ドア・イン・ザ・フェイス
そして今回の件の落とし所を探していくことになった。
「今回の件に関してはこちらの不手際だ。可能な限りそちらの要望を飲んでいくと約束しよう」
ここからは長として話を進めていくようだ。
「私からの要望は、私の意志決定に対する自由ですかね、正直今後そちらから斡旋された探索者の方を信頼することは出来ませんので、パーティはこちらで選んだ人で固めさせて貰いたいです」
これは二人で考えて決めた要求ではあったのだが、これに関しては飲んでもらうのは、最低限の要求だった。
「なるほど、当然と言えば当然の要求だね、こちらとしては飲まざるを得ない要求だ。それは、こちらの協力要請についてもその決定権については使えると考えていいのかな?」
「そうですね、正直今回の事でこの国のセキュリティ面の低さが明るみになりましたのでホイホイと了承するのは、怖いです」
国の要請だからと、どこかに連れられて拉致される可能性もある、今の状況で国の要請だからと強制されるのは問題しかなかった。
「同行者や場所などを精査した上でお返事させていただくことになると思ってもらえれば可能な限り協力はさせて頂きますが・・・」
協力しないとなれば問題ではあるが、ここまでかなり素直に相手の要求を飲んでいた状況を思えばそれなりな対抗策とはなる。
完全に非協力となると援助の件やそもそもの護衛問題についても問題になってくる強くはなったとはいえ四六時中二人で気を張っている訳にはいかない。
「こちらとしては、その要求を飲むしかないね。上にはそう報告しておく。拠点についてはどうする?引っ越し先を探していたようだが」
「安全面を考えるとしばらくは施設内で生活させて頂けると助かります、正直あんな目にあった状態で外で暮らすのはリスクが高すぎますので」
「それは、よかった。正直そこを断られた場合はどうしようかと思っていたよ」
中と外共にリスクはあるが外のリスクは中とは比べ物にならない位だ。
施設内を拠点に出来るのであればそちらの方が良い。
俺と沙月に関しては肉親はいない為、そちらの危険は考慮する必要が無いのは幸いだった。
「ただ、今後加入したメンバーの居住についても認めてもらいたいです」
「それくらいは、問題ないここは立派な建物の割に部屋は余っているからね」
ちなみに後から知ったのだが俺と沙月が泊まっていたのは職員と客人用のフロアらしく一般探索者の検査用宿泊施設は別のフロアだそうだ。
最初からそれなりにセキュリティ面では考慮されてたようだ。
ここまでの要求は通るだろうと予想していたので特に問題らしい問題はない。
ただ、2つ目の要求については恐らく交渉が難航すると予測している。
「もう一つ要望があるのですが・・・」
「ん?そうだね、こちらの不手際だ可能な限りの要望は叶えさせてもらうよ」
西園寺さんは見た目の割に挙動は年相応な態度なので飄々としているがこちらを見る目は何かを見通すような迫力を受ける。
何かスキルでも使っているのだろうか・・・。
「霧崎ミレイさんと如月日和さんの罪をなかったことにして欲しいです」
その答えは、予想していなかったのか西園寺さん含め氷川部長も驚き、こちらを見定めるように表情を見せる。
「それは二人の意志と思って良いのかな?」
こちらにも確認かのように問いかけられる。
「二人の要望と思っていただいて構いません」
「それは…」
氷川部長が何かを言おうとしたのを西園寺さんが止める。
「その要求が難しいことは理解しているね?」
「そうですね、詳細は伺いましたけど、ただ霧崎さんに関しては処分を受けるかどうかすら怪しいと思っています。それでも、拘束中ということはそれなりにまずかったということなのでしょう?」
日和に関しては事情から同情の余地もあるが実行犯だ、無罪にするのは難しいと思っているが霧崎さんも勾留されているのは何かしらまずいことがあるのだろうと予測していた。
昨日も氷川部長から詳細を聞かされた際にも、二人の処分はという話をしていた。
「ミレイに関してはスキルで知り得た限りは問題が無いと言っても良いのかもしれませんが・・・スキルで細部まで把握できる訳ではありません。向こうに渡った情報の中にはミレイが知り得た情報も多くありミレイから渡った物ではないと証明が出来ない。さらに彼女はかなりの金銭をもらった形跡は確認されてしまっています」
スキルにより聞き出した情報がどこまでの証拠能力を持つかわからないが、端から見れば真っ黒である。
「つまり、彼女を無罪にする為の証明をすることが出来ない」
「内々に処理をすると言っても、確実に無罪とはいえない以上、彼女を処分をしない訳にはいかない。そもそもの話をすれば未確認の団体と接触と金銭の授受の時点で違反といっても過言ではありませんので」
「でしたらこちらの要望として彼女を無罪にしてください」
沙月はこちらの会話を聞いて尚、彼女の無罪を求めた。
「いや、しかし・・・」
氷川部長は立場を考えれば無罪にすることが難しいことはわかる。
心情的には無罪にしたいんだというのが表情から伝わってくる、しかし彼らはあくまでも国という組織に雇われた存在。
疑惑があるものを無罪にすることは出来ない。そしてその判断を下すことも出来ない。
「いいでしょう、彼女については私の方で手を回して処分は軽くします。今回の件は国家の安全に関わる問題であり、本来であれば懲戒免職の予定でしたが、戒告ということにしておきます。さすがに無罪にはできませんので・・・まぁ彼女は、この仕事を続けることはないでしょうし問題ないでしょう?」
西園寺さんにはこちらの思惑は筒抜けのようだ、本当に何かのスキルでも使っているのではないだろうか?
「良いのですか・・・?」
「優秀な人材だったので非常に残念ですが、元々彼女は探索者に未練があったようですし、こちらの仕事を続けないと言うのであれば処分については特に問題無いでしょう」
このまま組織に所属しているのであれば問題はあるのだろうが霧崎さんは探索者に戻る。それなら問題ないという決断だろう。
まぁここまでは予想通りではあったんだが・・・。
「ただし、如月日和・・・彼女に関しては無理だ、諦めてくれ」
きっぱりと言われてしまった。




