ミレイの追憶【ミレイ視点の話】
霧崎ミレイ、26歳。
私には、どうしてもお金が必要だった。
3年前、ダンジョン災害は私のすべてを奪い去った・・・。
両親は医者をしており、その時は、お金に苦労することはなかった。両親は多忙ではあったが、時間の合間を見て私と妹を可愛がってくれており、親の愛情をいっぱいに受けてすくすくと育った。
だが、ダンジョン災害によってすべて一変してしまう、当時、私達家族は、ダンジョン災害に巻き込まれることはなく家族全員無事であった。
しかし、両親は、依頼を受け私と妹を残し災害の現場に救助に向かった、世界中で起きた大災害に対して両親は献身的に働いたのだった。しかし、両親は、救助現場での二次災害に巻き込まれこの世を去った。
その当時は、なぜ両親は側にいてくれなかったのかどうして私達を置いていったのかと恨むこともあった。
だが、私にはそんな恨みを抱いている暇はなかった。
妹が倒れたのだった。
妹が倒れた理由は、ダンジョンが現れたことによる新たな疾病、魔力欠乏障害である。
ダンジョン災害後に人類は魔力を得たと言われている。
魔力については鑑定石で自覚するまでは、自身の魔力に気付くことはできない。
だが、魔力自体は体内に存在し自覚が無いだけで魔力自体は持っている。
これに対しての例外は魔力0の人間なのだが・・・。
私の妹の発症した病は、魔力欠乏症という常に魔力を放出してしまう病だった。
魔力を放出しすぎると頭痛、気だるさなどがあるがそれを超え魔力を放出し続けると最終的に気絶する。そしてそれでも魔力を放出し続けると死に至る。
当初は原因不明の病でずっと寝たきり状態の上、点滴などで栄養を送っても徐々に衰弱していく様子にどうすることも出来なかったのだが、この病についてはダンジョンが見つかって比較的早い段階で原因と対症療法が世界に公表された。
しかし、その対症療法を行うには妹にはある問題があった。
解決する方法はわかるが、その方法を実施することが出来ないのは、なんという無力感だったか・・・そして妹を死なさない為には、常に外部から魔力を供給する必要があった。
それには莫大なお金が必要となる。
両親の遺産だけでは足りなくなることは、目に見えていた。
当時の妹は18歳、残された家族を私が絶対に助けると誓った。
それからは必死にお金を稼ぐことだけを考えていた。
必死に働き金を稼ぐがそれは、すべて治療費へと消えていく。このままではいずれ枯渇することは目に見えていた。
そんな時だった、探索者募集に目を付けた。
検査を受けた結果、魔力値はその当時の日本では数えるほどしかなかったBランク、私をこんな地獄に落としたダンジョンで稼ぐことについて思う所もあったがそんなことを言っている場合ではなかった。
それに潜り続けていればあれにも手が届くのではないかと・・・。
なにより当時はダンジョンバブル、ダンジョン資源は高値で取引され探索者は命を担保にすれば非常に稼げる仕事だったのだ。
パーティシステムを使い複数人での狩りを推奨されたがその場合は、報酬も人数で等分される。
それすら許容できない、それほど切羽詰まった状態だった私は、一人で潜ろうとしていた。
それを止めたのは彼女だった。
『竜崎 カナタ』私のパートナーだった女性。
彼女は、私と同じ講習を受け探索者になった人だった。
「おいおい、何、お前一人で潜る気なの?」
なんてガサツな言葉遣い、今までこういった人と関わったことのなかったので当たり障りなく対応することにした。
「はい、そうですが、あなたに何か関係がございますか?」
「おいおい、パーティで潜れと言われただろうが」
「パーティで潜るのを推奨すると言われただけで潜るなとは言われてません」
「ああ、そうかよ、あんたも金がいる口か、じゃあアタシと一緒に潜れよ、こっちも金がいるんだ」
「は?だから私は一人でいくと」
「報酬二等分で効率が二倍以上になれば問題ないだろうが」
「そうですね、なら役に立つというところ見せてください」
カナタに言いくるめられる形で二人でダンジョンへと潜る。
しかし、私はダンジョンというものを甘く見ていた。
命を担保にするということの本当の意味を・・・。
スライムは実習で倒していたしなんの問題もなかった。
しかしスライムのクズ魔石は当時でも1000円ほどでこれでは稼ぐことはできない。数体を狩りゴブリンへと勝手に移行した。
「おい、待てって」
「このままでは効率が悪いのでゴブリンにいきます!」
そういってスライムを狩っていたカナタを置いて2階層の入口へと移動する。
スライムはまだ他の探索者がたくさん狩っていたがゴブリンに移行してるパーティはまだそんなにいなかった。
ゴブリンのエリアに入り辺りを確認すると狩ってるパーティはいないようだった。
すぐ側にいたゴブリンを見つけ殴りかかった。
しかしここで初めて生き物を殺すという事が如何に難しい事か体感することになった。
それほど強くはないゴブリンだがサイズは人間の子供ほど、だが、必死に突っ込んでくる生き物がどれほど怖いかということを、味わうことになった。
「なんで!倒れないの!?」
必死に警棒で殴ってもゴブリンはこちらに向かってくる、スライムとは違う人を殴る感覚それに戸惑い、手が震えていたことに私は気付いてはいなかった。
そしてそんな状態を見透かしてかゴブリンは、死ぬ気で棍棒を振り回しこちらに向かってくる。
そんなことをしているうちに頭を殴られ転倒する。
そしてゴブリンに馬乗りになられ、身体はさらに緊張し、ただただ急所を庇うように頭を守ることしか出来なかった。
そこに棍棒が振り下ろされ腕に痛みが走る、このまま死ぬ訳にはいかないそう思い身体を奮い起こそうとするがそれをあざ笑うかのように棍棒が振り下ろされる。
目を瞑る・・・が棍棒は当たらなかった。
「アタシの相棒に何してくれてんだ!てめぇ!!!」
そんな声と共に馬乗りになっていたゴブリンの身体が横に吹き飛ぶ。
目を開けるとそこにはカナタが立っていた。




