スクロール
沙月が手に持っているのはスクロールだった。
「は?」
それをみた瞬間に固まってしまった。
スクロールはモンスターがドロップする希少アイテムで、基本的にはスキル持ちのモンスターを倒した際に極低確率でドロップすると言われているものである。
スキルを持ったモンスター自体の出現に関しては、完全ランダムですべてのモンスターがスキルを持ってる可能性はあるが、持ってないモンスターが圧倒的多数である。
基本的には深く潜れば潜るほどモンスターは強くなっていく傾向があり、スキルを持ってることが多くなっていく。
つまり、こんな低階層で現れるモンスターがスクロールを落としたという話は聞いたことがなく、通常であればドロップすることはない。そんな常識を覆すボーナスモンスターの存在に震えながらも沙月に尋ねる。
「本当にスクロールなのか?」
「はい、信じられないですけど本当にスクロールです」
沙月がスクロールを調べると
「手に入るスキルは『経験値増加』。聞いたことのないレアスキルですね」
ネットが使えないので正確にはわからないが、聞いたことがないスキルだった。
手元の端末でスキル一覧で確認してもそんなスキルは出てこなかった。
「効果に関しては名前通りですね。スキル所有者及びパーティメンバーの経験値を増加させるスキル」
「それってとんでもないレアスキルなのでは・・・」
こんなスキルがあるとわかれば、色々なパーティから誘われること間違いなしだ。ただでさえ高レベルの探索者達はレベルが上がりにくい。その苦労が軽減されるとすれば重宝されるだろう。
「恐らく取得後すぐでは、そこまで有難がられないかもしれません」
「聞く限りではかなり有用なスキルだと思うが・・・」
「取得後のスキルとしての『スキル所有者及びパーティメンバーの取得経験値を増加させる。取得経験値+1』というのが正確なスキルになります。つまり増加する経験値はスライム1匹分です」
「えっスライム1匹分!?」
確かに塵も積もれば山となるということわざはあるが、さすがに塵すぎる・・・
「それは、微妙なスキルだな・・・」
「まぁあくまでスキルレベル1の状態がという前提になるので、スキルレベルがあがれば効果が上がっていくと思いますけど、取得直後だと大した影響はなさそうです」
「スキルレベルをあげていってどうなるかか・・・」
スキルの詳細が知れる沙月のおかげで、このスキルの価値は現状ではそんなにないとわかったが、ある問題がある。その問題を沙月が口にする。
「このスクロールどうします?」
スキルを使用できるのは二人のうち一人。それなら売ってしまってお金をわけた方がいいのではないか。
恐らく未知のレアスキル。しかも経験値増加という名前から、かなりの高値で取引されること請け合いである。下手すれば、得たお金で一生遊んで暮らせるかもしれない。
だが、それは沙月の目的とは違ってくる。沙月にとって、お金は恐らくそんなに重要なことではない。もちろんあればあった方が良いのだろうが、国からの支援を受けて活動している以上沙月はある程度の成果を求められている。自衛の為のレベル上げではあるがその先に待っているのは高魔力持ちとしての成果を求められるのは必然であった。
多額のお金を得たとしても、沙月はこれからもレベルをあげる必要がある。その時に結局俺は・・・
「そのスクロール使ってもいいか?」
「もちろんです。今回私はなんの役にも立ってませんし、これはアキラさんの物です」
そう言って沙月はスクロールをアキラに渡す。
「沙月は強く、つまりレベルをもっとあげる必要があるんだろ?」
「そうですね。もっとレベルをあげて、国を代表するような探索者にしたいってのが、恐らく国から私に求められることだと思ってます」
氷川さんの話を聞いて、沙月への期待はかなり大きいことがわかっていた。
国の戦力として、沙月には頑張ってほしいというのが国としての方針。それは危険なことを沙月にやってほしいと思っている事と同義である。
沙月は気にしないでといっていたが、正直沙月の能力にかなり依存しているのは自覚している。
魔力値も低く生命感知のスキルもない俺が恐らく一人ダンジョンに潜っていた場合、自身の固有スキルの事もわからず、1日100匹を狩ることもできなかっただろう・・・。
そもそも討伐特典にたどり着いていたかすら怪しいとこだな。
だから沙月には本当に感謝していた。だからこそ一方的な依存関係に心苦しく思っていた。恩を返すと言われていたがどこまでもそれに甘えている訳にはいかないと思っていた。
「じゃあこれで俺の方でも役に立てるな」
そういって使用する意思をスクロールが感じたのかスクロールが光り、身体に溶け込むようにスクロールが消える。
「これで経験値稼ぎに関しては役に立てる存在になった、沙月の隣にいられるようにがんばるわ」
「今でも充分役に立ってますから、あんまり気にしなくてもいいんですよ」
沙月はそう言っているが、俺なんかが隣にいるのではなく、もっと有用な人物がいるのではないかと。少なくとも国としては、ある程度のレベルまではパーティを自由にさせていてくれると思っているが、上がってしまえば世間的にはハズレスキル持ちである俺を外して、別の人を当てる可能性は充分に考えられた。
そこに本人の意思で抵抗できるのかはわからない。だからこそ彼女の隣にいられるような目に見える力が欲しかった。
これでスキルだけなら唯一無二の存在足り得た。国に言われた際の交渉材料位にはなるだろう。
レベルも偶発的にとはいえお互いに26まで跳ね上がった、それなりの戦闘力も得た。このまま国にバレないように立ち回り強くなっていけば彼女の唯一無二の存在になれる・・・いやなる。
15000PV突破!
みなさんありがとうございます!
誤字報告も助かります。
このペースで更新できるように頑張りますのでよろしくお願いします




