沙月side____?
アキラと話す事があったので待ち合わせをしているのだがアイラさんに捕まって話していて少し遅れてしまった。
2人とも馴染んでくれたようで安心していた。
迷惑をかけた手前、罪悪感はある…だからこそ順調に進んでいるようで安心もしていた。
それとは別にアイラさんが最近、アキラの事をよく目で追っているのでだが、その目がどうやら彼女達と同じような感情を向けているような気がしているので若干複雑な気持ちではある。
どうやったら警戒心MAXの状態の人を10日程度で落とせるのか…いや彼女達もほぼ一目惚れみたいなものだから一緒か…などと考えながらラウンジについた。
そこにはアキラが待機していた。
遠目で見ても本当にオーラがあるなぁ…高級ホテルのラウンジが似合いすぎている。
見惚れているとこちらに気付いたようで手を挙げて呼んでくれた。
マジでその笑顔良すぎるな…じゃなくて!
我に帰りアキラの前に座る。
「お待たせしました」
「全然いいぞ。アイラさんとなんか話してただろ」
「はい、改めてのお礼と後は今後のことですね」
「今後?」
「レベル上げをする必要がなくなったので私はどうしたら良いかって相談でした」
「ああ、そういうこと」
自分のレベルを上げるというか経験値を稼ぐ必要は無くなった。
上げる必要がないのなら自分のレベル上げではなく娘のランのレベルを重点的に上げたほうが良いのではないかという話だった。
「2人とも戦力としてカウントしてるので2人ともレベルは上げますよって答えときました」
「それで良いと思うぞ。アイラさんは訓練でも上手くいかないっていってたからそれで気にしてるのか?」
アイラさん自身は戦闘能力が他の人と比べて見劣っていると思っていたようでそれが気になっている様子だった。
「それを言い出したら私も大した戦闘能力は持ってないんですけどね」
控えめにとかではなく間違いなく単独で戦闘した場合に一番弱いのは多分沙月だ。
アキラにある程度の護身として体術は教わっているようだがそれだけだ。
なので今後は逃げに特化しようと思ってかそれ用のアイテムを用意しているようだった。
「ちゃんと体術訓練来ないからだぞ」
アキラだけは、沙月の弱さを知っている…こんなだからいつまでも恋愛に発展しないのではとも思ったが…いや強くなっても変わらない気もしている。
「アキラさん位の人に体術訓練だけじゃどうしようもないのでとりあえずこんなものを用意しました」
そういってアイテムを見せた。
丸い野球ボール位の球だ。
「これは何か役に立つのか?」
そういってヒョイっと球を持ち上げて見ている。
「アキラさんは今着ている服とかに思い入れあったりします?」
「いや、別にないけど只の部屋着だし」
「それは私の合図で触れている相手の武装を解除して拘束するアイテムです」
「えっ!?」
「起動!」
驚いたアキラは反応することは出来ず、起動した球はアキラのすべての武装(洋服)を排除して腕と足を拘束する。
「沙月!お前何を!」
「ちょっと話がしたくて拘束させてもらいました」
うつ伏せで転がってるので大事な部分は見えないがちょっとドキドキしてる自分がいた。
「正確にはこっちに話があるんですけど」
解除された装備の中から吸魂玉を拾い上げる。
「出てきなさいシトリー」
そういって私は姿を変える。
「あんたは!ストラス!?違う日和か!!」
私にストラスと同じ気配を感じたのか一度間違えたが私の姿を確認して名前を叫ぶシトリー。
「ええ、そのとおりここの管理者である日和、いや今は名前を捨てさせられたからヒトラスって呼ばれてるわ」
「何の用?」
「それはあなたが一番よくわかってるんじゃない?」
シトリーはなぜ来たのかと訪ねてくるが本人はなぜ来たのかを知っているはずだった。
「おい、日和よく顔を出せたな?」
アキラが拘束された状態でこちらに質問を飛ばす。
「ええ、本来は現れてはいけないのだけどあなたここ数日ダンジョンから出てないでしょ?」
「あっ!?」
驚いたような顔をしているがアキラがここ数日ダンジョンに潜りっぱなしの状況だったからこそ、この作戦が実行できたので感謝している位だ。
「警告も兼ねて顕現してあげたって訳」
「それはそれとしてよく顔を出せたな」
「私の目的は話していたでしょ?」
「親友には会えたのか?」
「いえ、身体を乗っ取られていて本人とは会えてないわ」
「そうか…それは残念だったな」
こんな状況でもこっちの事を思う気持ちがあるのだからほんとに嫌になる。
「ええ、まぁそれはおいおいなんとかするわ…それに悪いとは思ってるのだからリミットが来る前に警告に来たってわけ」
「リミットだったらどうしたんだ?」
「そりゃ素っ裸にしてダンジョンの外にぽいするだけよ」
「すでに素っ裸だが…ぽいされてないけどマシか」
そんなやりとりをアキラと交わしつつシトリーに目を向ける。
「本当に用があるのはそっちよ、シトリー」
姿を現しているシトリーだったがこちらを見据えて何も言おうとはしなかった。
こちらが引く気はないという態度を取っていると
「そっちがその気なら考えがあるわ」
手に持っている吸魂玉を足元に落とし足を上げる。
それにアキラが反応する。
「日和!!」
「だから、いまはヒトラスだってば、そこのシトリーが答えてくれたら大人しく帰るってば」
押し黙るシトリー…このままだと答えそうもなかった。
仕方ない、やりたくはなかったのだが…。
「自分の身よりも大事ってこと…じゃあこっちは?」
そういってアキラに短剣を突きつけた。
「待ちなさい、それだけは許さないわ」
シトリーが声を発して止めてきた。
「あら、共同生活の中で情でも移ったの?悪魔さん?」
「アキラを傷つけたら何も話さないわ」
「じゃあさっさと教えて頂戴、最下層の扉の開き方を!」
しかしシトリーはその質問に答えない。
「いいの!このままだとあなたの主人を殺す事もできるのよ」
さすがにそこまでする気はなかったのだが最下層の扉を開けないと困るのだ。
なんとかして聞き出すしかなかった。
「シトリー!」
アキラの声が響いた。
「「えっ!?」」
2人で驚きの声をあげる事に…
「この状態じゃ締まらない俺だが…死んでも言うな」
「ちょっと!?」
その命令は非常にまずい、使役されてるシトリーにその命令をされてしまうと殺しても吐かせる事ができない。
「だけど、お前が殺される位なら言ってしまえ俺の不都合よりお前の命のが大事だ」
この男は!!!!!!
「そう言われると思って沈黙してたっていうのに…仕方ない男ね…ほんとにもう…主の許可がでたから教えるわ。知らないわ」
「は!?ふざけてるの?」
「扉を作って51階層を作ったのはワタクシだけどその扉の封印処理をしたのはワタクシじゃないもの」
「じゃあ一体誰がしたって…そんな記憶はどこにも…」
シトリーの記憶は受け継いでいる。
そこには封印処理をした記憶が存在しなかった。
だからこそ何かしたのかと思いここまで聞きに来たというのに…。
自分で封印処理をしていない…という事はもしかして…。
思い当たる封印処理が一つあった。
「あなたもしかして設定をしていないの…!?」
「知らなかったんだもの」
彼女の記憶を受け継いではいるが彼女の性格を受け継いだわけではない。
それにしたってそんな事をするとは思えなかった。
「設定し忘れたっていうの…」
「ええ、だから知らないの」
膝から崩れ落ちるしかなかった。
「頑張って討伐してね」
私はアキラの肩に手を置きそう言って帰るしかなかった。
ちなみにあの拘束は一定時間で解除されるのでそのまま放置して帰ってきた。
正直、シトリーの力を受け継いでもアキラに勝てる自分が想像出来なかった。
まぁだからこそ騙し討ちをしたのだが…。
まさか自動設定のモンスターにランダム付与とかいう機能を使っていたなんて…信じられない。
ダンジョン内のモンスターにランダムに付与され討伐したら24時間封印が解除される。
そしてランダムにまたモンスターに付与されるという地獄設定である。
こうなってしまうと51層に行くにはアキラ達がモンスターを討伐した時に偶然開くのを待つしかない。
なぜ困っているかって封印処理が解除されないと最下層設定が出来ないからだ。
だからこそ普通はそんな設定にする奴はいないはずなのだがあのシトリーはあろうことか設定をしなかったせいで自動的にモンスターにランダム付与される設定にされてしまっていた。
しかも自動のせいで階層の設定すらされずにダンジョン内のすべてのモンスターが対象である。
「怠惰過ぎる…」
はぁ頭を抱えつつダンジョン業務に戻った。
◯あとがき
シトリーが黙っていたのは本当に何を聞きに来たのかわかっていなかったので黙っていただけです。




