分身スキル
その後、4人でスキル検証を行うことになったがダンジョン外ではスキルの詳細な効果の確認は難しいので後日ダンジョンで行うことになった。
身体が鈍っているというカナタのリハビリもかねて訓練場を借りて訓練を行う。
氷川さんも大体察してくれているのか貸出までがスマートだった。
色々と負い目があるようで特に理由も聞かれなかった。
「鈍ってるっていう割りには全然そんな感じないですね」
「そっちは逆にまだ全然潜ってないのに対人戦闘慣れすぎじゃね?」
「まぁ色々経験があるんですよ」
アキラとカナタの模擬戦はかなり良い勝負で互いに良い訓練になっていた。
カナタは剣を使うが長剣を得意にしておりかなりリーチ差があるが、アキラは、剣を掻い潜り懐に入るこみ攻撃を加えようとするもそれをしっかり腕につけたバックラーでガードする。
タンクとしてずっと攻撃を受け続けていた事もあって防御がかなり硬くアキラも突破出来ずにいた。
「ミレイが防御技術が低いのってカナタがいたからだったんだな」
前回の戦闘でも槍による防御よりもかなり攻撃に寄っていた。
まぁだからこそ槍対拳で一撃を加えれたみたいなとこもあったのだが。
「うっ…」
「ミレイは戦闘になるとすぐ突っ込んでいくからなフォローするのが大変なんだ」
「うぅ…」
図星を突かれたのかミレイはバツが悪そうに唸っていた。
「正直傍から見てると3人とも動きが凄すぎて私にはついていけそうもないんですけど」
「そのうち、できるようになるさ、とりあえず自分に合った武器はあったか?」
沙月には自分にあった武器を見つけてもらう為に色々触ってもらったがあまりしっくり来るものがなかったようだ。
「武器なんて日常で使う機会なんてないんだもん…しっくりと言われても…お二人はどうやって見つけたんです?」
「うーん、元々長い棒を使っててそこから槍って感じかな?二人だと攻撃力がほしかったって言うのもあるんだけど」
「私は普通に剣を使ってたんだけどレベルが上がるにつれて長い剣にしないと攻撃力が足りなくてな」
二人共攻撃力を補うのに武器が変化していったようだ。
「うーん、現状私は戦力にならないんですよね…魔法スキル…」
「確かに魔法スキルは魅力だよな、威力も高いのに遠距離から攻撃できるのはずりぃーわ」
ミレイとカナタはパーティに魔法スキル持ちがいたので魔法スキルの威力を知っていた。
「でも、魔法スキルはドロップ率も含めて規格外ですからね…値段も」
「まぁこればっかりは運ですからね」
「宝くじよりはマシな確率らしいがな、買うのに命かかってるからな…」
そんなこんなで訓練を続けていたが沙月はイマイチしっくりこなかったようで武器を見つけるには至らなかったようだ。
そして解散となった後に氷川さんから沙月に連絡があった。
「カナタさんも今日から宿舎に泊まっても良いそうです」
そのへんの根回しを完全に忘れていたが沙月のほうですでに手配済みだったようだ。
「あと、ダンジョンに潜るのは許可されているが10階より下には極力いかないで欲しいって言われました」
強制はできないのでお願いって形らしい。
「まぁ現状の向こうで認知されてるレベルは3~5ですからね・・・」
ミレイは遠い目をしていた。
当然ならがここにいる4人は全員30レベル。日本の探索者の上位層に入る。
「とりあえず、スキルの検証もあるので明日は朝からダンジョンに潜ります。なので今日はゆっくり休みましょう、明日は大変だと思うので」
「わかった」「了解しました」
そういって解散になったが部屋を用意してもらったカナタだったが、積もる話もあるそうでミレイのとこに泊まるそうだ。
そして、夜にまたトレーニングルームで鉢合わせすることになった。
「よう、アキラ」
「昼間も訓練してたのにまだやるんです?まぁ俺も人のこと言えないんですけど」
「酒を抜くのに私は運動するのが一番でな。しばらくはずっとトレーニングしてたからな」
「それで動きは鈍ってなかったんですね」
「いや、以前と比べればかなり鈍ってる。訓練と実戦は違うってお前もわかってるだろ?」
「まぁそうですね。ただ、明日はそこまで気負う必要はないので気楽にいきましょう」
「そうはいかないさ…ダンジョンから逃げて明日数ヶ月ぶりに入るんだ…どうしても気負っちまうよ」
「そうですか、でも今日は早めに休んだほうがいいですよ、明日は忙しいので」
「まだ、なにするか聞いてないんだがな…まぁそうだな、あと1セットであがるさ」
そういってカナタは一通りこなして帰っていった。
アキラも同じように一通り行った後、部屋に戻った。
翌日、全員準備を整えかなり早朝からダンジョンに潜ることになった。
昨日の一件からあまり人目がない時間からやろうということになったのだ。
7時にはダンジョンに潜りスキルの検証を開始した。
まず試したのは分身スキルだった。
「まずは、自分自身の分身からやってみましょう」
そういうとミレイは少し躊躇っているように感じた。
「わかりました、でもアキラは後ろを向いててもらえますか?」
その言葉を不思議に思いながらも指示通り後ろを向く
ミレイは自身に触れながらスキルを使用する。
そうするとミレイが二人に増えた。
「うわっ!?」
「すごい!」
二人の声があがる。
「アキラもこっちを向いて大丈夫ですよ」
そう言われアキラは後ろを向くとミレイと完全に同じというわけではなく髪の色等に変化はあったが二人に増えていた。
「完全一致という訳ではないんだな、まぁあのスライムも違ったもんな」
「そうですね、でもどうです?動かすのは?」
ミレイは分身を動かそうと意識を集中させる。
「うーん?難しいですね…」
ミレイの分身は、ぎこちなく歩いてはいるがかなり違和感があり足と手が両方一緒に動いていた。
「まぁ動かすのは要練習だな。後は触覚とかなんだけどどうなってるんだ?」
そういってアキラは近くにきていたミレイの分身の肩に触れる。
「ひゃう!?!」
ミレイが変な声をあげる。
「ちょっとアキラさん!女性に急に触れるのは駄目ですよ!」
「あぁすまん、ただの分身と思って気遣いが足らなかった…ってか感覚あるのか?」
「こちらこそ変な声を出してしまってすいません、感覚が薄いというかふわっとした感覚が伝わってきて…」
「感覚はあるけど鈍く伝わる感じですかね?」
「まぁそうだな感覚がないと動かすこともできなくなるだろうし」
「視覚はどうなってるんです?」
沙月が尋ねる。
「なんというか視点が2つある感覚かな?すっごい見にくい。こっちの本体の目を閉じれば大分良いかも」
そういって目を閉じると分身の動きが少し良くなった。
しばらくはミレイの分身を観察していたが大分ミレイも慣れてきたようで走ったりもできるようになってきた。
「ところでこれはいつ消えるんだ?」
カナタが疑問を口にした。
「本人が解除するか、ある程度の衝撃というかHPが設定されるみたいなんで無くなると消えるみたいですよ」
「それまでは動かし放題ってやばいスキルじゃね?」
「そうですね、削られるまでは動かし放題ですからね、色々使えそうですね」
「一回、相手してもらうことできますか?一度試してみたいので」
そういって分身ミレイは武器を構える。
「そういうことなら私がやってやるよ!」
カナタが分身ミレイと相対する。
「じゃあ普通に剣で攻撃してくれる?一度攻撃も食らってみたいから」
「いきなり剣じゃなくてもいいんじゃないか?」
ミレイとカナタの装備しているのは正真正銘の武器である。
通常人に当たれば大怪我をする物ではあるが探索者は防御力があがっている為、大怪我をするほどではないとはいえ刃物は刃物である。切られれば痛いし血もでる。
「それもそうね、鞘付きでお願い」
そういってお互いに鞘を付けたままで模擬戦を行うことになった。
模擬戦はカナタの一撃を分身ミレイが躱す展開だった。
その後、カナタは攻撃を受けそれに反撃する形で分身ミレイに一撃を加える。
そうすると分身ミレイはモンスターと同じように消えてしまった。
「どうだ?」
「痛みらしい痛みはなかったわね、当たった感覚はあったのだけど」
「なるほどな、こっちも当たった衝撃はあったが手応えがないっていう不思議な感覚だったよ」
「攻撃はどうだった?」
「攻撃は、しっかり衝撃を受けたぞ。どういう仕組みなんだろうな、武器とか服とか」
「あくまでも魔力で作りだしてるんでしょうけど本体以外はどういう原理なんでしょうね?」
「ああ、それは…」
ミレイは言いにくそうに応える
「分身する時にイメージする事で服や武器も含めて分身を作る事ができます。実は、昨日試した時はなにも意識をしてなかったせいで全裸でした…」
「「は?」」
カナタと沙月が声を上げる。
「お前、何してんだよ!」
「今日もそうなったらどうするつもりだったんですか!」
二人から詰められる。
「全裸だったのもダンジョン外だったからかもしれませんね。けどうまくいってよかったです…」
ミレイはこちらを見ながら答えていた。
俺は口を挟まなかったがミレイが後ろを向いていて欲しいといった訳を知って少し気まずくなり目を逸らした。




