アキラの弱点
日和いやヒトラスだっけか…いや日和でいいやにひどい目に合わされたのだが拘束具に関してはしばらくして外れたのが幸いだった。
「しかし、かなり大事な設定をしてなかったんだな」
「そもそもそんな設定あったこと気づかなかったもの」
「日和も困ってたな」
「まぁこれで50層にいけば対面出来るようになる訳だしよかったじゃない」
どうやら51層に向かう扉が開かないようになってしまっているそうでそれより深くに日和はいけないようだ。
「それとワタクシよりも自分の命の方を大事にしなさい」
「それはそれだ」
それを聞いたシトリーは深い溜息を吐きつつ照れているのかそっぽを向かれてしまった。
魂の存在とはいえ俺はすでにシトリーのことをすでに仲間だと思っている。
だからこそ自分の命を投げ捨ててでも助けたいと思っていた。
まぁ一心同体という話ななので俺が死んだらどうなるかわからないのだが…。
それでも俺が生きてる間に死ぬのを見たくなかった。
そしてまた奇襲されたらたまらないのでカレンの部屋を訪ねた。
「まだ起きてたか?」
チャイムを押したらドアが少し空いて反応があったので声をかけた。
夜21時を回っていたので悪いとは思ったのだがさすがにちょっと出るだけで50万を使用する気概はなかったので訪ねた。
「あっ起きてますけど…ちょっとまってください」
姉妹で同じ部屋で寝てるという訳ではなく向かい通しで寝ているそうだ。
なので対面にはミレイの部屋がある。
その後、少ししてからTシャツにジャージのようなものを羽織って出てきた。
「すいません、お風呂の後だったのでかなりラフな格好してて」
「いや、こっちこそ悪い、足で使うだけで申し訳ないんだがちょっと家に用事があって1層につれてってくれるか?」
「いいですよ」
カレンはすんなり了承してくれたので助かった。
日和の事を報告した方が良いと思ったのだが…ちょっと考えがあるのでまだ黙っておく事にした。
そこからカレンの能力ですぐに1層のセーブポイントに飛ぶ。
「すぐに済む用事だけど一緒にいくか?」
「そうですね、私もちょっと本のデータをダウンロードしたいので一緒にいきます」
ダンジョン内ではネットに繋がっていないのでその辺りは不便ではある。
すぐに入口という訳ではないので大穴に向かう、まぁ正確には崖なのだが…。
俺は走って、カレンは風魔法で崖上に登る。
そしてそのまま外に出て家に向かった。
「アキラさんは何か取りに行くんですか?」
「ちょっと連絡を入れておきたくてな」
ついでと言ってはなんなのだがドラマ化の件を断るつもりでいた。
やはり自分の手に余る案件なので少し期間を置いてから断るつもりではいたのだがあまりに期間を置いても悪いと思い連絡を入れる事にした。
こんな時間に起きているのかって?あそこの編集者はいつ連絡してもなぜか仕事してるので活動時間はよくわからないのだ。
以前は、24時過ぎにメールの返事を送ったら普通に電話で返事が帰ってきたのだから怖い。
まぁ今はどこの業界もやれる人に仕事がのしかかる傾向があるので仕方ないのかもしれないなと誰でも出来る仕事だというのにクビになった過去の自分を思い返し軽く凹む。
カレンと別れて部屋に戻る。
ホテルの風呂も良いが家の風呂も入りたいなと思ったが、さすがに今入るの訳にはいかないと後ろ髪を引かれる思いではあったが思いとどまった。
そしてとりあえずメールを入れたのだが案の定すぐに電話いいですか?とメールが来て電話に出る。
「仕事してないといいなぁと思ったんですけどまだ仕事してたんですね…」
「ははは…まぁいつものことなんで、その話は置いといてやっぱり駄目ですか」
「まぁ責任とれないので…申し訳ないです」
「いえいえ、仕方ないと思います。それにこれで完全に企画は立ち消えると思いますし」
「ん?何かあったんですか?」
「いえ、情報漏えいとか色々あったんですけど企画は頓挫しそうだったのでもしOKがでてれば話は違ったんでしょうけど」
「それはそれは…」
なにやら色々あったようだが先日の時はかなり盛り上がってるという話だったので申し訳なかったのだが少し心が軽くなった。
「ただ、代わりにというかアニメ化の話がきてます」
「アニメは以前やってませんでしたか?」
アニメ化自体は母が監修をしてやっていたのを一緒に見た記憶があった。
「はい、リメイクという形でして当時の監督さんとかにもお話をした所許可が降りるなら是非に」
「なるほど…すぐにお返事をしたほうがいいんでしょうか?」
「いえ、こちらに関しては代替的感じでまだ案の状況なのでゆっくり考えて貰えれば」
「わかりました」
そういって通話が切れた。
情報漏えい関係のニュースを調べてみると確かにかなりニュースになっていた。
どうやらテレビ局の関係者からの漏洩らしく出版社には直接被害はなかったようだが、そこから波及して他にも色々と不祥事が発覚して大変な事になっているようだ。
「うへぇ…謝罪会見までやってる…」
まだ発覚して数日だというのに恐ろしい勢いで拡散したようですでに全国ニュースで大きく取り立たされていた。
「もしかしてあのVチューバーか?」
沙月に調べてもらったのだが恐ろしい位情報が無いらしくほんとに中の人が存在しているのかと疑うほどらしい。
気になってざっくり調べてみるとどうやら情報漏洩をやらかした人間を掲示板で見つけたのに突っかかっていたらしくその後この事件が発覚したので関与を疑われていたようだがあくまでも疑惑だけで本人は何もコメントしていなかった。
「逆に怖い…」
下手に触れないほうがいいかと思っているのだが、沙月の予想だと電子系の固有スキルを持っているのかもと言っていた。
それ次第では勧誘もしたいとの事で気合いを入れて探すといっていた。
まぁ俺にはどうすることも出来ないので見守るしかなかった。
これで一度外にでた事にはなったはずなので大丈夫だろうと思い部屋を出る。
普段であれば家に帰ってから飯を食べるようにしていたのだがここ数日はホテルの厨房を使いたいとの事でホテルで食事を取っていたのが災いした。
他のメンバーは何かと家に用事があるそうで頻繁に戻っているみたいなので心配は無さそうだ。
「基本的にお風呂に入る為に帰るだけだものね」
シトリーが話かけてきた。
「そうなんだよな…完全に抜けてた」
風呂に関してもホテルの風呂もかなり豪華なので不便は感じていなかったのも災いした。
1階層に戻る時にみんなカレンに連れられて戻っているのだがパーティ人数の関係上、数人居残り組がいるので余り気にしてなかったのもある。
「まぁ今後は気をつけなさい」
「そうだな…」
「所で相対した感じ勝てそう?」
どうやら日和に勝てるか聞いてきているようだが…
「無理だろうな」
「本気でやっても?」
どうやら手心からだと思っているようだけどそうではなかった。
「元身内だから本気でやれないと思ってるかもしれないが恐らく本気でやってスキルもフル投入しても勝てない」
あの時、大人しくしていたのは動けなかっただけではなく日和の圧にやられていたからだった。
「悪魔ってみんなあんな化け物なんだよなぁ…」
シトリーやストラスの戦闘を見ていた時にも感じたがそもそも攻撃を当てる自信が持てなかったのが大きい。
「まぁ私を含めて本気でやるなら相手は出来ると思うけどね…」
「ん?何かいったか?」
「いえ、何も…」
何かいったようだが俺には聞こえなかった。
そんなこんなしているとカレンが戻ってきた。
「すいません、買いだしたら止まらなくて…」
本を色々物色していたようでダウンロードに時間がかかったそうだ。
「構わないぞ、出版業界を支えてやってくれ」
何やら頭を傾げられて不思議な顔をしていたが先程のニュースを見て少し同情心が沸いていた。
「所でなんですけど…」
そういってカレンの顔が俺に近づく。
そして耳に息を吹きかけられる。
「んッ~」
変な声が出てその場に耳を抑えてしゃがみ込む。
「ほんとに弱いんだ…」
「何を!?」
「いえなんでもないです、男の人は耳弱い人多いって聞いて試してみようかと思って」
「俺も耳弱いなんて初めて気付いたぞ…」
今まで生きてて耳に息を吹きかけられた経験は記憶になかったので非常に困惑した。
「気付いてなかったんですね…なるほど…」
なにやら考え込んでいるがこちとら人生初めての経験で困惑が勝っていた。
いやもしかしてそうなのか…小さい頃から耳掃除だけは母たちはやってくれなかったから定期的に病院に通っていたし大きくなってからも習慣で病院で処置してもらっていた。
ここ最近行ってないから今度いかなきゃなと思っていたのだが…じゃないな。
「今後、息の吹きかけをした場合は迎撃するから絶対するなよ」
俺が眉間にシワを寄せながら怒ると
「ごめんなさい…もうしません」
しゅんとしながら謝ってきた。
「わかればヨシ」
というやりとりをしたあと、雑談をしながらホテルに戻った。




