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第十一話…止まない雨はない。

一方、その頃…鬼ヶ島では凌と蘭が鶴羽を攫い戻り、獅子王たちは桃太郎襲撃を報告のため住人たちが集っていた。そこに降魔と雲母の姿はない。


勘解由小路「さすがじゃな〜い。あなたたちに任せて正解だったわ。」

凌「当然のことです。」


凌、赤鬼をグッと見つめる。


赤鬼「見下してんじゃねぇ!」

蘭「この程度の小娘攫うくらいなら田中(たなか)でも出来たよ。」


アフロヘアーにメガネをかけた見窄らしい格好の男がひょこりと顔を出す。


田中「今、比較した?俺が1番使えないって?そういう例えだよね?」


集合した鬼ヶ島の面々が静まる。

勘解由小路の「田中!」という大きな声が鬼ヶ島に響き渡る。

この光景は、田中と絡みたくない田中と絡めばスベる。田中と絡んでも旨みがないことから鬼ヶ島に出来た風習・日常であった。

田中はしゅんとしながら、ゆっくりと列に帰りちょこんと座る。


勘解由小路「獅子王の旦那…それで小僧の方は黙らせて来たの?」

獅子王「一応な。」


笑みを浮かべる勘解由小路。


勘解由小路「じゃあ、私たちの恐ろしさは十分伝わったのなら…」

凸守「むしろ、逆です。」


勘解由小路の言葉に口を挟み凸守が前に出る。


勘解由小路「逆?」


獅子王に付き添っていた蓼丸・猫屋敷も勘解由小路の前に出て来て。


蓼丸「はい、獅子王様が居なければ私たちだけでは…」

勘解由小路「私たちだけでは?」


勘解由小路が今にも蓼丸を殺さんとばかりにグッと睨みつける。

そこにすかさず手を差し伸べる猫屋敷。


猫屋敷「返り討ちだったにゃ!」


猫屋敷に勘解由小路は扇子を振り上げ…手にポンと置くと。


勘解由小路「あ、そう」


全員が想像した展開にはならず安堵の表情を浮かべる。

そこにはだけた着物姿のロングヘアを簪で止め唇の下にホクロが一つ。その口にキセルを咥えた妖艶な美女が現れる。


「随分とやるようだね?そのガキ。」

蓼丸「妲己(だっき)…。」

妲己「あんたたちを認めてるからこその言葉だよ。有り難く受け取れば良いじゃないか?」

凸守「次はひき肉にしてやるよ。」

獅子王「ひき肉にされるのは凸守…お前だ。」

凸守「なっ!」

獅子王「なんだ?」


凸守、思わず立ち上がり獅子王の前に立つがその威圧感から何も出来ず硬直してしまう。


獅子王「奴は強い。認めろ。」


空気が張り付く中、勘解由小路が再び口を開く。


勘解由小路「ま、良いわ…。その小僧が出張るなら分からせるだけのこと。ひとまず、凌…土産を見せて頂戴。」

凌「はっ」


凌が姿を消す。

と同時に降魔と雲母が現れる。

息の荒い2人の様子。


降魔「飛猿が…帰って来ました。」


空気が張り詰め、獅子王以外の者たちが目を見開き反応する。


青鬼「あの野郎が…」

妲己「今更何しに…?」


ザワつく鬼ヶ島の面々。

それもそのはず…飛猿は勘解由小路のお気に入り。その刀の腕はもちろんのこと、実力を示し勘解由小路の右腕にまで上り詰めた男だったのだ。


勘解由小路「それで?飛猿は?」

雲母「あいつ逃げた!逃げだよ!」


勘解由小路、降魔を殴りつける。

止まらない勘解由小路は蹴りつけ踏みつけ降魔に言葉を浴びせる。


勘解由小路「何してんだテメェは!殺してでも連れてこい!次は…分かってんだろうな?」


勘解由小路、降魔の首に刀を突きつける。


降魔「はい…。」


降魔に駆け寄る雲母。

勘解由小路の怒りは明らかに今まで以上のものだった。

子供の頃から育て上げた飛猿の帰郷。

それがいずれ脅威へと変わることを勘解由小路は察知していたのだ。


妲己「勘解由小路様…落ち着いて。」


妲己が勘解由小路を抱擁し口付けをする。

勘解由小路も少し我を取り戻す。

すると凌が鶴羽を連れて現れる。


凌「勘解由小路様、この奴が東條の娘…鶴羽で御座います。」


勘解由小路、ふぅーっと一息ついて。


勘解由小路「可愛らしい顔…捻り潰したくなるねぇ。」


勘解由小路は鶴羽の頬を強く握る。

まじまじと見て目が見えていないことを確認。

すると刀が倒れる音が聞こえる。

目線がそちらにいき、鶴羽を見る視線は一気に獅子王へ。


獅子王「すまない。続けてくれ。」


すると鶴羽が口を開く。


鶴羽「ここが…鬼ヶ島?雨だと月は見れませんね。止むといいですね…雨。」

勘解由小路「これはね…祝福の雨よ。私たちの勝利の。」

鶴羽「けど、止まない雨はありません。」


逆撫でされて、勘解由小路が再び苛立ちを見せる。

抜刀し鶴羽に刀を振り翳す。

目の見えていない鶴羽は避ける素振りを見せるはずもなく刃が鶴羽を襲う。

が、獅子王が鞘で刀を止め。


勘解由小路「何してくれてるの?獅子王の旦那〜。」

獅子王「これは交渉材料…傷をつけるどころか殺してしまっては勝利もないぞ?」


刀と鞘が押し合うキリキリとした音がゆっくりと消える。

勘解由小路が刀を引き鞘に納める。


勘解由小路「ところで…あなたの父親はいつ頃迎えに来ると思う?」

鶴羽「来ません。父は。その代わり、あなた達を倒せる方々を向かわせているはずです。」

勘解由小路「ふふふ…父親のことをよく理解してるのね。如何にも金持ちの考えそうな事だわ。」

鶴羽「月明かりがさす頃…あなた方は痛い目を見る。人々を苦しめ、モノを奪い、命を奪う…あなた方は…」

妲己「何も知らないくせに。」


鶴羽の物言いに口を挟む。


妲己「何も知らないくせに語ってんじゃないよ!この人が何のために奪って来たかも知らないくせに!」


妲己が鶴羽に向かっていくのを降魔の合図で押さえに入る赤鬼・青鬼。


鶴羽「訳があれば奪って良い理由にはなりません。」

妲己「この小娘!!!」


妲己は赤鬼・青鬼を振り払おうとしている中…

勘解由小路が妲己と鶴羽の間に入り


勘解由小路「田中…この子を独房へ。丁重に扱うのよ?」

田中「はい!お任せ!お任せ!世界が俺を…」

勘解由小路「早くいけ?殺すよ?」


田中、慌てて鶴羽を連れていく。


蘭「攫う時から思ってたけど…肝が据わってるよ。あの女。」


勘解由小路が全員に背を向け、実質に足を伸ばしながら…


勘解由小路「それじゃ、各持ち回りに戻りなさい。どんな人間が来ようと此処は勘解由小路の館…鬼ヶ島。侵入者は全員排除しなさい。」


鬼ヶ島の面々の表情がグッと引き締まり「はっ!」という声で全員がバッと居なくなる。

自室へと戻る勘解由小路。

館の外へと出ていく獅子王。


獅子王「あの娘…。」


とボヤき何かを考えながら獅子王は雨の降る天を見つめる。雨が獅子王を打つ。

そして、獅子王は目線を下の山を見つめ…


獅子王「来るか…小僧。」


雷鳴が鳴り響く。

雨が止む気配はない。

普段は舞台の出演・脚本・演出をやっています。

もっと多くの方に知って頂く機会と自分の可能性を少しでも追い求めて作品投稿を始めました。

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