先輩
食堂に着くとすでに霧崎さんが待っていた。
「おまたせしてしまったみたいで、すみません」
「いえ、まだ約束時間前です。私が早かっただけです」
「じゃあご飯食べましょうか!お腹ぺこぺこです」
3人でメニューを選び一緒に食事を始める。
「今日は、どうして誘ってくれたんですか?」
「えっと、この辺で家を探そうと思ったんだけどその件で」
「ああ、日和から聞いているわ、これがその資料よ」
「えっあの短時間で?本当はこの辺のことを聞こうと思っただけなんですけど」
日和に話してから1時間ほどしか経ってないのにしっかり資料が準備されていた。
「元々、これはうちで配ってる資料だからね、それを一式用意しただけよ」
「やっぱり利用される人が多いんですか?」
「そうね、この辺は被害もひどかったからタワー周辺で復興されてる場所となるとそんなに多くないから人気な所は埋まってる所が多いわね」
「なるほど、やっぱり近いほど人気って感じですか?」
「近い所は人気はあるけど1Rの部屋ばかりで数が多いから空いている所が多いわ、逆に少し離れた広い家は数が少なくてほとんど埋まってしまってるわ」
「意外ですね、近い方が便利かと思ったんですけど」
「探索者は、一度潜るとしばらく入ったままになるからね・・・今は特に20階層以降が最前線だから一回潜ったら1週間位戻ってこないってことも結構あるの。そうなると、移動の手間ってそうでもないから帰宅したらゆっくりするって意味もあって広い家を持ってる探索者は多いわね」
「それで1階層とかほとんど人がいないんですね」
「そうね、1階層で狩るよりももっと深く潜って狩った方が稼げるから1階層は、ほんとに通り抜ける人しか今の時期はいないわね」
「それも踏まえて調べてみます」
「ええ、またわからないことがあったら聞いて、うちで管理してるとこもたくさんあるから」
「あっ後、私からも聞きたいことがあって」
沙月が声をあげる
「明後日からは、ゴブリンに移行しようと思うんですけど何か気をつけることはありますか?」
その言葉に霧崎さんは少し考えた後に
「そうね、二人は生き物を殺したことってあるかしら?」
そんな前フリから始まった。
霧崎さんがかつて体験したゴブリンの恐怖を聞き、二人でその状況を想像し息を呑みながら聞く。
実際にその状況になった時に、冷静でいられるかと言われると沙月は自信がなかったようで下を向き何かを考えていた。
そんな様子の沙月を見てかこちらに話を振る。
「暁さんはどう?今の話を聞いてゴブリンと戦えそう?」
「どうですかね、格闘技経験はあるので殴ることに関してはそこまで抵抗はないかもしれませんが・・・ですが、その時になってみないとわからないです」
「それで大丈夫と言わないあたり大丈夫だと思うわ、私は大丈夫と言って、それで失敗して彼女に助けてもらうことになってしまったから・・・」
何かを思い出しているのか下を向く。
「ゴブリンに移行するにあたってなんですけど、武器とかのアドバイスを頂きたいんですけど明日とかは空いてたりしますか?」
「なるほど、そういうことならサポート業務になるから時間を空けるわ。何時位がいいかしら?」
「アキラさん明日は、部屋探しが終わったらデートのはずでは?」
「デートといった覚えはないんだが・・・素人二人で選んでも仕方ないだろ?ちゃんと経験者の人に聞いたほうが良い。それに午後から3時まではデートってことで付き合ってやるからそれで諦めろ」
ほっぺを膨らませて抗議する沙月だったが俺の言うことに間違いが見つからず今回は諦めることにした。
「わかりました、今回は、それで我慢しますけどまたデートしてくださいね、約束ですよ!」
「はいはい、また今度な」
しかし、そんな会話を顔を真っ赤にしながら霧崎は聞いていた。
「あなた達そんな関係だったの!?」
「えっ!?違いますよ!デートは沙月が勝手に言ってるだけでそういう関係じゃありません!」
霧崎さんの様子から俺は勘違いしてることに気付き訂正する。
「そうなのね、びっくりした。でもそう言うってことはそういうことなんじゃないの?」
そう沙月に話を振る。
「いや、そういう訳じゃなくて、そういう訳もあるんですけど・・・この件は後で話しましょう。デリケートな問題なので・・・連絡先を教えてください」
先日は仕事用電話番号とだけ交換したのだが、今回はプライベートな内容になるのでそちら連絡先を交換した。
そんな流れで連絡先を交換する。
「俺ともよければいいですか?」
「ええ、構いませんよ」
「明日、一応3時にモール中央のエントランスの所で待ち合わせで大丈夫ですか?」
「ええ、わかりました。もし何かあって遅れるようならこちらから連絡を入れます」
「明日はよろしくお願いします」
そんなこんなで解散となった。
「うまくいきますかね?」
「誘いに乗ってくれるかどうかかなぁ・・・」
「会話はうまくいってましたかね」
「個人的にはデートのくだりはどうかと思ったが、まぁおかげで本命は隠せた気がするしよかったんじゃないか」
「ああまぁでもほら、うまくいったから良いじゃないですか」
少し慌てながら答える沙月だったが、まぁこちらの本命が気付かれてなければ特に問題はない。
そんな会話をして本日のルーティンを忘れずにこなし解散となった。




