シーカーズタワー
目的地には予定通り2時間ほどで到着した。
お互いにこの特異な状況が重なったことで話も弾み、沙月は今、高校三年生で本当は1月に受ける予定だったのが、インフルエンザにかかり拗らせて入院することになってしまい、受講時期が遅れてしまったそうだ。
それに伴い、自分の今までの苦労をおもしろおかしく話すことにした。絶賛無職ではあるが別に死ぬほど困っているほどではない。途中、同情の為か会話が途切れてしまうこともあったが、そこは昔の経験を活かし笑い話に変えて到着するまでは楽しくおしゃべりできたと思う。
さて到着したのは関東の探索者の管理センターシーカーズタワーである。
ダンジョンからの産出物など貴重な物を多く扱う為、強固なセキュリティに守られており同施設内に関東最大のダンジョンである新宿ダンジョンを抱えている。
係の人に案内され進み、正面入口から入ると関東最大ということもあって人が多く賑わっていた。
自分には縁のないものとして来たことがなかったが、企業に雇われている探索者や個人の探索者が数多く集まっており、ここから新宿ダンジョンに潜っている。
係の人に案内されて進むと総合受付に案内された。
「このお二人が連絡した方達になります」
「かしこまりました、ではお二人はこちらの奥の部屋にお越し下さい」
総合受付のお姉さんに促されて奥の部屋へと入る。
案内された部屋は一般的な事務所という感じに見えたが、奥に進むにつれて扉の重厚さが上がっていき、最終的にはセキュリティの厳しそうなかなり重厚な扉が現れた。
扉の前には見るからに偉そうな40代位の男性が立っていた。
「案内ご苦労、ここからは私が引き継ごう」
「よろしくお願いします、氷川部長」
そう言って案内の女性から引き継がれた氷川部長に促され厳重なセキュリティの奥へと案内された。
案内された先には全長5mほどの巨大な魔石があった。市役所などに置いてある鑑定用の魔石はこぶし大ほどの大きさだったことを思えば巨大さに二人で見上げることになった。
「お二人ともこちらにお越しください」
二人してあまりの大きさに固まっていると呼ばれてしまった。
「これから小林様の魔力値の測定をさせて頂きます。暁様は別室で検査がありますのであちらの女性の所にお進みください」
そう言われ奥の方を見ると白衣を着た女性が手を振っていた。
「じゃあ、また後で」
そう言って沙月に手を振り奥の女性のもとに向かう。
「暁アキラさんですね、再受講者の方はこちらで検査がありますので」
そう言って部屋へと案内された。
部屋に入ると病院の診察室のような作りになっており白衣の女性が椅子に座ると目の前の椅子への着席を促された。
「さて、改めまして私の名前は如月 日和、探索者のメディカルチェックを担当してるの。これからよろしくね」
さっきまでの態度と打って変わり大分フランクな対応だった。
「あっはい、暁アキラです。よろしくお願いします」
「そんなに緊張しなくて大丈夫だよ、取って食ったりしないからさ。とりあえず自分の現在の状況はわかってる?」
ぱっと見は同い年か少し年上のように感じるが物怖じせずズカズカとこちらに話を振ってくる。
「はい、再受講で魔力が確認されたってことまでは」
「そう、再受講で魔力が確認された人が少ないのも把握してるわよね?」
その言葉に無言で頷く。
「よろしい、再受講者で魔力持ちになった人にはどういう経緯で魔力持ちになったか調べる為に色々質問してるのよ、さてとりあえず・・・」
そういって日和さんから色々と質問と言う名の尋問を受けた。ここ1年間で一体何があったか、変わったことをしなかったか?、初めて食べた物なんかはないか?など質問は多岐に渡った。
合わせて血液検査などを行い1時間ほどの時間が経った。