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84. その後の出来事

 ~ ガントル ~


「セレス様!」


 間に合わなかった。そう思った。

 ぐったりと倒れ込むセレスと、それを見下ろすアリス。セレスの身体は焼き焦げ、もう見るからにボロボロの状態であった。


「セレスの嬢ちゃん!」

「セレス様!」


 呆然と立ちすくむガントルを差し置いてセレスとアリスの間に割って入ったのは、ガントルの頼もしい仲間であるウーロスとドリトルであった。


「ウーロス………ドリトル………」

「アリス様………」


 ドリトルはアリスと対峙するも、ウーロスはアリスを気にせずセレスの容態を見る。そして何を思ったのか、セレスの身体を掴み上げて後方に投げ捨てた。


「ガントル!エルザ!嬢ちゃんを頼んだ!まだ死んでねえ」

「「!?」」


 投げ飛ばされたセレスの身体。それを優しくキャッチしたのはガントルであった。

 セレスの容態を見る。確かに息も絶え絶えであるが、まだ心臓は動いている。まだ自分の主君は生きているのだ。


「―――わかった。任せろ」

「了解。ウーロス」


 ガントルはいつの間にか流れていた涙を拭い、決意の表情を新たにする。

 共に呆然としていたエルザも自分を取り戻し、ウーロスの言葉に従う。


「セレス様。私がお守りします」


 セレスを抱きかかえたガントルは、そのまま踵を返してエルザと共に駆け出した。ウーロスとドリトルを置いて。


「僕たちは足止めか」

「だな。名誉なことだ」


 ドリトルの言葉にウーロスが苦笑いする。こいつらも口では生意気でも、れっきとしたセレスの忠実な従者なのだ。


「すまん。ウーロス、ドリトル」


 ただただ走るガントル。その瞳には涙が浮かんでいた。








 魔王アリスから逃げ、セレスを安全な場所まで連れて行ったガントルとエルザ。

 一先ず安全な場所に逃げ込んだものの、セレスは虫の息である。このままではセレスは死んでしまう。ウーロスとドリトルは無駄死にになってしまうだろう。


「くそっ!セレス様を救うにはどうすれば………!」


 悔しさのあまり地面を叩きつけるガントル。

 どうしてアリスは魔族を裏切ったのか。どうしてセレスが死なねばならないのか。そんな考えが頭をぐるぐると回る。


 そんな状態のガントルを尻目に、エルザは1人考えている。

 何か案があるのだろうか。1人顔を俯けて、真剣に考えこんでいる。


 そして、何かを決意したようにエルザは口を開いた。


「―――ガントル。セレス様を救う方法が1つだけあるわ」


 ガントルはエルザのその言葉に顔を跳ね上げ、慌てたような様子でエルザに詰め寄る。


「本当か!?そんな方法があるのか!?」


 必死にエルザに詰め寄るガントル。それほどセレスの事が大事なのだ。


「ああ。たった1つだけ、魔族の未来を繋ぐ方法よ」

「なんなんだそれは!?もったいぶらないで早く教えてくれ!」


 慌てるガントルにエルザが伝えた方法は、驚きの方法であった。


「エルフの秘術でセレス様の魂を未来に送ります」

「―――は?」


 エルザの言葉をいまいち理解できなかったガントル。

 魂を未来に送る。一体どういう事なのであろうか。


「今から100年後の未来に、セレス様に相応しい眷属が産まれます。その時代に合わせて、セレス様を未来に転生させるのです」

「―――つまり、眷属がいる時代にセレス様を転生させるという事か」


 エルザからの説明でガントルはようやく理解した。

 この時代には魔王の眷属がいなかった。その所為で、魔王の力は半減していたと言っても過言では無いのだ。

 だが未来になら、セレスの眷属がいるという。100年耐えれば、再び立ち上がったセレスの手で魔族が救える可能性があるのだ。

 そして、セレスの魂もこの時代で死ぬことは無いのだ。


「そんな事が可能なのか?」

「ええ。―――私の命と引き換えに」

「!?」


 ガントルはエルザのその言葉に目を見開いた。

 つまり、その術を使えばエルザは死ぬということだ。


「本気か?」

「ええ。本気よ」


 ガントルはエルザの目を覗き込む。エルザの目は真っすぐにガントルの目を見つめ返した。瞳は綺麗な緑色で、決意と覚悟によって光り輝いていた。


「そうか」


 エルザが本気であるとガントルは理解した。セレスは本当に従者たちに慕われている。


「ガントル。セレス様から記憶を抜き出す。その記憶をあんたが守って」


 エルザからの最後の頼み。100年後まで生きて、転生したセレスにその記憶を届けて欲しい。そういう頼みだ。


「無茶言うな。100年なんて、寿命越えてるぞ」

「あんたならできるでしょ?」


 エルザはそう言ってケラケラと笑う。ガントルはそれに釣られてガハハと笑う。


「承知した。セレス様の記憶は私が守ろう。ついでに、その眷属とやらの実力も俺が試してやろう」

「はは。あんたなら眷属を殺しかねないわね」

「軟弱な奴ならそうするか」


 エルザとガントルはそんな会話をして、2人目を見合わせて笑い合った。

 最後に残った従者2人の、最後の会話だ。


「じゃあねガントル」

「ああ。後は任せろ」


 エルザはそう言って、その命と引き換えにセレスの魂を未来へと送った。







 1人取り残されたガントル。その手の中には綺麗に光り輝く水晶があった。


「セレス様。命に代えても、守って見せます」


 その後ガントルは、実に1000年もの間、セレスの記憶を守り続けるのであった。

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