和解
アイラさんの話を聞き全員が沈黙していた。
その人生は一人の男によって狂い壮絶な人生を歩んで来たことがわかったからだ。
そして俺を警戒して理由についても察する事が出来た。
これは無理やりに謝罪させるべきではなかったし何よりも俺の事を警戒して然るべきだという事もわかる。
「私は、ほとんど関わった事はなかったのですが…母の話を聞いて同じように嫌悪しております」
手を出されていなかったとはいえ、嫌悪感を抱く理由としては十分な理由だろう。
「これが理由とはいえ、失礼な態度を取ってしまったことには変わりありません…改めて謝罪させてください」
こちらに向かって2人で謝罪してくる。
沙月とカナタはすでに知っていたが他の4人がいる所で謝っておきたかったのかもしれない。
「それについては謝罪は不要って話だったろ。気にしないでくれ」
俺は気にしてないという事を皆にも伝えておく必要があった。
重苦しい雰囲気となってしまったが俺の事も話しておきたかった。
「俺の話も聞いてもらってもいいかこっちも色々あってな」
そういって俺の身の上話を始める。
沙月達は、知っている話ではあるのだがその内容を聞いて気分がよくなることはないだろう。
せっかくの歓迎会だというのに申し訳なかったが…こればっかりは知っていてもらう必要があった。
俺の話をし終えた後に、2人はその内容を理解したのか下を向き俯いていた。
「俺は、犯罪者だというのに正当な処罰をされていない存在だ…どんな状況であったといっても母を殺したのは俺でありその罪は逃れられないと考えている」
これを聞いた上で2人が俺を受け入れられるかどうかについてはわからない。
さらなる拒絶を生む可能性すらある。
それでも…話しておかない不義理は犯したくなかった。
特にここに至るまでに人生を弄ばれてきた2人には特にだ。
アイラさんが俯きながら見を震わせている。
もしかして怒りだろうか…こんな男に世話になるなんてという怒りを覚えても無理はない。
その時は、延命の為には仕方ないことかもしれないがサポートという形で関わっていく事にしよう。
そしてアイラさんが俺の前まで来た。
もしかして何か言われるのだろうか…と警戒していると…。
突然視界が塞がれる。
座っていた事もあり警戒もしていなかったので反応が遅れたが…もしかして抱きしめられてる?
「あなたもクズな男に人生壊された一人だったのね!そんな人に私はなんて態度を…本当にごめんなさい…」
アイラさんは泣きながら俺を抱きしめていた。
胸に顔を埋めているせいで何も言えないのだが、この感触は母を思い出していた。
昔はよく抱きつかれていたなと思い出していたが…いやいやいや!!
引き剥がそうとしたが強い力で抱きつかれているせいで振りほどけない。
ってかデカすぎだろ…パッと見でミレイ達よりデカいと思っていたがこれほどとは…って違う!
思考が抱きしめられてる安心感のせいか鈍い。
「大丈夫…大丈夫よ」
そういって俺の頭を撫でるアイラさん…やばいなんか落ち着いてきた。
だから違う!
「むぐむううう」
口を塞がれているせいで声なき声になってしまったがアイラさんが反応して離れてくれた。
「ごめんなさい、私ったらどうしても抱きしめずにはいられなくって」
そういって俺の手を握った。
「あなたに命を助けられる身ではあるけれどそれとは関係なく私はあなたを助けるわ!だから安心して頂戴!」
完全に勢いで頷くしかなかった状況ではあったのだがどうやらアイラさんとしては俺の事を受け入れてくれたようだ。
「ママ、凄い困惑してるよ」
「ごめんなさい…境遇が似すぎててどうしても放っとけ無くて…」
「ママが受け入れたからって訳じゃなくて私と同じような立場な上に母親を殺させるなんてほんとに許せない!母の事が無くても私はあなたを信頼するわ!」
そういって俺の手をランファも握ってくれた。
ランファの方も同じような立場だと共感してくれたようで2人と和解することが出来た。
確かに望まぬ妊娠から生まれてその相手に翻弄された人生ではある。
そう考えるとランファとは同じような立場なのかもしれない。
そして2人のもう一つの共通点としては母の愛を受けられたことだろう…それについては本当に救いであった。
「3人が和解できたようなので今後の方針について説明しますね」
2人で俺の手を握っている状況だったのを見かねてなのか沙月が切り出した。
その後、沙月からパーティの振り分けについて話される。
俺、沙月、ソフィア、ミレイ、ランファというパーティでまずレベルをある程度上げる事になった。
レベルが1になった時の影響を考えてレベル5位まで上げた後にミレイの代わりにアイラさんが加わる形になる。
恐らくレベル5まではすぐに上がるので明日はレベル上げ後に分かれて行動することになった。
その後、主要のスキルなどの説明とステータスアップ系のスクロールを2人に配布して使用してもらう。
アイラさんに関しては一部取得していないものがあったのでそれのみの取得であった。
そして今回、雑魚狩りをするにあたって取り寄せていたスクロールをソフィアが使用した。
『集敵』スキル
・スキル発動時、同フロアの敵を集めるスキル
実質デメリットのようなスキルだがちゃんとオンオフが効くスキルなので問題は特にない。
スキルの説明を読むだけだとかなり危険なスキルということで封印処理されていたスキルだったりする。
こういった危険の可能性があるスキルに関してはドロップした時点で国に提出するとその危険度に伴った報酬が支払われる。
この集敵スキルの危険度はA、スクロールの説明だけを考えると敵を集めてしまうスキルであり危険が伴うスキルなので封印処理されていた。
他にも封印処理されたスキルの中には『腐食』スキル、『感染』スキルなど色々なものがあり一部のスキルの鑑定を沙月が頼まれている。
明日は集敵スキルでゴブリンを集めて効率よくレベル上げを行う予定だ。
そして明日の事もあり早めに休む事になり全員で10階層に移動した。
なぜダンジョンに?という話になったが安全の為という事と見てもらえばわかると言うことで2人を10階層へカレンのスキルで連れて行く。
そこにあるホテルに2人は驚き、それぞれ部屋で休む事になった。
ランファのスキルが発動してしまうが大丈夫なのか沙月に確認したのだが…
「回復量の方が上回っているので何も問題ないです」
ということで沙月がずっと吸われる状態になってしまうが特に問題ないとの事でこの問題は終了した。
それぞれ部屋に帰ったのだが部屋に戻ったタイミングでシトリーが話しかけてきた。
「よかったわね…仲良さそうで」
そういったのはアイラさんのことだろう。
あの後、ずっと俺から離れることなくなんならずっと手を握ってきていた。
パーティの説明をされている時も「お願いね」と言いながら頭を撫でられるなど完全に子供あつかいである。
「恥ずかしかった…」
「それでも満更でもなさそうだったけど?」
「なんか安心できるんだよな…シトリーと一緒かもな」
シトリーにも似たような感覚を感じる事があり側にいてもらうと安心するのだ。
もしかして母に近い人に対して母を重ねているのかもしれない。
さすがにそれは口には出さなかった。
「ふ、ふーん…ワタクシと一緒なのね…まぁそういうことなら仕方ないわね」
何やら照れているのだろうか顔をそっぽに向ける。
その後、風呂に入り眠る事になった。
そしてシトリーがベッドに潜り込んでくる。
「安心するっていうなら一緒に寝てあげるわ」
「変なことしたら蹴り出すからな」
もし変なことをすればトイレ放置の刑を実行するつもりだったがシトリーは俺にくっつくだけで何もしてこなかった。
そして安心感からかすぐに意識を手放した。




