沙月の告白
沙月を招き入れ、夜も遅い為、早速話を聞く。
「スキルの話か?」
人に話せない話となるとスキルの話しか思いつかなかった。
「いえ、私自身の話を聞いてほしくて来ました」
その表情から真剣な話だと感じた為、話をほどほどにして追い返すつもりだったのだが、覚悟を決めてきくことにした。
それから沙月が重い口を開いた。
「5年前の事件は覚えていますか?」
5年前の事件・・・その単語に心がざわめく。
あの事件は不起訴ではあったが、週刊誌などで扱われたせいで名前で検索すればすぐに出てきてしまう。
この事件のせいで、職場で腫れ物のように扱われ退職した場所もある。
そんな事件の話を出されたことで、何かのきっかけで知ってしまい、パーティの解散の提案かと勝手に思っていた。
「ああ、覚えてるよ。忘れられない事件だからね」
「あの事件はどうして起こったか、それをあなたはあまり詳しく話してないですよね」
「3人に絡まれたから応戦しただけだからね」
そう暁は、助けた女の子達のことを話さなかったのだ。あくまでも3人が彼に絡んだと言い張った。
そのせいで供述が食い違い、簡単に無罪という訳にはならず、暁は無傷で3人が怪我していたせいもあって事件は長引いてしまった。
3人は酔っていた事もあり、3人の供述の信憑性が低いと判断され不起訴となったが、デビュー前に問題を起こしたことでプロデビューは白紙。大学側も週刊誌等で話題にされたこともあり、自主退学を促され退学することになってしまった。
「本当は絡まれてる女の子を助けたんですよね」
「えっ」
「私はその時に助けてもらった3人の女の子のうちの一人です」
思ってもいなかった告白に動揺が隠しきれなかった。
「あの時は本当にありがとうございました。アキラさんに助けてもらわなければ私達はどうなっていたかわかりません。そのせいでアキラさんの人生を台無しにしてしまい、本当に申し訳ございませんでした」
そう言って沙月は深々と頭を下げた。
言い逃れはできないと感じ
「いいんだよ。俺が勝手にやったことだから気にしないでくれ」
慌てながらも沙月に謝罪は不要と伝える。
「そういう訳にはいきません。あの事件のせいであなたの人生は・・・」
沙月の目には涙が浮かびあがり、それに耐えているようだった。
「ほんとにいいんだ。元々大学の体験入部で入ったボクシング部で結果を残してしまったからプロの話なんて出てたが、そこまでボクサーになりたかった訳じゃないんだから」
フォローをするが沙月の謝罪は止まらない。
「でも事件のせいで大学も退学になってしまい・・・今、無職なのもその影響があるんですよね」
これに関しては影響がないといえば嘘になってしまう。プロになる時は盛り上げて、問題が起こった後は、単位を盾に自主退学を勧めてきた大学に関しては、非常に思う所があり未だに許してはいない。
「まぁそれに関してはないとは言えないけど、元々大した目的もなく通っていた大学だ。それに無職になったのは、どちらかというと魔力がなかったことのほうが影響は大きかったかな・・・」
これに関しても嘘はなく、いま仕事がないのは魔力がないせいで、仕事が選べなかったことが主な原因である。
そこまでの話を聞いて、沙月がどうして俺と組もうと言ったのか、どうしてあんなに協力してくれるのかという理由に行き着いた。
「もしかしてそれを負い目に感じて、こんなに協力してくれているのか?」
「その気持ちがあるのは間違いないですが、それだけでアキラさんに力を貸している訳ではありません」
そんな負い目を背負わせる為に助けたわけではなかった。もしそんなことを思っているのなら、自分から離れることを選ぼうと思っていた。
「あなたは自分を過小評価しすぎています。あなたの能力は稀有なもので、私はあなたが世界一の探索者になれる人だと思っています。そんな人物についていこうとするのは自然なことです」
そこまではっきりと言われると照れてしまう。
「いや、固有スキルに関しては実際に体験してからは良いスキルだと思ってるけど、そこまでになれるかどうかは・・・」
実際の固有スキルはハズレスキルとは言い難く、かなり有用なものだった。しかしこれで世界一になれるとは思えなかった。
スライムを倒し続けてひたすらレベルをあげれば確かに強くはなる。
しかし攻撃のデバフに加えてこの魔力値である。
とても世界一なんて届くとは思えなかった。
「大丈夫です!自信を持ってください。もし自信がもてないのであれば、私があなたの自信になります」
世界に数人しかいない魔力値Aで、世界に一人しかいないレアスキル持ちからそこまで言われるとは、どこかでなくなった自分への評価を少し取り戻した気がしていた。
「私がサポートするのは私の為でもあるんです!だから、あんまり暗い顔をしないでください」
俺が、時折思っていたことを表情に出していたようだ。なぜこの子は自分に協力してくれるのか?
彼女におんぶにだっこの状況に、申し訳ない気持ちになることが多々あった。その時の表情に、彼女は気付いていたみたいだ。
「5年前、私達を助けてくれた時の自信に満ちた顔でいてほしいです」
あの時は、自分の思ったことがなんでも出来た、なんでもうまくやれる。そう思い調子に乗っていた時期でもあった。だからこそ、彼女達を勢いで助けに入った。冷静に考えれば怪我をさせずに抑えることが出来た可能性もあったのにだ。その勢い任せに行った結果があの結果だ。あの事件以降、自分ではどうにもならない事態の連続で自分は何もできない。自分はすごくないと思い、あの頃の気持ちを忘れてしまっていた。
因果応報・・・それが俺に刻まれた罪の言葉だった。
あの事件以降、俺は堕ちる所まで堕ちた。そしていま生きているのは恩人との約束の為、それだけが俺の生きている理由だった。
そんな俺には彼女の言葉はとても響いた。すぐに立ち直ることはできない・・・だけど、少しは前を向こうとそう思うことが出来た。
「じゃあ改めてになるが、二人で世界一の探索者になろう」
この宣言がその為の第一歩だった。
「はい、絶対に二人で世界一の探索者になりましょう!」
これで正真正銘の本当のパーティになった二人。ここからは互いに遠慮はなしで進んでいくと決めた。
(まだ、私のもう一つの気持ちは胸にしまっておこう・・・)
沙月は、気持ちは隠しつつもアキラの手を取った。




