霧崎ミレイ
3人で食事を取りながら雑談をする。
「狩りを見ていましたが暁さんの動きは素晴らしいですね、確か元ボクサーだったとは資料で見ましたが」
「ありがとうございます、プロデビュー前だったのでボクサーと言っていいか怪しいですけどね」
「しかし、あの身のこなしは素晴らしいです、あの動きならさらに下層でも通じると思いますよ」
かなり動きはセーブしていたのだが気付かれてはいなかったようだ。
「経験者にそう言ってもらえると自信になりますね、まぁこのまま下層にいくと足を引っ張るのでしばらくはここでレベルあげしないといけないんですけど・・・」
そういうと霧崎さんは先ほどまでとは、違って少し気まずそうな顔をする。
そんな空気を察してか沙月が話し出す。
「じゃあ私はどうでした?」
正直あのドロップ品のことを気づかれてないか気が気でなかった。
「小林さんは生命感知での索敵精度が凄いですね、すぐにスライムを見つけていたのでこんな早い速度でのスライム狩りは見たことがなかったので驚きました」
「そう言われると、たくさん練習した甲斐があります」
「でも、ドロップは暁さんに任せたほうがもっと早く移動できるのではないですか?」
やはり違和感を持たれていたか・・・と思ったが
「倒してもらってるので拾う位は私の役目かなと思いまして。収集用のカバンもアキラさんが動きやすいように私が持ってるので」
という言い訳にナイスだと心のなかで称賛していると
「なるほど確かに動きやすさは大事ですね」
そういって霧崎さんは納得してくれたのでよかった。
「しかし、動きだけ見れば本当に下層でもやっていけそうなんですけどね」
「でも下層になるとスライムがいないので効率が落ちてしまうので」
特攻スキルのデメリットをよく分かっている霧崎さんにとっては本当に残念に思っているんだろうな、もしそのスキルじゃなければと。
「差支えなければなんですが霧崎さんのパートナーだった方の話をお伺いできますか?」
気になっていたことを聞いてみた。特に自分以外の特攻スキル持ちについても興味があった。
「そうね、参考になることもあるでしょうし、お話しましょうか」
それから彼女は、思い出すように語ってくれた。
パートナーの名前は『竜崎 カナタ』 女性だったそうだが男勝りな性格で講習が一緒になりパーティを組むことになったそうだ。その当時は、まだダンジョンが解放されたばかりでスキルの効果についてあまり知られていなかったそうだ。
霧崎さんはどうしてもお金が必要だったようでその当時、ダンジョンバブルと言われるダンジョンから産出されるドロップ品の価格がうなぎ上りの時期だったそうだ。
パーティシステムは確認されており、最大人数である5人での狩りが推奨されていたそうだがお金が必要だった彼女は1人で潜ろうとしていたそうだが、それを止める形で竜崎さんがパーティに誘ってくれたそうだ。彼女もお金が必要だったそうで、利害が一致し二人でずっと一緒に潜っていたそうだ。
初めのスライムから始まりさらに下層へと下っていく。霧崎さんの魔眼スキルはかなり有用で2人でも狩りに苦労することはなかったそうだ。その時は、体格の大きい竜崎さんがタンクの役割をしており特攻スキルのデメリットについて特に気にはなっていなかったそうだ。
そもそもレベルの低いうちは、モンスターを何回も攻撃するのが一般的であり特に魅了スキルによって同士討ちを誘発させていた為、通常よりも戦闘時間が短かったのも気づくのが遅くなった原因だったと語っていた。
二人で潜りだしてレベルもあがりその頃は、15階層を狩場にしていたころ、さらに先に進んでいた探索者から合同攻略の依頼があったそうだ。
その攻略内容は20階層のドラゴンだった。竜崎さんの特攻スキルがドラゴンへの特攻だと判明していた為、応援の依頼があったそうだ。
「その時は、報酬もおいしかったしなによりそれまで役に立っていなかったスキルが役に立つと知って、カナタは喜んで参加を了承したわ」
20階層までは5人でパーティを組んで向かった。しかしその時に竜崎さんの攻撃の威力が低いことに気が付いたそうだ。レベル差もあるとはいえ明らかに竜崎さんの攻撃だけモンスターに効いていなかったのだ。魅了による狩り方法ばかりしていた為、比較対象が少なくずっと気付いてはいなかったのだ。
その時は、霧崎さんだけが気付き周りは気付いていなかったそうだ。そして20階層のドラゴン戦となった。
ドラゴン戦での竜崎さんの活躍はすばらしく皮膚が固く突破ができなかったドラゴンの皮膚を彼女の攻撃は突破することができたのだった。彼女の活躍もありドラゴンを討伐し一般人では初のドラゴン討伐者となったのだった。
報酬は大きかった。ドラゴンのドロップ品は、あの中魔石で当時は1つで500万の値段がついていたそうだ。5人でわけても100万ずつ。当時の稼ぎとしては破格だった。
お金の必要だった二人にとっては有難く、そのままパーティを組んで狩りをすることになったそうだ。
それからしばらくは、何の問題もなかった、20階までいきドラゴンを狩り帰るそれだけで100万以上の収入があった。だが、それも長くは続かなかった。
中魔石が20階層以降で続々とドロップしだした為、市場価格が下落し始めたそうだ。
「あれは辛かったわね、ドラゴン戦は装備の消耗も激しく20階層まで潜るのは、5日以上かかるとなるとだんだんとドラゴン狩りだけじゃ儲けは少なくなっていった、そうなったら当然さらに深く潜ることが必要になった」
そしてさらに深く潜るようになりあの効果が浮き彫りとなることになった。
潜れば潜るほどそしてレベルがあがれば上がるほどに竜崎さんの攻撃は、効かなくなっていった。
タンクとしての役割は敵を引き付ける必要がある。しかし彼女の攻撃は、敵は全く脅威と思わず引き付けることすら出来なくなっていったのだ。そうなってくると完全に足手まといである。
だんだんとパーティ内で居場所がなくなり酒に逃げるようになっていったそうだ。
そしてついに、パーティから追放されることになってしまった。初の民間のドラゴン討伐パーティということもあり有名になっていた彼らのパーティには加入希望者が多かった。そしてレベルがあがったおかげで全員の攻撃がドラゴンに効くようになったことで彼女の役割は完全になくなってしまったそうだ。
その彼女を追う形で霧崎さんもパーティを抜けたそうだ。リーダーが天狗になり自分のいうことを聞かないやつを邪険に扱うようになっていたのも理由だったそうだ。
それからは、二人でパーティを組んでいたが魔眼の効かない敵も下層には増えてきており、狩りの効率は以前と比べ物にならないほど落ちたそうだ。ドロップ品の買い取り価格も落ち着きどうしても稼ごうと思うと下層に潜る必要があった。しかし、悪評が広まっていた竜崎さんを入れてくれるパーティは、存在しなかった。
この頃から特攻スキルのデメリットが広く周知されハズレスキルとして扱われるようになった。
「このスキルがハズレスキルなんて呼ばれるようになった原因は私たちの影響が大きかった、ほんとに申し訳ないことをしたわね・・・」
そういって霧崎さんは謝罪してきた。
「いえ、そんなことは・・・実際に使いにくいスキルなのは間違いないですし、それからどうしたんですか?」
地道にレベルをあげ下層に挑戦する毎日だったけど、ついに竜崎さんが折れたそうだ・・・酒におぼれていた彼女は身体を壊し入院することになった。そして彼女は探索者を引退したそうだ。
「まぁ割と最近のことなんだけどかなり前のことのように感じるものね・・・私には、彼女は救えなかった。自分の都合もあったとは言え、彼女と共に引退することもせずこうしてダンジョンに縋り付いている。薄情な女でしょ?」
そういって苦笑いを浮かべる彼女を見て俺はさらに決意を固めた、彼女達を救いたいと・・・




