グリフォン狩り
朝3時には目が覚めて支度を行い、30層へと向かった。
カレンには嘘をついてしまったが、目的はゴーレムではなくグリフォンだった。
「まぁここだとは思っていたのだけど…グリフォンを狩るのね」
「ああ、『電磁支配』を試したくてな」
「それほど違いがあったの?」
シトリーはスキルの知識は持っていてもそれは表面的な物に過ぎない為、実際の使用感とは異なる事が多々ある。
特に『竜化』や『鬼化』などはモンスターが使うスキルには存在しないので全く知らなかったりと知識には偏りがあった。
「まぁ見てろって…多分完封出来る」
「えっ!?」
俺はそういってボス部屋の扉を開いた。
「ってな訳でやるぞ」
部屋に電磁フィールドを張り巡らせる。
「なにこれ」
俺はマジックポーションを飲みながら答える。
「磁界の強化版みたいなもんだな」
「ええぇ…」
「まぁ残念ながらこれを貼るだけで俺の魔力のほとんどを持っていかれるんだが貼ってしまえばしばらくは持つ、そして…」
俺はいつもレールガンで打っている弾を4個ずつ計8個を両手に持ちそれを電磁フィールド内に放った。
放たれた弾はレールガンのようなスピードでグリフォンへと襲いかかった。
『鉱石操作』を使って防ごうとしたみたいだが残念ながらそれで防げる威力ではない。
無数のレールガンに被弾したことでグリフォンは大きな声を上げてそして消え去った。
「ほんとに完封…」
「弾も電気でコーティングしたから威力も上がってるからな、8個もいらなかったかもしれん」
「すごい」
「まぁ残念ながら魔力をバカ食いするからそうポンポン使えないのと走らせるのには先にこれを貼る必要があるしで難しいけどな」
実際、マジックポーションで回復したから問題ないが先程の1撃だけで俺の魔力値を上回っている。
「さて次は動いてから当てる練習するぞ」
「ええぇ…」
そういって俺はまたボス部屋に入り直す。
マジックポーションを使って全快した魔力を使って電磁フィールドを貼る。
そして今度は一つだけ弾を放ちグリフォンにダメージを与えて定位置からおびき出す。
「さぁ今度は狩りをさせてもらうぞ」
今度は止まっているグリフォンではなく、動き回るグリフォンに当てる必要がある。
そして俺は弾をフィールド内に放つ。
今までのレールガンと違い今度のレ―ルガンは電磁フィールド内を走らせているので狙いを定める必要はない。
電磁フィールド内にいるのであれば俺の意思で追尾させられる。
『鉱石操作』による攻撃を躱しつつもグリフォンを追尾させる。
まぁ追尾というか基本的にグリフォンの速度より攻撃速度が早いのでまぁグリフォンがどう頑張っても当たる。
被弾したグリフォンが声を上げる。
先程とは違い動いてる敵なので俺がある程度誘導する必要があるが一つであれば特に問題はない。
「マジックポーション片手って言うのが締まらないな」
そういって電磁フィールド内に再度弾を放つ。
「やっぱり燃費が最悪だ」
電磁フィールドの維持に加えて誘導する為には弾にも同じように電気でコーティングする必要があるので更に魔力を消費する。
「という訳で早めに片付けさせてもらうぞ」
回避行動をしつつも弾を誘導させてグリフォンの背後から当てる。
ダメージによって動きが止まる。
「さてこっちも試すか…」
腕を硬化させる。
そしてそのまま全身に電気を纏う。
俺も弾と同じように電磁フィールド内を自身を走らせる。
フィールド内はスピードの調整も自由自在なので、ある程度の速度まで落としてグリフォンに接近する。
一瞬で近づいてきた俺に驚いているようだが顎の下に拳で一撃を加えた。
硬化した事で威力があがった一撃にグリフォンはまた怯む。
「ここまで歯ごたえがなくなるか…」
『鉱石操作』による迎撃が入ったが躱す。
残念ながら電磁フィールド内で俺に攻撃を当てるには『鉱石操作』では遅すぎる。
俺が距離をとったのを見計らってかグリフォンは雷装形態に移行した。
「そうそう、それとやりたかった!」
案外俺の能力でグリフォンの動きを制御出来るかと思ったが残念ながらそれは叶わなかった。
「電気を纏ってるけど別物ってことか」
それを踏まえてもこの形態のグリフォンとやっておきたかった。
この前は反応出来なかったが、今は違う。
電磁フィールド内で動く物は俺も探知出来る。
現れる場所に移動してその加速を利用してそのまま迎撃する。
迎撃されると思っていなかったようでグリフォンはそのまま吹っ飛んでいった。
苦しみもがくグリフォンだったが、いたぶるのは趣味ではないので吹っ飛んだ先に移動しながら加速を加えた追撃を与える。
その結果、グリフォンは霧散していった。
「もう歯ごたえ皆無だな」
動きを把握しているせいでもあるが、『電磁操作』のせいで完全にヌルゲーになってしまった。
「しかし、魔力の消費がデカすぎるな」
すべて解除して座り込む。
「これだけの能力をノーリスクという訳にはいかないでしょう?」
「魔力さえあればノーリスクだと思うが?」
「本当にそうかしらね…」
「そりゃそうだろ、燃費は悪いがスキルの力使ってるだけだしな」
「まぁそういうことにしておきましょうか…」
納得出来ていないようなシトリーだったが、別に間違ってはいないはずだ。
「魔力の急激な増減で疲れたからちょっと寝る」
「了解、また時間が来たら起こすわね」
「悪いな」
―――――シトリーside―――――
本人はなんてことない顔をしているが恐らくあの『電磁操作』はアキラにしかあそこまで使いこなす事は出来ない。
電磁フィールド内を自在にレールガンを動かすのも含めて空間認識能力が相当高くないと出来ない芸当のはず。
アキラの回避力は、確かに反射神経と動体視力による所が大きいがそれでは納得出来ない事もあった。
背後からの攻撃や、見えない攻撃にも躱せなくても受け身を取ったりしていたのは恐らく空間認識能力の高さからだったと考えれば納得がいく。
敵を点ではなく空間という全域をアキラは認識して行動している。
だからこそ行動の先読みも出来るし攻撃を受け止める事も出来ている。
「本人はとんでもないことしてるつもりはないんでしょうけどその視野を持っているのは自分だけという認識は持っててほしいわね」
そんなつぶやきも彼には届いていない。
単騎でボス撃破という無茶は出来ればしてほしく無いのだがそのおかげで完全に存在値を上げる事が出来た。
「これで力を使う事が出来る…まぁアキラが望む必要はあるが…拒否されたら…考えただけで胸が痛いわね」
ワタクシはあくまでもアキラに使役されている状況、アキラが望まなければ力を行使することは出来ない。
この能力を使うのはアキラにもリスクがある…。
それを拒否されたらと考えると打ち明けられずにいた。
「こんな初心な想いをする羽目になるなんて…少し前までは考えられなかったわね」
そんな呟きは鉱石によって光り輝く空間に吸い込まれて消えていく。




