事後 沙月side
そこからはソフィアも呼んで事態の収集に動く事になった。
彼らと相対してからまだ10分も経っていない事に衝撃を受けた。
それほどまでに短い出来事だった。
そして落ち着いて考えてみると彼が相手に対して舐めた態度を取っていたのは私達の誰かが人質になることを恐れたからだ。
近場には気絶したカナタさんを含め氷川さんもいた。
そして背後には私…単純な肉体スペックでは勝てないと考えたアキラさんは人質にするという考えが浮かばないように立ち回った結果だった。
「多分、あれは電気操作で脳を焼いたんだと思う」
サキさんが言うには指先の電気操作で何か練習をしていたのでそれを脳に直接叩きつけたのではないかという話だった。
あれほどのレベル差だと身体へのダメージは基本的には効かないが脳に直接ということであれば問題なくダメージが入る。
そしてその後の対応もあのまま気絶していれば放置していたかもしれないが、まだ息がある上に復活した場合に今度は不意を突くのも難しくなる。
それを考えればあの対応は間違いではなかった。
それでも、人を殺めてしまったことであの事がフラッシュバックしてしまったのかもしれない。
ちなみに死んだ男の連れはそれぞれ特殊な固有スキルを要していた。
イワン レベル24
固有スキル 『ステルス』
自分を中心に半径10メートル以内を完全ステルス状態にすることができる。
ヴァレリー レベル31
固有スキル 『格納庫』
乗り物を収納することができる。
「これで逃げる算段だったみたいですね」
格納庫スキルに船か飛行機を積んでおけばここから逃げることは難しくない。
どれほどのサイズの物が入っているからわからないがそれなりの大きさの物が入っているのだろう。
そしてステルスに関しては球体上に完全ステルス状態のバリアみたいな物を発生させるようだ。
これのせいでここまで追跡されていることに気付かなかったみたいだ。
「本当に申し訳ない…」
そういって深く頭を下げているのは氷川さんだった。
全員の傷はすでにポーションで完治済み。
大した怪我をしていなかった氷川さんも回復し深々と頭を下げてくる。
自分が尾けられたと思っているようだ。
「いえ…恐らく彼らはアメリカからの追跡者です」
「そうなのかい!?」
「ええ、恐らくアメリカが送ってきたミスリルにスキルを使ったんだと思います」
イワンが習得していたスキルに気になるものがあった。
『道標』
自身の持ち物に対してマーキングしそこまでの道筋を表示する。
「恐らく『道標』スキルを使ってここまでというよりはあのハワイ行きの飛行機を突き止めたのではないかと」
もちろん日本の荷物からの可能性はあるが日本からこちらに送ってくる物は日用品がほとんどでミスリルなどの希少品は運んでいない。
まぁスクロールなどの物品も含まれてはいるが目立つ物は積んでいない。
となるとアメリカがこちらに制作を依頼する為のミスリルにマーキングを施してそれを追ってきたと考えた方が納得がいく。
大方ミスリルがドロップしたように見せかけて紛れ込ませたのではないかと思われる。
「ただ、氷川さんを尾けてきていたのは何か理由があるのかもしれません」
そこに関してはわからなかった。
氷川さんがまた申し訳ないといった表情になってしまったので飛行機の中での事も聞いたのだが疲れで眠ってしまっていたらしくやはり原因はわからずじまいだった。
「読心関係のスキルでも持ってれば話はわかるんですけどね…」
ただ、読心関係のスキルは発動条件も厳しいので正直、取得していたとしても理由から外していたと思う。
後の問題はどこまでバレているのかということだ。
通信機の類は一切持っていなかった。
格納庫の中にすべて収納しているのであればまだ連絡をしていなかったと思われる。
それを考えるとまだバレてない可能性もあるがそれは希望的観測過ぎない。
今後の事を考えると頭が痛い所ではあるが危機的状況はとりあえずは去った事を喜びながら今後の対策を練るしかない。
もう油断はしない…そう心に決めある程度の対策はすでに思いついていた。
そしてロシアに対しての報復の為に徹底的に潰すことも決めた。
こちらにはまだ見せていないカードが山程あるのだから。
アメリカとして対応についてはソフィア達が本国と協議していた。
怒りの気持ちを抑え、アキラさんの部屋に向かう。
気絶してしまったのでとりあえず部屋に寝かせているのだが、静かに眠っていた。
まだ目が覚めないアキラさんの事を思うと…不謹慎だとわかっているけど…胸の高鳴りが抑えられずにいた。
(あんな状況で助けにくるなんて反則すぎる…どんだけ好きにさせれば気が済むんですか…)
また助けられてしまったことに申し訳ないと思う気持ちと助けられて嬉しい気持ちでとても複雑な心境だった。
アキラさんに何も無ければいいけど…目を覚まさないアキラさんの顔を見ながらそのキレイな顔に引き込まれるように顔を近づける。
そしてもう少しで接触するのではないかという所でアキラさんの目が開いた。




