ミレイの追憶【ミレイ視点の話】part2
私を助けてくれた彼女は、両親が死んでしまってからずっと頼る者がいなかった私にとってヒーローのようだった。
「なんで?私はあなたを置いて・・・邪険にしていたのに・・・」
「ああん?パーティメンバーってことは仲間だろ?私は仲間を見捨てねぇ、だから助けるに決まってんだろ」
それは、彼女が一番欲しかった言葉だったのかもしれない。それからミレイは、カナタの胸でひとしきり泣くことになった。
初のダンジョン潜入は散々な結果だった、稼げたのは二人で1万円にも満たなかった。治療費や破損させてしまった装備でマイナスだがそれによって手に入れた二人の絆は今後の探索において大きな力となった。
それからはしっかり準備して、ミレイが作戦を立てる、喧嘩慣れしていたカナタが前面に立ち攻撃を受けミレイが後ろから攻撃するという戦法を取ることで安定して狩りをすることが可能になった。
それからは順風満帆、慣れてくるにつれて狩れる対象も広がり、稼ぎも多くなった。
1日で10万以上は安定して稼げていた。
ミレイの魔眼スキルも使い方が分かってくると狩りに運用することが可能になりさらに効率があがっていった。
「いやぁ、今日も大量だね」
「そうだね」
妹の為にもお金はあればあった方がいい、1日10万以上稼げるようになり生活に余裕が出てきた。
この調子で稼げればいつかは・・・。
妹の病気の対処療法はわかっている、だがそれを実行することは出来ない。だからこそ、今は延命することしかできない。
しかし、ダンジョンの攻略が進めばが見つかる可能性もある、だからこそミレイはダンジョンに潜り続ける。
「そういえば、カナタはなんでお金が欲しいの?」
「んー、内緒かな。そっちも言う気はないんでしょ?」
カナタには話してもいいかと思っていたが変に気を使われるのは、嫌だった。
だから、カナタには妹の事は言ってなかったしカナタのお金のいる理由も、そんなに興味はなかった。
「まぁいいや、そんなに興味ないし」
「ちょっとは、興味もてよ、相棒」
カナタの過去も特には聞かなかった、妙に喧嘩慣れしてる事にも特には聞かなかった。
お互いに事情は詮索しない、だけど互いに最高の相棒だと認識していた。
「そういえばミレイのスキルは便利だよね、魔眼」
「最初は、使い方わかんなかったけどね、使い所も難しいし使ってる間は魔力使いっぱなしっていうのも難しくて」
「使えるだけ良いじゃん、私の特攻スキルは対象がドラゴンだからなぁ・・・いつ会えるやら」
「まぁそのうち会えるでしょ、今10階層だっけ一番深く潜ってるチームは」
「そうだね、確か10階層のボスを倒したって聞いたよ」
「ああ、あの門番みたいにいるボスを倒さないと先に進めない仕様らしいね、倒すと倒した証明のドロップ品が落ちるみたいでそれを持ってるパーティなら門が開くらしい」
「ほんとにゲームみたいだ」
「スキルとかもね、ゲームのシステムを持ってきたみたいに感じる」
そんなダンジョンのせいで私の家族は・・・そう思うと悪しき感情の方が上回る。
魔眼スキル【魅了】は対象の目を直に見ることで発動させることが出来る。
対象の意識を乗っ取り、自在に操ることが可能。
だが、これには弱点が大量に存在する。
前提として目がない対象には使用することが出来ない。
人間は意識を飛ばす程度で操ることは出来ない。
操ってる間は大量の魔力を消費する。
そんな弱点もあるがこのスキルは非常に役に立っている。人数の少ないパーティであっても最前線近くまで潜れていることがその証明だった。
それから1年間、私達のパーティは順調に活動を続け探索者の中でも上位のパーティとして注目される存在となっていた。
ダンジョンの階層については深くなればなるほど難易度があがり最初のようにサクサクと進めてはいなかった。ようやく最前線を行くパーティが20層まで到達しそこにいるドラゴンを確認した。
そこでそのパーティは2名の犠牲を出し突破すること叶わず撤退したという情報が伝えられた。
そしてそのパーティが私達に目をつけるのはそう時間はかからなかった。
「ねぇ、君たちが魔眼持ちと竜殺しのパーティ?」
「誰ですか?」
急に話しかけてきた男に不信感を抱いていた。思えばこの時、断っていれば違う未来もあったかもしれない。
しかし、その時はいい話だと思い誘いに乗ってしまった。
そこからはトントン拍子に話が進んだ。
連携においても特に問題なく、5人での狩りも悪くないなと思い始めていた。
稼ぎについても最初の取り決め通り5等分で問題もなかった。
私達のパーティは失敗から学び、しっかり準備を整えドラゴンへと挑んだ。
ドラゴン戦は今までの戦闘とは格が違った、一撃喰らえば骨が折れたかと思うほどの痛みが走り、ブレスに関してはかわせなければ恐らく死んでいただろう。本当に妹の事を思うならドラゴンなんかに挑むべきではなかったのかもしれない。だけどダンジョンを先に進めなければ妹の病気は治らない、そう確信していた。
ドラゴン戦でのカナタの活躍は凄かった、タンクをこなしながらもカナタの攻撃は目に見えてドラゴンを苦しめていた。
何度目かのカナタの攻撃がドラゴンにヒットした時、ドラゴンは大きな声をあげその身を消滅させた。
初のドラゴン討伐の栄光と共にドロップした中魔石は当時500万、道中までの狩りの報酬を合わせれば一人当たり250万以上稼ぐことが出来た。
5日かかるとはいえこの稼ぎは当時の1日の稼ぎの倍以上だった。
しかし、それが良くなかった。
それからは、ドラゴン戦への遠征の日々が続いた。
レベルもあがりそれほど苦戦もせずにドラゴンを狩れるようになっていた。
この時が絶頂期だった。カナタも自分の力が役に立っていることに満足感を覚えているようだった。
しかしそんな日々は長くは続かなかった。
地力を付け装備を固め魔法を駆使しドラゴンを狩れるパーティが増えてきたのだ。
私達はあくまでスキルによるゴリ押しで攻略しただけでいつかは追いつかれる、それが自然な事だった。
そしてそのパーティの攻略法が公開され色々なパーティがドラゴンを超えその先に足を進めていった、その後は中魔石をドロップするモンスターも増え、価格は下落していった。
ドラゴン戦は無駄に危険が伴うコスパの悪い相手に成り下がってしまった。
だからこそ私達のパーティは先に進むことにしたのだ。
しかし、この選択は失敗だった。




