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35. 夜空の青炎襲撃作戦!

 ようやく人狼化したマーロンふれあいタイムも終わり、本題に戻ったマーロンたち。今のマーロンの身体は人間の姿に戻っており、人狼化した後は上半身の服が弾け飛ぶので、現在上半身裸である。セレーネとグレイスとアンナがちらちらとマーロンの上半身を見てくるが、マーロンは気にせずに話を続ける。


「青山はアンナたちを見て、すぐに栗原組だと気付いていたな?なんでだ?」

「実は、栗原組と夜空の青炎(よぞらのせいえん)は現在抗争中なんです」

「へえ。なんでだ?向こうから仕掛けられたのか?」

「いえ。王都に蔓延(まんえん)するドラッグ。そのほとんどが夜空の青炎(よぞらのせいえん)によるものなんです。それで我々から仕掛けました」

「ああ、なるほど」


 栗原組は以前、王都の治安を良くするために動いていると言っていた。その一環でドラッグを流している夜空の青炎(よぞらのせいえん)に抗争を仕掛けたのだろう。


「お前らも意外と好戦的だよな」

「栗原さんに教え込まれましたので」

「………」


 アンナのそんな答えをマーロンは無視する。確かに教え込んだのはマーロンだったため超図星である。


「あ、あの………さっきから気になってたんだけど、マーロンと栗原組の関係って?」


 そんなマーロンとアンナの話を聞いていたグレイスが恐る恐る尋ねてくる。確かにグレイスにはまだ栗原組との関係を教えていなかった。


「栗原組は私が作った組織なんです。グレイス様」

「えっ………!?ってことは、マーロンがボス?」

「もう引退してますので、ボスはアンナです」


 グレイスはようやく合点がいったというような表情で手をポンとたたく。


「仲良さそうと思ってたら、そういう事」

「仲良しとは少し違いますけどね………」


 あくまで元上司と部下の関係だ。今栗原組と繋がっているのも、ビレッジ公爵の意向の方が大きい。


「最近の王都のボヤ騒ぎ。実はあれ、ほとんどが我々の系列店なんです」

「そうなのか。意外と手酷くやられてるな」

「そうなんですよ。堅気(かたぎ)にも迷惑をかけてしまって………」

「気に入らねえやり口だな」

「直接我々とやり合うのを避けてるみたいです。まあ、それももうすぐ終わりですけど」


 アンナはそう言ってニヤリと笑う。


「何かあるって顔だな?」

「はい。既に奴らの本部とドラッグ製造工場は突き止めてます。近々、カチコミをかけます」

「ほう。面白そうな話だな」


 アンナに釣られてマーロンもニヤリと笑う。


「グレイス様。なのでご安心ください。グレイス様の両親の仇は我々が殺しますので」


 アンナにそんな事を言われ、少し渋い顔をするグレイス。何か思うことがあるのか、静かに拳を握り締める。


 そして、思い切ったかのように立ち上がり、グレイスは言う。


「ダメ。青山は私が殺す」


 そう全員に宣言した。だが、それに待ったをかけたのはマーロンであった。


「無理ですグレイス様。諦めてください」

「―――どういう意味?」

「一度戦ったんでしょう?なら、その実力差はわかっているはずです」


 マーロンからの辛辣(しんらつ)な言葉に、グレイスは唇を噛む。


「だからって諦められない。青山は両親の仇なんだよ?」

「弱い人間に復讐する権利はありません。弱者は強者に搾り取られる。それが世界の真理です」


 マーロンの更なる口撃にグレイスは目を見開いた。マーロンから浴びせられる辛辣な言葉の数々に、ショックで放心してしまう。


「じゃあ、どうすればいい?………」

「弱者に復讐の権利はない。強者に(むさぼ)り取られるだけ。ならば弱者にできる事は1つ。更なる強者に(こいねが)うことです」

「希う?」

「はい。幸いにもここには青山を殺せる戦力が揃っています。彼らであれば、グレイス様の前に簀巻(すま)きにした青山を差し出すことができるでしょう」


 マーロンが言いたかったのはこれだ。

 グレイスはセレーネの友人だ。無謀な特攻でその命を散らして欲しくはない。だからこそ、自分や他の駒を有効に活用して欲しい。そう思っているのだ。

 この場には折角駒が揃っている。それも飛車角級の戦力だ。これを利用しない手は無いのだ。


「私は準備できています。セレーネお嬢が許可をくださるのであれば、私は喜んでグレイス様に協力します」

「………」


 グレイスはそんなマーロンの言葉を真剣に聞き、咀嚼(そしゃく)する。

 確かにグレイスだけでは青山には絶対に敵わない。前回のようにボコボコにされるのがオチであろう。

 だが、マーロンであればどうだ?彼なら青山をとっ捕まえるくらいは容易にやってくれそうだという信頼感がある。


 青山のことはグレイス自身の手で復讐を果たしたいという思いはある。しかし、マーロンの言う通り、弱者にはそれを望む権利などないのだ。

 今グレイスにできる最大限は、マーロンという戦力を自身の力として利用することなのだ。


「わかった。確かにマーロンの言う通り」


 グレイスはそう言って、セレーネの方を向いた。


「セレーネ。マーロンの事、また貸してくれる?」

「グレイス、本気ですか?」

「うん。本気だよセレーネ」


 真剣な目で言うグレイスの目をセレーネが見つめる。そして、セレーネも決意したかのように言う。


「わかりました。大切な友人の頼みですし、マーロンも既にその気のようです。―――ただし!条件があります!」

「条件?」

「そのカチコミ?とやらには私も同行します」


 そんなセレーネの言葉に待ったをかけたのはアンナである。


「はぁ!?ちょっと待ってください!なんで勝手にカチコミについて行くことになってるんですか!これは栗原組と夜空の青炎(よぞらのせいえん)の戦争ですよ!?」

「グレイスの仇を横から掻っ(さら)おうとしてるのは栗原組です!」

「こんの箱入り娘がぁ!相手は腐っても闇ギルドですよ!!」


 流石のアンナもこれには口調が荒くなってしまう。カチ込む相手は腐っても闇ギルド。それも特殊な力を持った転生者が率いる闇ギルドだ。危険が大きすぎる。


「栗原さんも!何とか言ってください!!セレーネ様が危険に晒されるんですよ!?」

「お嬢がそう決めたんなら付き合うさ。俺は全力で2人を守るだけだ」

「そうでした!あなたはそういう人でしたね!!」


 (あき)れるかのように吐き捨てるアンナ。親分が死ねと言えばそれに従う。親分が心中しろと言ってもそれに従う。親分が言う事は絶対。全てマーロンからの教えである。


「アンナ。お願い」


 そう懇願(こんがん)するグレイスの声。その言葉に遂にアンナが折れる。


「わかりましたよ、もう………セレーネ様に傷でもつけたらビレッジ公爵に何と言われるか………まぁ栗原さんが一緒なら、そんな事はあり得ないでしょうけど」


 頭を掻きながら、諦めたように言うアンナ。ちょっと無理を言ってしまったかもしれない。


「その通りだ。お嬢とグレイス様には俺が付く。傷1つ付けさせないさ」

「わかりました。同行を許可しましょう」

「ありがとう、アンナ」


 アンナとしてはビレッジ公爵から支援を受けている関係上、セレーネを同行させたくは無かったのだろう。万が一傷でもつけようものなら、ビレッジ公爵からの支援も打ち切られるかもしれない。


「マーロン。悔しいけど、私では青山に敵わない。お願いできる?」

「もちろんですグレイス様。あなたの前に、四肢を捥いだ青山の身体を盛りつけて差しあげますよ」

「ふふ。酷い言葉」


 クスリと笑うグレイス。その笑顔は小動物のようで可愛らしい。


「ちょっと待ってくださいマーロン!お嬢様が同行するなら私も同行します!」

「ヒルダさんも?」

「当然でしょう?私もセレーネ様の従者です。同行しないはずありません」


 そう言い切ったヒルダ。


「だから、私の事も守ってくださいね。マーロン」

「わかりました。大船に乗った気持ちでご同行ください」


 蠱惑(こわく)的な笑みでマーロンにお願いするヒルダ。色っぽ過ぎて即答してしまった。


「それで、作戦はどうするんだ?」

「まず初めにドラッグ製造工場の方に仕掛けます。そこに敵の戦力を引き付けた後、少数で本部を叩きます」

陽動(ようどう)か」


 古典的な作戦ではあるが、それ故に単純明快で効果的な作戦だ。


「特に青山は臆病者です。あまり表には出てこない。工場が襲撃されても、本部から出てこない可能性が高い」

「青山は本部に居座る可能性が高いって事だな」

「はい。ですので、本部へは栗原さんたち4人に私が同行し、ドラッグ製造工場にはミランダを中心に襲撃させます」

「ミランダを中心にして大丈夫か?」

「大丈夫です。オツムはアレですが、部下からの信頼感も熱い。必ずやってくれますよ」

「了解。なら任せるよ」


 当のミランダはこの話し合いが始まった当初からいびきをかいて眠っている。本当に大丈夫か不安になるが、アンナが言うからには大丈夫であろう。


「決行は明後日。それまではこの隠れ家にご滞在ください」

「でも学園が………それに、ヘレンにも伝えないと………」

「お嬢、我慢しましょう。青山にはグレイス様の正体がバレてます。下手に動くとグレイス様が危険です。青山をどうにかするまで大人しくするのが無難でしょう」

「それもそうですね………わかりました」

「セレーネ。ごめん」

「いいんです。後からヘレンに謝りましょう」


 こうして夜空の青炎(よぞらのせいえん)襲撃の詳細が決まった。後は決行の日を待つばかりだ。

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