解決策
ダンジョンに入った段階で『怠惰』スキルが発動した。
「なるほどこれが魔力を吸われる感触ですか…」
この中で一番魔力の多いのは沙月なので沙月が吸収対象なのだが…
「自然回復分で間に合ってしまいそうな位ですね…スキルレベルが上がったら早くなるんでしょうか…」
どうやら吸われる事はなんも問題はないらしく吸うスピードに不満があるようだった。
「大丈夫ですか…?以前は同伴してもらった魔力値Cの方は2時間ほどで魔力不足の頭痛が始まったそうなのですが」
ランファが不安そうに聞く。
「全然大丈夫ですよ。ちなみに私に直接触れて吸収はできます?」
「本当にいいんですか?」
「はい、吸収できるか試さないといけませんし」
ちなみに経験値の吸収は呪いの対象者が直接触れなければ問題ない為、アイラさんと手をつなぎながらランファは沙月を手を繋ぐ。
「どうすればいいですか?」
「恐らくスキルなので直接吸うイメージを持ってもらえれば発動出来ると思いますよ」
今まで直接吸ったことがないランファは頭を傾げながら考えている。
「おっ発動してますね!」
数分試行錯誤していたみたいだが、上手く発動することができたようだ。
「待って!こっちも吸われてるわ」
アイラさんが声を上げた。
「対象を絞れますか?」
落ち着いた声でランファに伝える。
その手にはすでにポーションを持っていた。
色からするとマジックポーションだろう。
驚いた表情を浮かべているランファだったが、慌てて吸収を切ろうとしているみたいだ。
「吸収が止まりましたね」
「こっちも止まったわ」
どうやら2人共の魔力吸収が止まったようだ。
「オンとオフしか出来ないみたいです…」
「なるほど…わかりました。アイラさんは念の為マジックポーションを」
そういってポーションを差し出した。
「あっはい。でも止まっているのであればもう大丈夫ですよ」
「このあとモンスターからも吸ってもらうので念の為飲んでおいてください。数はたくさんあるのでご心配なく」
そういってたくさんのマジックポーションを見せる。
「そういうことでしたら…」
恐縮しながらもアイラさんはマジックポーションを飲み干した。
さてここからはモンスターで試したいところなのだが大穴を降りる必要がある。
全く誰だこんな糞みたいな仕様のダンジョンを作ったのは…とシトリーを見るも何?みたいな顔を向けてくるので何も思う所はないようだ。
穴を見て2人は驚いていた。
「とりあえず、俺が先に降りとくよ」
「了解です」
沙月の了承をもらい俺は穴に飛び込む。
2人を安心させる為にもすっと降りた方が良いと考えたのだ。
壁を蹴ってから壁に飛んで速度を落としながら降りていく。
「降りたぞー!」
と声を上げて合図をする。
これで安心して降りてこられればいいなと思った。
こういうのは先に誰かが行くのを見ると結構安心するものだからだ。
とりあえず何かあった時ように下で待機する。
アイラさんを触らないようにしようと思うと運搬方法は結構限られる。
結局飛翔スキル持ち2人でランファの手を持ちそのランファの足をアイラさんが持って運ぶという荒業で下まで到達した。
「怖かった…」
「ありがとうございます…」
2人の顔から血の気が引いていたので俺が降りたのはあまり効果はなかったようだ。
「他に運び方なかったのか…」
「触れない上にランファさんから離せないのでなかなか方法が…」
沙月も苦慮したようだ。
「さて早速、『怠惰』スキルの本領を確認をしますか」
そういってすぐ側にいたスライムを持ってくる沙月。
スライムも抵抗しているようだが残念ながら沙月ほどの高レベルの前では成すすべもない。
「このスライムの魔力を吸ってみてください」
「わかりました」
そういってランファはスライムに手を置く。
そしてすぐにスライムは動かなくなった。
「止めてください」
どうやらスライムも魔力切れをすると動かなくなるようだ。
「この状態でこのスライムに攻撃して倒してみてください」
「わかりました」
すでに動かないスライムにランファが攻撃を加える。
数回の攻撃の後にスライムが消滅した。
「これで魔力が増えたんですか?」
「増えてますね…まぁスライムの魔力は少ししかないのでそれなりにという感じですが…」
「実感が無いのですが…発動してよかったです」
ランファの表情が少し明るくなった。
自身のスキルが使えるとわかった時の喜びは酷ければ酷いほど反動が大きい。
特にランファにとってはキャリアを捨ててまで探索者になったというのに国に制限されるほどのハズレスキルだったのだからその喜びもひとしおだろう。
「さて次は、アイラさんの問題を解決しましょうか」
沙月の言葉にアイラさんは静かに頷いた。
ランファの問題は解決したが、このままではランファはレベル上げをすることも魔力値を上げる事も非常に困難だ。
根本の問題であるアイラさんの呪いをどうにかする必要がある。
2人もその事はわかっているようでランファさんが素直に喜べなかったのもこれが根本にあるからだろう。
少し離れた所から様子を確認していたのだが沙月に手招きされる。
「彼がアイラさんの延命に必要なスキルを持っているので紹介させてもらいますね」
そういって紹介されたが困惑しているようだった。
「先程から見させてもらいましたが経験値の減少量は1秒で1ほどのペースで減っているので1秒でスライム1匹分の経験値が減っている状況です」
そう聞くと大した事が無いように思えるが…塵も積もればという言葉もあり積み重なればかなりのレベルが下がってしまう事がわかる。
「つまり1日に消費される経験値86400を毎日稼げば良いわけです」
「ああ、そういうことか」
俺が声を上げた。
「彼は、『経験値倍加』というスキルを持っているので彼とパーティを組めば1日に150匹も狩れば1日の消費経験値を補う事ができます」
2人共信じられないといった顔をしていたが計算上はそういう事になる。
俺がスライムを倒して得られる経験値は1匹580なので150匹狩れば87120の経験値を得ることが出来るのだ。
これで1日の消費経験値は補填出来る。
それに基本的には1日に何百という数を狩るので何なら増えていく量のが多い。
言うは易く行うは難しというのでまず実践することに。
150匹程度であれば問題なく狩れるので狩っていくことに。
パーティを組むには触れる必要があったのだが沙月が早々に手を握ってパーティを組んでしまった。
「経験値に関しては先程いった通り問題ないので私達には触れてもらって問題はありません」
2人は非常に安堵した表情であった。
今回は残念ながらランファを外してスライム狩りを行う。
ランファを入れた場合、レベルシンクを使用してレベル1になった時にアイラの身に何が起こるかわからなかったからだ。
「あなた達のレベルはいくつなんですか?」
どうやらレベル差があると経験値が入らない事もしっかり知っていたようで不安そうにしていた。
「38ですね…レベルに関しては大丈夫ですよ。私のスキルでレベルをアイラさんのレベルと同じにするので」
「えっ!?」
そしてレベルシンクを使用してレベルが下がる感覚がする。
11だった時期がないのでわからないのだがかなり下がった感じがしている。
「じゃあ早速お願いします」
「了解」
ここのフィールドは狭い上に洞窟内にスライムが密集している。
カナタの『音操作』で一掃していたのも頷ける。
まぁ今日は俺の『振動操作』を使うわけだが…。
「魔力もらうぞ」
「いくらでも」
ランファに吸われているはずなのだがまったく影響がないようで涼しい顔で俺に『魔力共有』をする沙月…一体どれだけ魔力があるんだ…。
そして『振動操作』を洞窟内に指向性を持たせて発動する。
その結果、元々体力の少ないスライムはその振動を浴びると同時に霧散した。
「うまくいってよかったよ」
「えっ!?レベルが上がった!?」
アイラさんは困惑の声を上げていた。
「私の『パーティマネジメント』のスキルは経験値の分配も出来るので5人分の経験値をすべてアイラさんに集約しました…さっきの1撃で50匹のスライムが倒せたので大体145000の経験値がアイラさんに入ったのでレベルが上がったんだと思います」
本当に信じられない物を見たといった顔で口元を抑え目を見開いていた。
実際今の一瞬の出来事を2回やるだけで3日分の消費経験値は賄える。
まぁ沸き時間があるのでそう上手くいくものではないが…それほど時間のかかる作業でもない。
沙月の当初の予定ではこれを毎日行う事で延命は出来ると考えていたのだろう。
「なので何も心配しなくて大丈夫ですよ。ようこそお二人ともうちのパーティへ」
そういって呪いなどお構い無しに2人に抱きつく沙月だった。
そこでアイラさんが泣き崩れそれにつられる形でランファも抱き合いながら涙を流していた。
どうやら色々なものが決壊したようだ。
2人の背負って来たものを考えればこうなってしまうのもわかるので2人が落ち着くまで全員が2人を見守っていた。




