事前準備
その日、朝早くから全員が沙月に呼び出されていた。
「昨日から確認していたのですが、明らかにこちらに近づいて来ている船がいます」
沙月から打ち明けられたのは襲撃者の存在だった。
沙月の『索敵』スキルの凄さは以前の北海道の時にも感じていたがかなりの距離でも感知出来るようになっていた。
「ちなみに今朝確認しましたが恐らくサキさんの弟さんです…つまりDDDの」
「なるほど…あの馬鹿…」
サキの弟である光がDDDに渡った事についてはすでに調べがついていた。
恐らくあの後遺症を治す為に誘いに乗ったのではないかと思っていたしそれも仕方ない事だとサキ自体も思っていた。
「対応をどうするか決めたいと思います…」
沙月としては以前の事があるのである程度備えていたようでプランを提示された。
・襲撃を待ち伏せして地上で制圧
・ダンジョン内で待ち伏せして制圧
細かいプランもあるが大前提としては地上で制圧するかダンジョン内かの2択である。
「今の私達であれば地上で一方的に蹂躙することは難しくないです」
先日手に入れたスキルによって俺達は地上でもダンジョン内と変わらずスキルを使用できるようになった。
これを利用すれば地上でも問題なく制圧することが出来る。
「ダンジョン内で制圧となると向こうもスキルをフルパワーで使えるし危険も増えるから地上で良いんじゃないか?」
「私もそう考えてます…ダンジョン内で潜伏されても面倒ですからね」
ダンジョン内に潜られてしまえばしばらくの間潜伏することが可能となる。
ダンジョン内に籠もるのは色々とペナルティがあるが3日以上滞在すると管理者側から警告という名目で接触が可能となると日和が言っていた。
まぁ直接手を下せるのは同じ場所への滞在やかなり期間をダンジョン内で過ごしている場合は強制で排出が可能となるそうだが移動しながら潜伏されるとそれなりの期間を警戒して過ごさなければいけない。
「『魔空間』を使えるのは沙月だけだし上陸地点で迎撃するのか?」
カナタが質問する。
「それが一番だと思ってるんですけどあちらの戦力に厄介なのがいるんですよね」
沙月の話では襲撃メンバーの持ってるスキルに潜伏系のスキルを持っている物が複数人いるそうで沙月であれば捕捉できるが戦闘中だったりした場合は見逃す可能性があるとの事だった。
「なので最初の襲撃で今から見せる3人を確実に行動不能にして欲しいんです」
そこで沙月が見ている光景が俺達に共有された。
この力は『パーティマネジメント』のレベルが上がった事で使用可能になった能力でメンバーが見てる視覚を共有することが出来る能力だった。
「一向にレベルが上がらないので何か条件があると思っていたのですがまさかパーティの結成と解散が条件になってるとは思っても見ませんでした…」
色々と検証を行う為にパーティ関連の機能を使っていてようやく気付いたのだった。
パーティ自体は一定以上の階層もしくは距離が離れた場合に自動で抜けるので1人になれば自動で解散されるのだが俺達の場合は、それがほとんどなかったのも気付くのが遅れた理由だった。
沙月は基本的にパーティの解散自体をすることがほとんどなく誰かしらとパーティを組んだ状態で過ごす事が多かったのでこのパーティの結成と解散という行為をすることがなかった。
その結果、パーティの結成と解散を繰り返す事でレベルを上げる事に成功した。
ちなみにこのパーティの結成も同じ人でやっても意味がないことがわかりここで働いている兵士の人たちや日本に帰国した際にも職員さんに協力を仰ぎレベルを5まで上げる事が出来た。
その結果解放された機能がいくつかある。
・視覚共有
自身の見てる視覚をパーティメンバーに共有することが出来る。
・パーティ人数上限解放
最大10人までパーティを組むことが出来る。
6人以上でパーティを組んだ場合は、ドロップ品及び経験値の取得はなし。
節制のカウントもされない。
他にもパーティメンバーの位置や念話の範囲が拡充された。
階層間でも念話が可能になったのだが…アカネのおかげですでに問題解決していた上に可能なのは1階層範囲だけなのでそれほど影響はなかった。
共有された顔を全員で覚える。
「大前提ですが基本的には殺さずに捉えることを念頭においてください」
「本当にすみません…」
サキが頭を下げる。
「いえ、人殺しなんてしたくないですしレベルから見てもサキさんの元パーティメンバーさえなんとか出来れば残りは私たちのレベルより下ですしそこまで問題はないと思います」
俺達のレベルは全員40まで上がっている。
また手に入れる事が出来た『早熟』スキルでアカネのレベルを俺達と同じレベルまで跳ねあげた後は俺達全員のレベル上げを行った。
その結果全員が40レベルまで上げる事は出来たがほんとうに上がりにくい…。
経験値倍加スキルを使用してもこれである。
「この短期間で1レベルあがっただけでも凄いんですよ…」
沙月がぼやいていたが経験値の必要数は倍々になっているらしくこればかりは仕方ないとの事だった。
「元パーティメンバーのレベルは?45レベル…43、43ですね。弟さんが一番高いです」
「よくこの短期間でそこまでレベルあげたな…」
「ヤバイスキル取得してたのでそれでだと思います…『超早熟』ってかこんなスキルあったんですね」
沙月の話では期間は『早熟』と同じだが期間中の取得経験値が100倍になるそうだ、しかし期間終了後は一切経験値が入らなくなるというとんでもないデメリット付き。
「そんなスキルだって知って取ったのか?」
「そこまではわかりませんけど期間中は休む事も許されなかったんじゃないですかね…」
まぁ沙月の言うことも尤もで沙月のようにスキルをどうにか出来なければ二度とレベルが上がらなくなるのだからその期間中は寝る間も惜しんでレベルを上げさせられることは想像出来る。
「まぁという訳で3人のレベルが突出してますが他のメンバーは全員30~38なので問題ではないと思います」
「モーガンの話だと10レベル差じゃなければそこまで差はないって聞いたが」
「これも言ってたでしょう?スキルがあればそれは覆るって」
「確かに言ってたが相手はDDDだろスキルは大量に持ってるんじゃないのか?」
DDDの状況を考えればスクロールをかなりの数を産出してる可能性が高い。
「うーん。確認して見たのですがそこまで希少なスキルは取得してないみたいなんですよね…まぁスキル数自体は多いは多いんですけどどれも未確認のスキルではなくて固有スキルはともかくとして強力なスキルは持ってないみたいです」
確実に成功させるつもりであればもっと強力な人材を派遣してくると思うのだが…そのつもりがないのか?
まぁリスクのある行動に最大戦力を投入しないという考えは理解出来るが…ただDDDの立ち回りを考えると少し違和感があった。
これまでの行動を見るにリスクよりもリターンを狙って行動してる節があるからだ。
「これを前提として作戦をお伝えします」
沙月の一言で作戦が伝えられた。




