撤去作業
停戦命令が下ったタイミングで部屋に入った。
「もっと難航するかと思ったけど思ったより早かったな」
後1時間位は遊ぶだけの余裕があった。
「かなり強情だったのでちょっとお話しただけですよ」
そういう沙月の側には例のレベルの高い探索者だろうか?が横たわっていた。
「この度は救助して頂きありがとうございます…」
そういって頭を下げるのはロシアに派遣されていたエルフだったようで西園寺さんよりも背が高い。
「こちらはアリーナ・スミルノフさんです」
沙月の紹介に合わせて頭をまた下げる。
「派遣先の国家の名前を使ってるんだな」
「はい。一応エルフの存在は極秘扱いなので形としてはロシア国民という扱いになります」
「なるほど…」
「それでどうするんだ避難するんだよな」
「近くの公園に避難しようと思ったんですけど思ったよりも人数が多いので近くの広場も使わないといけないそうです」
「そんな広場あったか?」
「ええ…瓦礫の下敷きになってますが…」
「なるほどな」
広場自体は壊されていないのだが周辺の建物の残骸でとても人が入れるような場所ではないそうだ。
「それならどうするんだ?」
「一時的に公園に避難してもらってその間に瓦礫を撤去しようかと」
「地上でそんなことできるか?」
ダンジョン内ならレールガンをぶっ放せば可能だと思うがダンジョン外では磁界を発生することもできないので火力が出せない。
「私の念動操作でいけると思うので大丈夫です」
「あんまり無理するなよ」
「全然だいじょうぶです」
隅で怯えていた権力者の男はエルフの存在をしっていたそうでエルフの住むこの建物が狙われないていないことに気付き立て籠もったそうだ。
ただ、エルフに手を出したらどうなるかなどの詳しい事情は知らなかったようで見目美しいエルフを目の前にしたことで欲が出てしまい危害を加えようとしていたそうだ。
彼女もそれなりに自衛能力があったおかげでことなきを経たのだがここに閉じ込めて今度は力ずくでなんとかしようと思って高レベルの隊員を連れてきていたようだ。
実に間一髪だったようだ。
「こんな状況下でどうしたらそういう発想になるか理解に苦しみます」
沙月がため息混じりにぼやく。
「いうて登ってくる最中にもそういうことしてる奴多かったんだろ…」
「まぁそれはそうなんですけど…」
40層から登る時も階段まで聞こえる位の大きな声で行為に及んでる人間がいた。
そもそも俺達とすれ違った兵隊も見回りではなくその類の行為をしようとしていたようだったのだから別に彼に限った話ではない。
「人間は命の危機から生還した後に性欲が高まるらしいし仕方ないんじゃないか…まぁ理屈はわかっても共感はしないが…」
実際に自分達の安全を確保してくれてる存在に危害を加えるとか馬鹿過ぎる。
という訳で上の奴らには特に義理もないのだがさすがにこのマンションにいる多数の人間を犠牲にするわけにもいかないので避難を開始した。
ミレイとカレンが護衛につき公園へ誘導する。
ちなみに避難をゴネていた人間の為に沙月の指示で上層階の一部の柱を吹き飛ばして避難せざる得ない状況にしたので誰も逆らうこと無くスムーズに移動してくれた。
荷物などを持ち出す時間はあったのだから普通の避難よりはよっぽど良心的ですよと沙月が言っていた。
「さて俺達は撤去作業だな」
「モンスターの相手は任せていいですか?」
「ああ、なんとかするから心配するな」
広場の撤去作業を開始した。
念動操作によって瓦礫が持ち上がりそれを広場の端に飛ばしていく。
残念ながら作業中に何度かモンスターの攻撃の余波があったのでそれは俺が防いでいた。
一番最初の対処の際にモンスターを攻撃してしまった為にこちらに攻撃のヘイトが向いてしまいめんどくさいことになったが幸いにもドラゴンだったこともありそれほど苦戦はしなかった。
それからは余波を防ぐことだけに集中したおかげでモンスターとの戦闘はなかった。
「しかし目と鼻の先でモンスターが暴れてるのを見るのはなかなかドキドキするな…」
「確かにそうですね…一掃出来ればいいんですけどまぁそれをやるとさっきみたいに向かってきそうですしね」
「ああ、あれはまずかった…」
「後はここに避難させたらダンジョンに引っ込みましょう」
そういって沙月の作業自体は1時間ほどで終了した。
安全確保もクソもなかったので早かったが死体等がなかったことは幸いだった。
「死体がないのが変なんですよね…」
「ああ普通は死体があってもおかしくないはずだが…」
「恐らく、死体はダンジョンが回収してるわよ」
シトリーが現れて補足してきた。
「まじかよ…それで死体がないのか」
「まぁダンジョンの栄養にするんでしょうね…虐殺はエネルギー吸収効率が悪いからダンジョンも望んでなかったでしょうけど」
あまり面白い話ではないが死体がなかったのは好都合だった。
撤去作業も終わったので公園に戻ろうとしたのだが…。
「ちょっと待ってください」
どうやら沙月が何かを見つけたようだ。
「かなり遠いですけどロシア人じゃない人間がいます…しかもそれなりにレベルが高いです…」
「探るか?」
「探知スキル持ちなので私がいきます」
『探知妨害』のスキルを持ってるのは沙月しかいないので沙月に任せるしかなかった。
探知範囲のギリギリまで護衛してそこからは沙月にまかせて待機するしかなかった。
念話は使用できるので様子は確認出来るのだが心配は尽きない。
(ああ、多分DDDの諜報員っぽいので捕獲して色々吐かせますか)
(大丈夫なのか?)
(アキラさんほどスマートにはいかないと思いますけどレベル差もあるので大丈夫です)
そういった沙月は数分後に諜報員を連れて戻ってきた。
「ちょっと失敗しました…まさか長距離の念話が出来るとは…」
気絶してる諜報員を連れてきたがどうやら何かあったようだ。
「面白い魔道具を持ってたみたいで魔力値を見られたのとそれを連絡されちゃいました」
「大丈夫か?」
「魔力値は正直バレても問題ないので大丈夫だと思いますけどこの諜報員はこのまま外に放置は出来ないのでダンジョン内につれていきましょう」
何かあるとまずいので俺がその諜報員を背負い、ミレイ達と合流して近場のダンジョンへと向かった。
避難民の人たちは何か言いたそうにしていたがここまでやったのだから後は自分達でなんとかしてもらうしかない。
多少の罪悪感は覚えたが、早くダンジョンに向かう必要が出来てしまったのでダンジョンへと向かった。




