ボーナスモンスター
沙月からの告白を受け入れ、臨時パーティではなく正式なパーティとして活動することを決めた。
色々積もる話もあったのだが、夜遅かったこともあってすぐに部屋に返した。
未成年といつまでも部屋で二人きりとか気が気でなかった。
6時に目が覚め朝食を取ろうとした所、沙月が走ってきた。
「私もご一緒していいですか?」
「早いな、いいぞ一緒に食べよう」
「昨日起きる時間を聞いてたので!」
そういえば聞かれた気がしたな。しかし早朝にしては支度がばっちりできてるような。
しかし、そこは突っ込まないことにした。
女性にそういった類の話をすると余計なツッコミをされることが多い。
「朝早いのは、平気なんだな」
経験上、朝を苦手にしている人は結構多い。
身近にいた人が特に朝が苦手だったこともあり、駄目な人は駄目なんだと割り切ってもいた。
「私も部活で早いのは慣れてるので全然大丈夫です」
いつもと変わらぬテンション、いやいつもより高い気もするが沙月は、朝は特に平気なようだ。
二人で軽く雑談しながら朝食をとり、その後、沙月と別れてトレーニングルームに向かう。
今日は先客もおらず、一人で軽くメニューを流しシャワーを浴びる為に部屋に戻る。
「こんな生活してると抜け出せなくなりそうだ・・・」
以前の仕事、帰宅、睡眠の繰り返しの日々を思い出していた。
あくまでもこの快適な生活は期間限定、今日はいつまでここにいていいか聞いておこうと考えていた。
それ次第では今の家を引き払い、引越しの準備をする必要がある。
自宅に戻って近くのダンジョンに潜ろうかと考えていたが、沙月とパーティを組んだ以上、彼女と活動拠点を同じにする必要があった為だ。
引っ越しをするとなっても必要な運ぶものはほとんどない。
部屋が狭いという事もあるが、必要最低限の荷物以外は所持していないからだ。
そもそもが部屋に家財道具のほとんどがすでに設置されている以上、最悪手ぶらでも問題ない位だ。
そんな予定を考えつつもチャイムが鳴った。
沙月が迎えにきたようなので一緒に向かう。
昨日と同じように会議室に入ろうとしたところでお呼びがかかった。
「今日もそのまま行こう」
日和と一緒になりダンジョンに向かう。
昨日と同じく何やら忙しいようだ。
俺は、歩きながら気になっていた事を日和に尋ねた。
「そういえば聞きたかったんですけど、この検査期間っていつまでなんです?」
「ああ、正確に決まってないんだけど、通常は1週間ほどってことになってる」
なるほど1週間か・・・じゃあそろそろ準備しないと・・・
「まぁただ、それは特殊検査を受ける人だった場合の話。今のあなたは彼女のパーティメンバーで、彼女はしばらくダンジョンに潜る必要がある。ってことで彼女と同じ期間は、あなたにもここにいてもらいたいと思ってるわ。問題はないかしら」
「えっ、そういうことならこちらとしては大歓迎ですけど、一度自宅に戻りたいですね」
ある程度は、清潔にはしているが食料品や、ゴミなんかを処理しておきたい。
特に着替えに関しても必要最低限の購入はしたがさすがに勿体ないので持ってきておきたい。
「そういうことなら明日戻る?私も明日は一緒に付き合えないので丁度いいかも」
どうやら明日は日和も都合が悪いようだ、まぁいくら暇な時期と言っても日和の立場的にずっとこちらに付き合う訳にはいかないのだろう。
「そういうことなら明日戻らせて頂きます」
「それなら私も一緒に戻ってもいいですか?お手伝いさんには話してあるので家のことは大丈夫なんですけど色々荷物は、取りに行きたくて・・・」
「全然構わないわよ、それじゃあ車の貸出が必要かしら。必要なら申請しとくけど免許は持ってる?」
免許に関しては仕事の関係で取得する必要があったので持っていた。
「免許は、持ってます。車は助かりますね、電車だと結構距離がある上に荷物もあるので」
「了解、手配しておくわ」
至れり付くせりで参ってしまうが、この待遇も彼女のおかげだと考えると素直に喜べない所もある。
その恩を返すにはダンジョンで返すしかない。
肉体要員としてしっかり働こうと拳を握った。
いつもの場所に着き日和と別れると、モンスター狩りを開始した。
昨日と同じようにハイペースで狩っていく。しかし昨日とは違う異変が起きたのは500匹目のスライムを倒した時だった。
『討伐特典』
【1】特攻モンスターの変更
【2】特攻モンスターのドロップ品開放
【3】特攻モンスターの攻撃値アップ
【4】特攻モンスター以外への攻撃値アップ
【5】特攻モンスターからの経験値アップ
いつものウインドウが表示されいつも通りに経験値アップを押す。
『経験値倍率8→16MAX』
今回のでとんでもない倍率になってしまっていた。しかしこれが最大倍率のようで横にはMAXが表示されいた。その事を沙月に報告しようとすると
『討伐特典によるボーナスモンスターが出現します』
その表示が出たと同時に顔の横を何かが掠めていった。すぐに異常事態ということに気付き沙月に警告する。
「変なモンスターが出たみたいだ!気をつけろ沙月!!」
その声に反応して次のスライムに向かっていた沙月が止まる。
「えっどういうことですか!?」
止まった沙月の方向に向かって何かが飛んでいったのが見えた。
沙月が止まったせいかその何かは沙月に当たることはなく、2人の眼の前をその何かが通過した。
「ひっ!?なんですかいまの!?」
沙月にも俺と同じように風圧があったのだろう
その間にすぐに沙月に近づき、沙月を背にして辺りを伺う。
「大丈夫か!?」
「はい、大丈夫です!けどなんですかあれ」
「討伐特典でボーナスモンスターが出現するって表示が出たんだが何がなんやら」
「わかりました、すぐに調べます」
沙月は生命感知を行っているようだったが
「だめです速すぎて捉えられない!けど何かいるのは間違い無いです。私達の周りを高速で動き回ってます」
「そういうことなら!」
目を見開き周囲を観察する。
壁や地面に何かがぶつかり、その度にそこに何かが通った衝撃だけが残る。
その動きを観察する。そして何度目かの衝撃の後、その物体はこちらに向かってきた。
その動きは弾丸のように早く、もし顔に当たっていれば衝撃で大怪我だけでは済まなかったかもしれない。
しかしその一撃はアキラに当たることはなかった。
弾丸のように早いとは言っても大きさのせいか弾丸のスピードには達していない。
驚異的な反射神経と動体視力を持っているアキラにとっては捉えられないスピードではなかった。
直線的な動きしか出来ないことを察し、沙月に向かわないように位置をコントロールしつつこちらの正面に向かっての突進に合わせてカウンターを決めていた。
捉えたものは球体のスライムだったが、硬い壁を殴ったかのような衝撃を受けたがカウンターを食らったその球体は壁に向かって吹き飛んでいった。壁にぶつかったその姿は、通常のスライムとは似ても似つかない鉛色しており先ほどまでの球体とは違いドロドロとしたスライムになっていた。そしてそのスライムは通常のスライムと同様にその場で崩れ消滅した。
「なんだったんだ・・・いまのは・・・」
「わかりません、でもボーナスモンスターなんですよね。ってことは何か・・・」
そのモンスターが完全に消えた瞬間、二人の身体に力が湧き上がるような感覚に襲われる。
「これは・・・」
「すごいです、アキラさん!いまのでレベルが20上がってます!」
同様の感覚があった沙月が叡智でレベルを確認したようだ。
しかしその言葉はにわかには信じることが出来なかった。
「は!?なんでそんなに!?」
「恐らく経験値を多く含んだモンスターだったんじゃないかと思います。とんでもない量の経験値が入りました。二人共これでレベル26になってます」
「それって探索者としては中堅クラスのレベルじゃないか・・・」
「そうですね。探索者の現在確認されているレベルは50です。レベルアップに必要な経験値はドンドン増えていくので一概にそうとは言えませんが、丁度半分位のレベルですね」
とんでもないレベルの上がり方に動揺していると
「えっ・・・あれは・・・」
沙月が何かに気づいたようで、モンスターが倒れた場所に向かう。
なにやら動きがたどたどしいがその理由は後でわかることになった。
「これってスクロールですよ・・・」
沙月の手にはスクロールが握られていた。
「ウソだろ・・・」
次々に起きる珍事に頭がついていかない状態だった。
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