カナタの後悔【カナタ視点の話】part3
叔母は、もし行くところがないのであれば一緒に住まないか?と誘われたが、叔母にも家族がおり甘える訳にはいかない。
すでに家があるので大丈夫だと連絡先を伝え東京に戻った。
実際は家などなかったのだが、都市部はダンジョン災害の被害が大きくまだ瓦礫等の片付け等で仕事の募集があった。
しばらくはその仕事に応募し住み込みで作業をしていた。
それから少し経った頃、ダンジョンの産出物である魔石の有用性が世界中に周知され一気に技術革命が起こることとなった。
世界中に公布された魔石エネルギー転用は、国によって大規模な支援策が入り一気に全国で展開された。
現状使用している機械でもエネルギーを魔石に変換することで高効率、低コストな運用が可能となった。
これによって魔石関係の事業の需要が跳ね上がり雇用が爆発的に増えた。
しかし、これと同時にある職業の募集も始まった。
それは探索者だった。魔石を産出させる為に国を上げての探索者の募集が始まったのだった。
元々は自衛隊や、警察官などが主役となり探索を実施していたが需要の拡大に供給が追いつかず民間から募集することになったのだった。
その時はダンジョン産のドロップは特に高く取引されていた為、未経験、無資格で年収1000万も夢じゃないという募集に災害で仕事を失った人たちが飛びつくことになった。
魔石関係の仕事をするにしても魔力の測定を行う必要があった為、日本中で一斉に鑑定が始まった。しかし、鑑定石の数も少なくまとめて一気に行われることも多く一般人は抽選に応募し受かれば測定を受けれるという状況だった。
仕事をするにしても魔力値の測定が必須だった為、抽選に応募しそして魔力測定を受けれることになった。
固有スキルなる物が与えられると言われておりネットでは早速スキル検証などが活発に行われていた。
カナタは特に気にせず測定を受けた、結果は魔力値はD、下から数えた方が早い結果にここでもかと少し落ち込むことになった。
しかし、固有スキルについては特攻スキルという珍しいスキルを授かることになった。
しかも対象はドラゴンということでこの時初めて、世界中にドラゴンの存在が仄めかされることになった。
珍しいスキルということもあって試しに探索者もやってみるかと思い実習を受けることにした。
当時は、ダンジョンはまだ危険なものと認識されており、実習まで受けていく者は探索者になる者以外はほとんどいなかった。
カナタもダンジョンに対する恐怖もあったがそれ以上に好奇心の方が勝った。
年収1000万というのにも興味があった。
そして実習を受けた結果、それなりに手応えを感じていた。
レアスキルということもあり、これで稼いでいくのもありかと思っていた。
それと同時に両親への自責の念からか辛い仕事を選ぶ傾向が強くなっていたことをカナタ自身は気付いてはいなかった。
そしてダンジョンに初めて実習ではなく本当にダンジョンに潜る日。
人数が多かったため、人数を制限され何グループかにわけてダンジョンへと進入するシステムとなっていた。
ミレイを見つけたのはその時だった。
何か一人で思い詰めたような表情をしていたことが気になっていた。
解散後はパーティでの狩りが推奨されていたにも関わらず彼女は一人でダンジョンに進入しようとしていた。
そんなミレイに声をかけて止めたことでそこから相棒と呼ばれる存在になるとは夢にも思っていなかった。
それからの二人の狩りはとても楽しかった。
互いに過去を知らない事で変に気負うことない対等な関係がとても心地よかった。
順調に稼ぐ金額も増えていき、レベルもあがり探索者としての実力もついてきていた。
あの話があったのはそんな時だった。
「ねぇ、君たちが魔眼持ちと竜殺しのパーティ?」
「誰ですか?」
ミレイは警戒心をあらわにしていた。
私は、ナンパな態度の男に昔、嫌と言うほど相手をしていた軽薄な男達を思い出した。
何かあれば…昔のように喧嘩をする訳にはいかなかった。
グッと堪えてその場を離れようとするが、その男の持ち込んだ話は魅力的だった。
私はミレイの固有スキルが羨ましかった。
自身のスキルを使う機会は一向にやってこなかった。それとは真逆にミレイは、固有スキルを使いこなしていく。最初は不慣れだった戦闘も除々に迷いがなくなりその戦闘力は目を見張る物があった。
タンクとしての仕事は、しっかりこなせていると思っていたが除々に昔のような劣等感を抱くことが増えていった。そんな時にドラゴン狩りの話を受け、渋っていたミレイを説得しパーティに参加することになった。
そしてドラゴン狩り、ついに自身の固有スキルが役に立てると心が踊った。
苦戦を強いられたが最終的には自身のスキルのおかげでドラゴンを討伐することができた。
その遠征の最中、自身の攻撃が他の者よりもかなり劣っていることを5人での狩りをしたことによって感じていた。
だが、そんなことよりも自身のスキルで、ドラゴンを討伐できた事で昔の周りから認められていた時のことを思い出し悦に入っていた。
しかし、そんな栄光は長くは続かなかった。
私達の特攻スキルによるアドバンテージによって先行出来ていた強みを他のパーティは戦術や戦略によってドラゴンを攻略していった。それに伴い、ドラゴン戦での稼ぎも下落していった。
探索費用や危険度からしてもドラゴンをスルーして次の階層に向かいモンスターを狩った方が稼げるような状況になっていった。
こうなってくると私達も同じ選択を取る必要があった。
しかし、そこでついに私の能力の欠点が露呈することになった。
特攻モンスター以外への攻撃がほとんど効かないという事実だった、ドラゴンを超えた後の階層は特に硬い外装を持つモンスターが多く存在しカナタの攻撃はまったく効かなくなっていた。
そのせいでタンクの役割である敵を引き付けるという役割をこなせなくなってしまった。
そうなってくるとカナタはパーティに全く貢献することができず、パーティメンバーと言い争いをすることが増えていった。
何度も20階層以降に進むもカナタは足手まといになっていた。
20階層までならカナタはタンクとしての役割をこなすことが可能だったが20階層以降は全く戦力にならなかった。
元々パーティは斥候+アタッカー二人とタンクと後衛(魔法)という編成でタンクが機能しないと斥候と後衛に攻撃にむかってしまいそれをフォローするのにアタッカー二人が交代でタンクを務める必要があり、少しでもミスるとパーティが瓦解する危険があった。
特に一番の有効打である、魔法が使えなくなってしまっている現状がとてもよくなかった。
魔法は外装が厚い敵にも有効的にダメージを与えられるので20階層以降は必須と言われるほどだったのだがヘイトを大きく稼いでしまうせいでタンク無しでは運用することが難しかったのだ。
魔法を撃ってダメージを稼いでも後衛のフォローにアタッカー二人が入るので結局倒すのに時間がかかるという悪循環。モンスターの数が多い20階層以降は連戦が続く為、タンク無しでの突破は不可能だった。
そんな事を数度繰り返し、ついにリーダーがキレた。
当然のことながらパーティからの追放を通達された。
私は、その通達に言い返すことは出来なかった。またここでも…と思いその場を去った。
しかし、そんなカナタにミレイは付いてきてくれた。
そんなミレイの期待に応えたかった。しかし、昔の事を思い出し逃げ出したくなる気持ちを抑える為に酒に逃げた。
酒を飲んでいる間だけは不安を忘れることができた。しかし結局酒のせいで戦闘中などのミスが重なりミレイにフォローさせる。
ミレイが金に困っていた事は知っていた。だからこそミレイに報酬をたくさん渡す提案をしたのだが、それをしたら相棒ではないと断られてしまった。
私が金を貯めていた理由はそこまで切迫した理由ではなかった。
だからこそ自身の罪悪感を軽減する為にも金を渡したかったのだ。しかし、互いに過去の詮索をしてなかった為、それ以上言うことはできなかった。
ダンジョン素材の下落がさらに追い打ちをかけ無茶な狩りをして怪我をすることも増えた。
私の酒の量はミレイへの罪悪感と共に増えていった。
そして、私の心は限界を迎えてしまった。
酒の飲み過ぎによって身体に障害がでるようになってしまった。
いくらレベルがあがったとしても健康に関してはどうにもなかなかった。
数ヶ月のリハビリで治るとは言われた。
だが、逃げる言い訳を探していた私はそれを言い訳にまた、ミレイから逃げた。
日々のストレスから開放されたことで酒を飲む機会は無くなり日々を探索で貯めたお金を使い怠惰に過ごしていた。
そう、私の逃げ癖は結局治ってはいなかった。
両親の事があり、治っていたと思っていたこの逃げ癖は結局の所、私に根深く残っていた。
自身の都合が悪くなれば逃げるこの性格は、ミレイに迷惑をかけただけだった。
それが私、何も変わっていなかった。
そんな自分が嫌になっていた。しかし、通院する病院で偶然ミレイを見かける。
この辺で大きな病院はここだけなので会うのは不思議ではなかったがミレイが向かったのは入院病棟だった。
行き先が気になり後をつけた。
そして私は、ミレイのお金が必要な理由を知ってしまった。
それは私の心を大きく揺さぶった。
そして私はもう一度、ミレイと向き合う為に行動することにした。
無駄にあがったレベルは、ダンジョン以外で生きていくには非常に役に立った。
組合から斡旋される仕事をこなしお金を貯めていく。
そうお金を貯めていたのはあるものを購入する為だった。
それを買ってミレイにもう一度一緒にパーティを組まないかと言うために購入する為の資金をひたすら貯めた。
自身の逃げ癖を払拭する為に、一つの目標を叶えて見ようと・・・
そんな日々を過ごしていた時、ミレイからの連絡が入った。
そしてその文言に心が踊った。
『特攻スキルをどうにかできるかもしれない』
あの忌々しいスキルをどうにかできる。その言葉に、私は負い目や戸惑いなどの感情を忘れ返事を返していた。
[どこにいけばいい?]
返事をもらい、私はその場所に走り出していた。
part3で終わらせる予定が思ったよりも長くなってしまいました。
次でカナタ視点の話しは終わります。




