カナタの後悔【カナタ視点の話】
竜崎カナタは恵まれていた。
教育者である両親の下に生まれ、何不自由のない生活。
一人娘という事もあり、小さい頃から甘やかされて育った。
そして両親からの期待に応え、小さい頃から何をやってもうまくやれた。
神童とも言われ運動も勉強もすべて周りの子よりも優れていた。
しかし、これが良くなかった。
中学生に上がり、除々に周りの子との差がなくなり自身の頑張りと結果の乖離に苦しむようになる。
その頃には、周囲の人間もカナタを『十で神童 十五で才子 二十過ぎれば只の人』とはよく言ったものと噂をしていた。しかし、カナタは、ことわざよりも只の人になるのが早かった。
15歳の頃には周りよりも劣るようになり周囲からの評価に苦しむことになった。
周囲からはお前はやれば出来る子だと言われ頑張る事を強要され、出来なければなぜ出来ないのかと責められ、最終的にカナタは、自身がトップに立てる環境に身を置くことで鬱憤を晴らそうとした。
進学校である同級生とはつるまずに学校外、つまり自分よりも劣る者とつるむようになったのだ。
運動も勉強も人並み以上には出来たカナタはすぐに不良グループのリーダー格になった。
まぁ不良グループとは言ってもたまの喧嘩やコンビニ前でたむろする程度で犯罪行為に手を染めることはなかった。
この頃から両親とはうまくいかなくなり家に帰らず友達の家に泊まる事も増えた。
結局は親の期待に応えられない自分を親から遠ざけることで自分のプライドを守ろうとしただけだった。
バイトをしてお金を稼ぎ友達と遊び歩く、そのうち最低限通っていた高校にもいかなくなり中退することとなった。両親は悲しんだがカナタには両親の期待に応えられない自分を認める事が出来ずただ逃げ続けた。
家出を繰り返し、18歳になったと同時に両親には何も告げずに福岡を離れ東京へ来ていた。
何かをしたかった訳でもなくただ、なんとなく地元から離れたかった。
東京に出てきてからは、頼る者もなかった為、住み込みのバイトを探し必死に働いた。
工場の勤務は、初めてだったが持ち前の器用さで仕事をこなした。
そこは夫婦が経営してる小さな工場だったが働いている人は皆、家族のように扱ってくれた。
久しく受けていなかった家族の愛情を感じていた。
訳ありだった自分を雇ってくれた工場長の為に必死で働いた。それから5年が経った。
その間、一度も地元には帰らず家族へも連絡をしなかった。しかし、この時なぜ連絡をしなかったのかと後悔することになった。
工場長は過去の事をほとんど聞かなかったし私も話す事はなかった。
そんな工場長も一度だけ両親のことだけは聞いてきた。
「ご両親は元気なのか?」
その問いに私は、言葉を濁しながら答えた。
「はい、元気にしてますよ」
そう嘘を言うしかなかった。
「そうか、たまには帰って安心させてやれよ」
その時の言葉に従わなかった事も後悔することとなる。
しかし状況を一変するある事件が起こる。
ダンジョン災害である。
災害の際に両親の事が頭を過ぎったが地元は災害から免れたようで被害地域には入っておらず胸をなでおろした。
しかし、ダンジョン災害により工場は閉鎖することになった。地面の隆起が激しく機械等が破損し再開することは叶わなかった。工場長達は支援金を受け少し早いが隠居する事になった。
従業員達にも相応の退職金が支払われた、その後、東京は災害の爪痕が多く残り新しい仕事につく事が難しかった為、帰郷する事にした。
地元を長く離れた事で両親に関する後ろめたさも大分薄れていた。
久しぶりに家に帰るが地元は、ダンジョン災害の影響を受けていなかったようで昔と同じ景色が広がっていた。
自宅への帰路で昔なじみに出会った。
高校時代につるんでいたやつだった。
「おい!お前、いままでどこで何やってたんだ!?」
「何をそんなに慌ててんだよ、東京でずっと働いてたんだよ」
「お前の両親は亡くなったぞ・・・1年前にな・・・」
「えっ!?」
それ以上、言葉が出てこなかった。
確かに両親とは連絡をとっていなかった。
だけど、両親はまだ若い、亡くなっているとは考えていなかった。
そんなはずない、そう思って家に向かい走り出していた。
家に着くとそこは、懐かしい我が家が立っていた。
しかし、そこは人が住んでいるとは思えない状態になっていた。
庭木の草は伸びきっており、家自体も所々に痛みが出来ていた。
鍵は変わっていなかったようで久しぶりに開いたかのような鈍い音がした
家の中に入るとそこは誰も住んでいないことを証明するかのように大量のホコリが出迎えてくれた。
咳き込みながら中に進む、リビングに出るとそこには懐かしい光景が広がっていた。
しかし、昔とは違いそこにはしばらく家主が留守であることを証明するように静寂と暗闇があった。
予期せぬ来客にホコリが舞いそれがカーテンから漏れる光に反射して光る。
誰も住んでいないという事実、そして先ほどの友人の言葉が真実であると証明され、呆然と立ち尽くした。
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