り下ろした刀は飛猿の首まで数センチのところで止まる。
白雉「話も聞かず殺したら…鬼ヶ島の連中と変わらない。」
飛猿「ありがとな、嬢ちゃん。」
桃太郎は少し離れて座り込む。
飛猿「ちなみに、俺はもう鬼ヶ島の幹部ではなく鬼ヶ島に追われる身。俺が鬼ヶ島に居たのは、もう8年も前の話だ。その時に巻き込み傷つけた人間の1人なら…申し訳なかった。」
白雉「8年前!?じゃあ、私の家族とは関係ない!?そんなはず…だって、飛猿って名乗ってた!」
飛猿「おそらく、俺が逃げた事実を世間に知られないため…誰かに俺の名を名乗らせたんだろうなぁ。」
白雉「じゃあ、あんたは私の復讐に無関係だって言うの?」
飛猿「復讐?あんたたち、鬼ヶ島を潰しにいくんだろ?」
桃太郎「あぁ、勘解由小路の館。そして、獅子王をぶっ飛ばす。」
飛猿「丁度良い!俺も勘解由小路を潰しに帰ってきた。一度、下山して仲間を募ろうと思っていた。良き出会いだ。」
桃太郎「白雉…良いか?」
白雉「…。」
「おい…。」
知らない声が聞こえ、フードを被った者が奇襲を仕掛ける。気が動転した白雉の反応が遅れ、その者の短刀が白雉を襲う。が、飛猿が割って入り短刀を持った手を下から手でかち上げ牽制の蹴りで相手を遠ざける。
飛猿「これで信用してくんない?嬢ちゃん。」
「何者だ?ここらで見ない顔だ。」
小犬丸「んなことが聞きたいだけなら、普通に話しかけてくれないかな?姉ちゃん…。」
小犬丸が素早い動きでフードを被った女の後ろに回り込もうとする。
警戒したところを自慢の長刀を振り後ろに大きく下がったところに桃太郎が立っていた。
フードを被った女は桃太郎にぶつかり振り返ろうとするが桃太郎の強烈なボディブローはすでに腹部を捉えていた。
吹き飛ぶフードを被った女。
桃太郎「てめぇこそ誰だ?」
「貴様ら、勘解由小路の者か?」
桃太郎「そりゃ、お前だろ?」
「違う…!私は奴らを許さない!」
桃太郎「知らねーよ。俺の仲間を殺そうとしたんだ…覚悟出来てんだろうな。」
刀をフードの女に向ける桃太郎。
その間に小犬丸が入り
小犬丸「バカ!お前、何回同じことやるんだよ。」
桃太郎「ちっ。」
桃太郎、離れて行く。
小犬丸「舌打ち!今、舌打ちした?」
白雉「小犬!うるさい!お座り!」
小犬丸、何故か咄嗟に正座する。
白雉「それで…やつらが許せないって訳を聞いても良い?えーっと…」
「申。昔はこの山は平和だった。奴らがこの山に来るまでは…。」
白雉「そうだね…。」
申「この山は元々、争いごとなんてなく皆が分け合って暮らしていた。そんな場所を奴らは突如現れて全てを奪った。山も金も食料も…命も…。」
一同が少しの間、沈黙が走る。
申「私は家族を奪われた。だから、私は奴らから全てを奪い返す!」
小犬丸「そうか!じゃあ…」
飛猿「一緒に来るかい?」
申「…え?」
小犬丸「こいつ…!!」
飛猿「大将…構わないかい?」
桃太郎「大将やめろ。桃太郎で良い。」
桃太郎、申に近づいていき。
桃太郎「お前は…俺の役に立つか?」
申「…。」
桃太郎「お前が俺の役に立つならついて来い。俺が…全員殺してやる。」
申「…うん。」
飛猿「さてと…それじゃあ、行きますか?」
白雉「うん!仲間も十分…雨足も弱くなってきたし!」
桃太郎「申、もう少し楽な道はないのか?」
申「あるよ。」
白雉「え!」
申「こっち。」
申を先頭に再び桃太郎たちは鬼ヶ島に進んでいく。
小雨になってきたが、それでも雨は降り注ぐ。
普段は舞台の出演・脚本・演出をやっています。
もっと多くの方に知って頂く機会と自分の可能性を少しでも追い求めて作品投稿を始めました。




