行方と逃走
風邪気味の状態で書きました
[ぐっは…はっ…] 川に流され、息ができない状況にもがきながら苦しんでいる俺は、もう助からないと体がそう受け入れていた
[輪道、ミナト、ごめん…] 心の中で自分の弱さに悔しさを感じながら。息が絶え絶えになり…ついに体全体が沈んでしまった
[あんた将来どうするの?。まさかニートになるなんて言わないわよね!] 冷たく…俺を追い詰める母親の声、…そんなに経っていないのに懐かしく感じるのはこのまま溺れて死ぬからかな、溺死で死ぬなんて…嫌だなー…
川に沈み完全に意識が無くなる前に心の中で出た声は、そんな…虚しい言葉だった
《輪道》
夢を見ていた…親との思い出の夢を
[輪…お前は…いったいどれだけ期待を裏切れば気が済むんだ!。…もういいお前には期待しない…] 父にそう言われる夢を俺は見ていた。…あ〜!…ごめんなさいごめんなさい!…お願いだから見捨てないで…俺に構ってよ…
俺はそんなことばかりを考えていた。ずっと息苦しかったことを思い出していた。だか…夢というのは永遠じゃない…その内に夢から目が覚める
[………あれ?] まぶたを開け…目が覚めた途端、俺は驚いた…ここはギルドの近くじゃないか?…体が痛む…なんでこんな所に。てか…俺何してたんだっけ……。!!!…そうだ!
大蛙の依頼を黒崎と熟していたら、突然…ディアという奴が現れて…おれは!…負けた…のか。…黒崎は!…どこにいる?…まさか殺されたりしてないよな!?…
[探さないと!…うっ…く] 横になった体を起き上がらせて、黒崎を探そうとするが…途端に更に体が痛む…。…くそ…ディアにやられた打撃が思った以上に体にダメージを与えている
[……誰か運んでくれたのか?…俺を] 疑問にそう思う。…こんな負傷を負っていて…なおかつ…トブの草原にいたんだ、自力でここまでこれるわけない。…黒崎がディアに勝って…ここまで運んだのか?、いや…だったら近くにいるはずだ、一体誰が…
[俺の能力は…作った人物を維持時に具現化する力だよ] 黒崎がテントの中で言っていた言葉を思いだす。…そうか!…黒崎の能力で具現化した奴が俺をここまで運んだんだ!、俺はそう考え…辺りを見渡す…時間感覚的にすぐ起きたんだ…きっとまだトブ草原の近くにいるはずだ…探して…黒崎がどこに行ったのかを聞かなくては!…
《ミナト》
[輪道くんは安全な場所に置いてきた、早く探さなくては…] 俺はそう思い…川の流れの方向を重点的に探す。…どこまで流されたんだ…まさか…溺れてしまったか!
焦りが俺を侵食していく、まずい…そうだとしたら…早く見つけなくては、そのまま鈴を探して…数分が経ってしまう。
川の中の場所にも行ったか、見つからない!…どうすれば…
[あの!…そこのあんた…大蛙の依頼を受けてた…黒髪の男性を知らないか?] そう探している俺に。小刻みに歩く音と冷静な声が聞こえる、この声は…。
[輪道くん!、もう起きたの?] 驚いた声でそう俺は輪道くんに返す、まだ移動させてから30分しか経ってないのに、なんて根性だ…
[俺の名前を知っていて…なおかつその武器…黒崎のだよな?…やっぱり黒崎の能力で具現化された人っぽいな…、あんた…名前は?] そう確信の声を出したから、俺に質問する輪道くん、自己紹介している暇はないんだけどな…。でも不粋か…
[俺は神風ミナト…鈴が作った漫画の人物だよ。…] そう質問に答えながら、辺りを川を見渡す。…どこにいったんだ…鈴
[出張に言うが…俺が倒されていた間に黒崎はどうなったんだ…] 単刀直入に鈴の居場所を突き止めようと言ってくる輪道くん、ここは…素直に言うしかないよね…
[鈴は…守りきれず…川に蹴り飛ばされてしまった…] そう申し訳なく輪道くんに伝えると、次第に顔が真っ青になっていく
[川って!…なんでそんな所に蹴り飛ばされてんだよ!、お前はなんで守りきれてないんだよ!] 鈴のことを心配しつつ…俺に対して怒った声でそう怒鳴って両手で俺の胸ぐらを掴んでくる、鈴と仲良かった彼なら当然そう言ってくるよね
[本当にすまない…鈴の行方を探してるんだか…いかんせんどこまでこの川が続いてるか…わからないんだ、俺が時間制限で消えるまでに、なんとか見つけないと] 輪道くんに今の状況を伝える様にそう言う、時間は残り…4時間か…
[!?…なんだ…具現化されたお前には時間制限があるのか、だったらここで立ち止まって時間を無駄にしてないでさっさと行動しないとだな!、この際…ここで起きたことは…探して行く中で聞く…] 輪道くんは状況を完全に理解はしてないけども、急がなくちゃいけないことはわかってくれた。
[輪道くんもくるの?、大丈夫?。怪我を負ってるのに…] 輪道くんの殴られた箇所を見ながら彼に心配してそう言う、まだ完全には完治してないのに…。
[怪我を負ってるからチームメイトを探せません。…そんな言い分…自分が許すわけ無いだろ!。…何を言われようと俺は付いていくぞ…] 怪我のことなんて後回し、そんな気持ちと態度が輪道くんから伝わってくる。しょうがない…
[わかった…でも怪我のことはちゃんと考えて行動してね…危ないから] 万が一殴られた箇所が悪化したら、取り返しがつかない。…そう伝える様に言う、我ながら駄目だな…覚悟を持っている子にこんな事を言うなんて。…
[わかっているよ…さぁ黒崎を探しに行こうぜ…ミナト] 輪道くんは力強くそう言うと手を差し出してきた、そうだね…。
[うん!] 輪道くんの差し出された手を握り、俺達は川の流れる先へと進んでいく。…待っていてね…鈴…必ず助けるから。
《黒崎》
…目が覚めると…俺は見知らぬ空を見ていた。…あれ…俺は…川で流されて…それで死んだ…はずじゃ、確認の為に左手を動かそうとすると…文字通り指が動く。…生きてる!?
そのままドビ上がって辺りを見渡してみる、刀は!…無いな…どこかで落としたのかな…それよりどこだ…ここ?。その場所は…まるでジャングルのような景色で、俺の世界で言うところの…ライオンが影からでてきそうな雰囲気だった…なんなんだここ、そんな事を考えていると…熱帯雨林の葉っぱから誰かが通る音がする、誰だ!?…
驚きながら音がした方向に体を向ける、そうすると…動物の革で出来ている服を着た緑髪の少年がこちらに来た。…誰だ?。…革の服はまるで森のレンジャーのような仕立てだった
[ようやく起きたんだね!。…よかった〜…] 緑髪少年は安堵の表情を浮かべながら。そう言ってくる、見た感じ…まだ子供に見えるけど…
[あの…誰ですか…貴方は?。…あと…ここは?] 緑髪の少年にそう質問気味に言ってみる。状況が理解できない…、俺は…川で溺れていたはずなのに…
[あ〜…自己紹介がまだだったね、僕の名前は…キティー。…ここガイアの森のレンジャー部隊の隊長さ…] 自己紹介してくる緑髪の少年、レンジャー部隊?…なんだろうそれ。……てか…森!?
[君ね…あそこのトブの川で流されていたんだよ?。…もしかして水遊びでもしてたの?…危ないからもう駄目だよ…わかった…?] そう注意するように言ってくるキティ、いや…そんな注意喚起より気になることがあるんだけど!?…
[え…なんで草原の川から流れていったら森に繋がるの?…] 困惑気味にキティに質問してみる。…だって色々とおかしいもん
[知らないのかい?…あそこのトブ草原は別名、誘拐の川場って呼ばれていて…誤って川に入って流されると、どこも咳止めされてないから…もがいてルートを変える内に違う森に行っちゃうんだよ?…] キティーが俺の質問に答える形でそう言う。…え?…そうだったの?…!あと気になることがもう一つある
[あの…レンジャーって?] 困惑した声でキティーにそう質問してみる。見た感じ…この森関連かな?…
[説明しなきゃわからないよね。…レンジャーっていうのはそれぞれの森を担当して生態系を管理する人のことさ。僕はそれの隊長。すごいでしょ!] ドヤ顔をしながらそう言ってくる。いや…あんま詳しくないから凄いのか。わかんない
[にしても…君は幸運だよ…レンジャーがいない森に流れないで…僕の担当であるこの森に流れてきたんだから…まぁ…レンジャーがいても君を見つけられなかったら、とっくに溺死してたと思うけど] 慰めるようにキティーは俺の肩を優しくポンポンと叩きながら、そう言ってくる。…ガチで危なかったんだのか…
(ドブの草原で起こった光景を思い出す)
あ!…そういえばミナトと輪道は!?…今どうしてるんだ?…、ディアと戦ってるのかな?。
[あの…俺…ドブの草原に残してきちゃった人がいて…会いに行きたいんですけど?…] キティーにそう相談するように言ってみる。普通に心配だし…しかも刀も無いし
[そうなの?…う〜ん…でもここからトブ草原に行くには…結構時間かかるよ?、そもそもここは…歩きであそこまで来れる容易な距離じゃないしね…] 手に顎に乗せながらキティーがバッサリそう言う。…じゃあ…どうすれば…徒歩以外の方法で行くしかないのか……。
そんな事を考えていると、森の奥からドン!ドン!そんな重機が移動するような音が俺とキティの耳に響く。なんだ…この音?
[……うん?…生物の歩く音にしてはでかくすぎるな…なんだろう…?。] キティーがしゃがみ警戒しながら音がする方向を見る。確かに生き物の足音にしてはでかいな。なんだ?…
次の瞬間、ウ”オ”ォ”ァ!。と獣の雄叫びのような声が森全体に響く。なんだこのでかい声…生物の声だけど…まるで怪獣が叫んでるような…。
そんな事を思っていると突然、目の前にあった熱帯雨林の木が吹き飛ぶ。
ドゴーン!!!。…そんな木の悲鳴のような破壊音を立てながら、他の木を図体で吹き飛してこちらに来た、そいつは巨大な白い肌の人形だが…まるで人の面影が無い。顔は獣の様に縦に広がっていて、赤い瞳が複数あり…全身には白銀の毛が生えている、そんな恐怖を象徴するようなおぞましい見た目をしていた
[!?…タイラントか!、でもなんでこんな所に…] キティーがそう驚きながら大声で言う。…タイラント?…確か輪道が見ていたギルドの依頼書の一つにそんな名前があったような、覚えている限りだと…★の数は…七個だった気が…。まずいな…もし戦うにしても…勝てるのかこれ?
[どうする?。…キティー?] タイラントを見ているキティにそう自信なく言ってしまう。…どうにかできるのか…これ?
[どうするって答えは一つでしょ…この場から一緒に逃げるよ!] そう言い俺の手を握りタイラントに背を向けて一緒に逃げるキティー。…そりゃそうだよね…それ以外選択肢ないのね…
タイラントは雄叫びをあげながら、逃げる俺達を見て急速に近寄ってくる
くそ…逃げ切れるのか…これ!
俺は…手を握りながら一緒に逃げるキティを見ながら、そう…思うしかなかった
(おまけ)
《ミナトと輪道の会話》
鈴が流された方向に行っている途中、輪道くんが俺に質問してきた
[ところでさ…あの…黒い鎧のくそ野郎はどこに行ったんだよ?…] そう困惑気味に俺の隣で言ってくる輪道くん。…そっか…知らないのか…
[あのクソ野郎は必ずリベンジしてやる] そうイラついた表情で言う輪道くん。…リベンジねぇ…
[無理だと思うよ?] 輪道くんにそう言ってみる
[はぁ!なんでだよ?] 疑問風にかつ怒鳴りながら俺にそう言ってくる輪道くん。
[だって俺が倒したから…] 輪道くんにそう伝えてみる。もう倒されてるからリベンジは無理だよ…そういう風に
[え?…お前が倒したの?] 輪道くんが驚いて理解できない…そんな顔をうがべてくる
[うん…あの人は俺が鈴の刀で真っ二つにしちゃったから] 歩きながら輪道くんにそう言う
[へぇ……凄いな……お前…] 驚いているのを隠して強がっているのが丸見えな声でそう俺に言ってくる
[……俺……瞬殺されたんだけどな〜…] 少しプライドが傷つけられた様な声でそう言ってくる輪道くんはなんだか…虚しそうだった