末路
その後、家に戻った。
幸いというべきか家には被害はなかった。
帰宅したと同時にミレイとカナタが部屋からでてきた。
「すいませんでした…」
「悪かった…」
2人とも謝罪を口にした。
「何を謝ってるんだ?」
「守れませんでした…」
とミレイが口にしカナタも顔を俯かせる。
沙月を守れなかったことに対する謝罪だったようだ。
「それを言ったら肝心な時にいなかった俺の方が罪が重くなっちまうだろ」
そういって2人の頭に手をやる。
「みんな無事だったんだからいいんだよ。後は今後の対策考えようぜ」
そう伝えると…
2人とも俺の手を両手で掴んだ。
「わかりました、でもあなたの罪は私達も背負います」
「だからあんまり気負うなよ」
どうやら気を使わせてしまったようだ。
「悪いな、まぁ思ってたよりも大丈夫そうだから心配するな」
ミレイとカナタには沙月を守るように伝えていたので気にさせてしまったようだ。
そこからは報告と今後の対策について話し合う。
彼らの処遇についてはソフィアから報告があった。
本国に移送されて取り調べ、一瞬ご…うと言い間違えていたのでひどい目には遭いそうではある。
命があるだけ感謝してほしいもんである。
「今回の件はこちらの管理不十分によるものなので皆さんには然るべき賠償を行わせて頂きます…」
やはりという結果ではあるのだがミスリルを辿られた結果であった。
ハワイにいる以上物資を辿られてしまうというのはなかなか問題ではある。
道標スキルに関しても普通に世間一般に公表されているスキルの一つだ。
同じ方法を使えばここの存在が明るみになる可能性は高い。
まぁあのスキルも自分の持ち物という制約があるのだが紛れさせること事態はそれほど難しくはないだろう。
判定ガバガバなスキル側にも問題があるが…
「今後はアイテムボックス持ちを通して輸送を行いますのでご心配なく」
というわけでかなり力技ではあるが一度アイテムボックス持ちに荷物を収納した後に運ぶようだ。
それをやればスキルの効果が切れるので追跡は不可となる。
公にアイテムボックスがいるのは公表できないが各国にアイテムボックス持ちはそれなりにいるのは間違いない。
まぁそこは任せるしかないだろう。
ちなみに本人達はステルスのスキルの関係上電子機器関連は一切装着しておらず連絡も出来ていないので情報漏えいの可能性はないそうだ。
ステルスのスキルは姿を消す、探知スキル関連から姿を消すことが出来るが電波などの外部からの干渉については遮断出来ない。
なので金属探知機などをすり抜ける為に彼らは金属の類も何も持っていなかった。
現代においてはステルスと呼ぶにはお粗末な性能かもしれない。
格納庫スキルに関しても出し入れをするのに大きさに応じてインターバルが必要らしくあまり頻繁に使える物ではないそうだ。
本国移送前に拷…尋問をすでに受けているそうなのだがイワンの方は正式な訓練を受けた諜報員らしいのだがヴァレリーは今回の為に招集された国家所属の探索者だったらしく拷問への耐性もないので諦めたように喋っているらしい。
なんでこんな基地に拷問官がいるんだ?とソフィアに聞いたのだがここは色々な事情をもった老兵がいるんですと目を逸らしながら答えていた。
「なんで諜報員なのにレベルが低いんだ?」
イワンのレベルは24、まぁ高い方ではあるのかもしれないが諜報員だというのならもっと高くてもいいと思うのだが…。
「諜報員は各国に派遣されるのであんまり高いと怪しまれるからですよ」
「なるほど」
確かに他国に入国するのに30を超えていたら確実に怪しまれる。
そう考えると今回の任務はかなりイレギュラーな物だったことがわかる。
沙月もこんなに早く強硬策に出るとは思ってもいなかったと言っていた。
まぁ発表してまだ10日でいきなりこんな作戦を仕掛けてくるのは予想出来ないか…。
沙月はとても悔しそうにしており徹底的に潰してやると怖いことを言っていた。
後は、今後もパーティは分けて活動は行うが基本的には全員が揃うまでは10階層で待機することになった。
今回もダンジョン内であれば障壁スキルも十二分に作用するので時間稼ぎするだけなら問題はない。
後一番の理由は退避手段である。
転移石と帰還石に加えて跳躍スキルを持つ俺達をダンジョン内で追うのは不可能に近い。
まぁ後、他探索者と違い俺達はスキルが多彩だ。
ダンジョン内の方が戦闘能力は高いので迎撃するのであればダンジョン内の方が都合が良い。
ほとぼりが冷めるまではモバイルハウスに帰るのは飯を食べる等をする時だけにして寝泊まりは10階層で行うことになった。
せっかくもらったキャンピングカーが死蔵状態なのは気になっていたのだがホテルが便利すぎるのが悪い。
ダンジョン外での防衛力強化の為にソフィアのレベル上げが終わり次第、俺達全体のレベル上げに移行する。
実はゴーレムで停滞してる間にかなり上がっているのでもう1~2週間で追いつきそうではある。
このレベル上げを数百人単位でやれる『嫉妬』のスキルがヤバイのはわかる。
「まぁレベルは正義だよな」
「そういえばなんであいつのレベルが高いってわかったんです?」
「危険察知があいつにビンビン反応してたからな」
敵意を向けられた瞬間に危険察知のスキルが警告を出していたので自分よりレベルが高いのがわかっただけだ。
「なるほど、そういうことでしたか…アキラさんの事なんで見たらわかるとか言われそうで怖かったです」
「はは…さすがにわかんねぇよ」
まぁ実際の所は見た時になんとなくわかったので黙ってることにした。
自分よりレベルの高い奴に関してなんとなくわかるのはモーガンに会った時だったのでその感覚であいつが一番レベルが高いと判断しただけだった。
今回は運が良かっただけと言われればそれまでだ。
事前に電気操作を練習していなかったら倒す事は出来なかった。
それが幸いしたが結果論だ…現状の世界のダンジョン事情は沙月を中心に展開している。
否応無しに危険に巻き込まれる可能性は考慮しなければならない。
彼女を守ると決めたのだから守る力を手に入れる必要がある。
もちろんレベルも大事なのだが…未だに勝てる気がしない母に想いを馳せる。
強くなったと思うんだが、なぜこんなにも母を遠く感じるのだろうか…強さの底というか母の底が歳を取った今でもわからない。
実際、こんな世界になったらめっちゃ楽しんでそうだなと思っている。
あの強さに追いつけるのはいつになるのだろうか。
死んでしまった人間に追いつくというのは変な話ではあるが俺の中での強さの象徴は母(聖歌)だ。
ここ最近、安全を意識しすぎて自分を追い込んでいなかったと思い気を引き締めることにした。




