残念な人
二人には、閃光さんの相手は俺が務めるように合図をする。
「どうも、危なかったな」
「誰だ、お前は!俺は後ろの二人に話があるんだ!そこをどけ!」
こいつ助けてもらっといていい度胸だな。
そして今回初めて近くで閃光くんを見たが、モデル体型と言えば聞こえは良いがどうにも戦えるような身体には見えない。
レベルだよりの探索者か…それなら…
「助けてやったのになんだその態度は?おい!何様のつもりだ?」
先ほどとは打って変わり声を荒げ眉間にシワをよせて睨みつけるように話す。
「うっ」
この手のタイプは威圧すればどうせ怯む。いくらレベルが上がっても結局見た目で人間は判断してしまう。
先ほど強さを見せたおかげもあってか閃光くんは怯み一歩下がる。
「いや、その、なんだ、私は後ろの二人の知り合いなんだ。できればそちらと話をさせてもらえないだろうか」
しどろもどろになりながら閃光くんは言葉を選びながら喋る。
どうやらかなりビビってしまったようでこちらと目を合わせようとしない。
「その必要はない、ここはダンジョン内だ。こうしてる間にまたモンスターが襲ってくるかもしれない。無駄話をするつもりはない」
関わらせてもどうせ面倒事になるだけだ。
「しかし…」
「それよりも感謝の言葉も無いようだが、礼儀のなってない奴だなぁ。後は勝手にしてくれ、俺達は行かせてもらう」
そういって踵を返そうとした。
先ほどからある物が視界を遮っており出来れば早くここを離れたかった。
「待ってください!」
どうやら閃光くんの仲間の一人。メガネをかけた女性のようだがまぁ自己紹介をする雰囲気でもないのでメガネさんと心の中で呼ぶことにした。
メガネさんは閃光くんの前に割り込んでくる。
「なんだぁ?」
先ほどの態度を維持し威圧をするように答える。
「仲間が無礼を働き、大変申し訳ございません。この度は助けて頂き本当に感謝しております」
メガネさんは深々と頭を下げ謝罪と感謝を口にした。
「おい」
「黙ってて」
閃光くんが何かを言おうとしていたがそれをメガネさんは遮る。
「大変申し訳ないのですが、私達を22階層の入口まで連れて行って頂けないでしょうか…もちろん対価はお支払いさせて頂きます」
「おい、何を言って」
「いいからあなたは黙ってて」
後ろの方を見ると怪我をした仲間を治療しているようだ。
よく見ると足を1本失っており血がかなり出ていた。ポーションで治療したようだが戦える状態ではなさそうだ。
他の仲間も傷を負っているようで死屍累々といった感じだ。
確かにこの状態でまた団体と戦えばひとたまりもないだろう。
階層入口まではまだ1時間以上かかる距離だ。メガネさんの判断は正しい。
そこまで俺達がやってやる義理はない。と言ってしまってもいいがそれなら最初から助けなければよかったとなりかねない。
「仲間と相談する。少し待ってくれ」
閃光さんは何か言いたそうにしていたが無視してミレイとカナタと相談を始める。
「やばいやつだな、あいつ」
「だいぶこじれてるのよ」
「で?どうするんだ?」
「ここで見捨てるなら助ける必要なかった結果になりそうだからな。護衛というか付いてくればいい体で話そうと思うが」
「それなら大丈夫だと思うけど…」
不安そうにするミレイだったが。
「ミレイとカナタは先行してくれ。俺は沙月と二人で後方にいるから、それなら絡んでこないだろ」
「悪いな、めんどうなことに巻き込んで」
「別にいいさ、それに悪いのはあっちだ」
話し合いの結果を先程のメガネさんに伝える。
「俺達が先行するからその後に勝手についてくるなら構わない。護衛をする訳では無いから対価も不要だ」
絶対対価を要求したらこじれるとミレイからアドバイスがあった為、そのような形にした。
「感謝します。すぐに準備致します」
メガネさんがそういって下がり移動の準備をする。
その間に沙月と合流しミレイとカナタが先行する形で後ろに俺と沙月がつく。
沙月にはローブを深めに被ってもらい姿を見せないようにしてもらった。
あちらはけが人を一人が背負い、2人が後方で警戒にあたるようだ。
配慮されてか閃光くんは後方に配置されていた。
前方にいたのは先程のメガネさんだった。
「こちらの準備は調いました。よろしくお願いします」
「何かあれば合図をくれ、可能な限り援護はする」
「お心遣い感謝します」
閃光くんとは似ても似つかないほど丁寧な対応で毒気を抜かれたが、後方からこちらを睨みつけている閃光くんを見て頭を悩ませた。
そこからは沙月の生命感知で敵を避けながら階層の入口を目指した。
視界の一部が遮られているので出来れば戦闘は行いたくなかった。
最悪の場合は押してしまう予定だが、できれば内容についても皆に伝えてからにしたいと考えていた。
40分ほどかかったがモンスターの襲撃を受けることなく入口に到着した。
「本当にありがとうございました。おかげで助かりました」
「先を歩いていただけだ、気にすることはない」
「優秀な感知スキルをもっていらっしゃるようで、襲撃もなくここまで来れて本当に助かりました」
どうやらモンスターを避けていたことに気付いていたようだ。
「私達はこのままここで一晩休んでダンジョンを出ます。そちらはどうされるのですか?」
「俺達はまだこのフロアで狩る予定だ。混雑を避けるのに少し遅めに狩りを始めたからな」
これは嘘だったが、このまま一緒にいるのは問題が多すぎる。
「そうですか…では私達はこれで失礼します。今回の件はまた地上に戻った際にお礼をさせて頂きます」
そういって深々と頭を下げてからパーティメンバーと一緒に階段を上がっていった。
「階段付近はモンスター出ないんだよな?」
「基本的に近付いてはこないから、ここまでくれば大丈夫なはずよ」
「あれで地上まで戻れるんだろうか?」
「そこまでは面倒見きれないでしょ。それに最悪21階層の入口付近までいけば他の探索者もいるし一緒に戻るんじゃない?」
21階層はかなり人が多いので無茶をしなければモンスターと接敵もしないと思われる。あちらも感知スキルを持ってるようだし。
「それもそうだな、しかし閃光くんは何が気に入らないのかずっとこっちを睨んできてたな」
「はぁ、まぁ色々思う所があるんじゃない?私達にさ」
「自分の思い通りにならないと嫌な人ですからねぇ…」
閃光くんの印象は最悪の一言なんだが、怒りよりは可哀想と思ってしまうのは、やはり残念な感じがするからなのだろうか…
そんな事を考えていたが、閃光くんたちが離れていったのを生命感知で確認したので今の俺の状況を説明することにした。




