エルフ
今回の件は、あくまでも内々で処理される事となった。
諜報員と共に日和、霧崎二人からの聞き取りも終わり、俺達も事件のあった翌日には今回の件の背景を知ることとなった。
こんなに早く調べられたのは色々とスキルを使ったそうだがそれについては詳しくは教えてもらえなかった。
二人の処遇については一旦、保留となり某国の諜報員については現在、両国間での話し合いが持たれていると聞かされた。
色々の処理が終わるまでは安全の為、施設で過ごす事になった。
身体が鈍って仕方なかった為、ずっとトレーニングルームに入り浸る事になった。
2日ほど経った頃、氷川部長から呼び出しがあった。
「今回の件は大変申し訳ございません…」
会うなり深々と頭を下げられる。
「いえ、お気になさらないでください、正直被害らしい被害は何も受けてないので」
沙月が応えた。
「いえ、今回の件は、私の監督不行き届きです。そちらから何を言われても仕方ないことだと思っています。本当に申し訳ございません…」
そう言ってまた深々と頭を下げる。
このままだと話が進ま無さそうなので話を振ることにした。
「謝罪に来るのは氷川部長だけなんですか?」
ここは被害を受けそうになった、沙月が言うのが筋なんだが沙月は言え無さそうなので、こちらで話を出すことにした。
「それは…」
「もう一人いますよね?ここの組合のトップが」
「組合長は、多忙の為、今回は私が代表として謝罪を…」
「それは筋が通らないんじゃないですか?部下の失敗は上司の責任というならその人にも、責任があるんじゃないですかね?」
こんな言い回しをするのは、社会人時代を思い出して嫌なんだがここで引く訳にはいかなかった。
「いや、しかし、組合長は…」
「ああ、大丈夫だよ、氷川くん。ここは私が出ないとおかしいだろう」
そう言って部屋に入ってきたのは、金髪長身の女性だった。
「やあ、はじめましてここのトップの西園寺リサです。この度は、うちの部下達が大変ご迷惑をおかけしました」
部屋に入って来て早々深々と氷川部長と共に頭を下げた。
そんな様子を見て固まっていた沙月だったがその口を開く。
「え、エルフ!?」
その言葉に全員が沙月を見る。
「ハハッやっぱりバレちゃったか。そうなんだよ私はエルフ、人間じゃないんだ」
「エルフって・・・」
「そこら辺の話を先にしようか。じゃないと落ち着いて話もできないだろうし」
そこから西園寺さんはホワイトボードを使って説明してくれた。
今、この世界にあるダンジョンは元々、西園寺さんのいた世界にあった物らしい。
そのダンジョンがこの世界に移動してきた時に巻き込まれ、一緒にこっちの世界に来てしまったそうだ。
西園寺さんの世界ではダンジョン探索は、固有スキルの発現については便利だったそうだが、元々魔法も使えたエルフにとってはそれほどの変化を与えるものではなく。あまり活発ではなかったそうだ。
元々自然と共に生きてきたエルフには、ダンジョンの資源はあまり必要がなく、一部の若者が年に腕試しに数回潜る程度だったそうだ。
そんな世界に嫌気がさしたのかダンジョンごとこっちの世界に移動してしまったと予想している。
「そんなことってあるんですか?」
「ダンジョンとしてはきっとたくさんの人に潜ってもらいたかったんじゃないかと思ってるよ、私達の世界は人口も多くなかったしダンジョンも見つかっていたのは一つしかなかったから」
「そう考えるとこっちでのダンジョンの数は異常ですね…」
「ちなみに向こうではダンジョンなんて名前じゃなかったからね、それに私達はこっちのダンジョンの恩恵を受けれないせいかレベルも無い。固有スキル自体は残ってるんだけどね」
「そうなんですよ!私のスキルでも見れなくて」
「ちょっ沙月!」
ここ数日の休暇で大分気が緩んでいたことも影響してなのか、興奮気味だった為か、沙月はスキルの事を話してしまった。
「あっ…」
「ああ、いいよ。叡智スキルのことは、ホントは知ってるから」
その答えに俺は呆気に取られていると
「やっぱりそうなんですね」
沙月は知っていたと言わんばかりに答えた。
実は、沙月は叡智スキルの事を国は知ってるのではないかと予想していた。未知スキルなのにも関わらず全然聞いてこない事に違和感を感じていたからだ。
「そっちも気付いてたか、まぁ詳細を知ってたのは私だけなんだけど、氷川と日和の二人には、きっと言ってこないけど変なスキルではないから安心してとしか伝えてなかったからね」
「ちなみにどんなスキルなんです?」
と氷川部長が聞いてきた。
「見た人の名前、レベル、スキルとかが見れるスキルです、種族名の所が役に立つとは思ってもいませんでしたけど」
「それはまた…言いにくいスキルですね」
「でしょ?だからいい含めてたんだよね、まぁそのスキルのせいで私は姿を見せられなかったんだけどね」
「ああ、それで…」
確かに直接会ってしまえばエルフとバレてしまう、頑なに会おうとしなかった事にも合点がいった。
「こっちの世界にいるエルフは15人、日本は私ともう一人。他は各国に散らばってるよ」
「そうなんですね、でも不安だったりしないんです?知らない土地で離れ離れになるのは?」
「うーん、私達ってこっちの人々と違ってものすごく長生きでね…数年会わないとか頻繁にあったからその辺の感覚が薄いのかも」
「長生きってどれくらいなんですか?」
「私が今年203歳なんだけど死んだ人って見たことないんだよね~両親も含めて祖父なんかも1000歳超えて歳もわからないって話してたし見た目もほとんど変わらないから」
その想像できない寿命の長さは、不老不死なのでは?と思ったが、こちらの呆然とした様子を気にもとめず、西園寺さんは話を続けていく。
「まぁ各国で名前っていうか身分をもらってダンジョン管理に協力してる感じだね。ちなみに魔石とかの使い方を教えたのは私達です!」
そう言われて色々と納得いく部分もあった。魔石の利用方法の浸透が復興の為とは言え早すぎた事だ。
恐らく早いうちに政府は、彼女達と接触し情報を得ていたと考えれば合点がいった。
「とまぁ、私達はこっちの世界で生きていく為に、情報を提供する代わりに庇護を求めた形になるかな。まぁでもダンジョン内の情報に関しては、向こうと違いすぎてあんまり役に立てなかったよ」
「そんなに違うんですか?」
「全然違うね!あんなドロドロしたモンスター見たことなかったし私達の知識で役立ったのはスキルとか魔法関連の知識位かなぁ」
と思い出しながら語っていた。
「それで叡智スキルのこと知ってたんですね」
「ええ、村に同じスキルを持ってる人がいたからね。どんなスキルか聞いてたから…これは会ったらまずいなぁと思って」
そこからも色々とこちらから質問したり、向こうの世界の事を聞いたりで時間が過ぎていった。
西園寺さんは、とても話しやすい人でなごやかな会話が続いた。
西園寺さんの雰囲気が突然変わる。
「さて、色々話したけど…ここからは、これからの事を話そうか」
一瞬で空気が一変し西園寺さんの放つ何かに威圧される。
そしてここからは、今後のことについて話すことになった。




