レベルアップについて
その後、日和に連絡をし合流してから、また昨日と同じ検査室に向かうことになった。
魔石の鑑定を行う際に、300個の魔石を入れたとこを見られたせいで
「それにしても300は、やりすぎ、スライムスレイヤーじゃん」
と突っ込まれることになった。
「いやぁ、頑張ったらいけてしまって・・・」
沙月は恐縮しながらも言うが、狩りの最中は完全にスライムスレイヤー状態だったことを鑑みるとギャップがすごい。
「特攻スキルのおかげでスライムが一撃なのがでかいですね」
実入りが少ないとはいえ生命感知と特効スキルのコンボでやってることはモグラ叩きに近い。
「いやいや、それにしてもその数はずっと走り回ってないといかないでしょ」
それはそうで、実質動いて止まってのシャトルランをずっと続けていたようなものだった。
「なんか昨日と比べて体力がついたせいかあんまり疲れはなかったんですよね」
実際足の疲労感はあるものの、体力的にはまだ動けそうな感じはしていた。
「レベルがあがった影響かもね。ちょっと昨日よりは時間が早いし、後でレベルに関して説明するよ」
そういって検査室に入り、昨日と同じような検査を行う。
特に今日も問題はなかった。探索中に3回レベルアップしたのを感じていた為、何か言われるかと少しドキドキしていたが、まだ検査には現れていないようだった。
「さて、じゃあレベルアップについて簡単に説明するね」
そこから日和の講義が始まった。
レベルアップとは、モンスターを倒した際に得られる経験値を一定以上貯めることによって起きる現象とされている。
経験値は一定で、どんなモンスターを倒しても一定の数値の経験値しか得られないことがわかっている。
スライムが基準とされており、スライムの経験値を1として計算されることが多い。
初回のレベルアップに必要なのはスライム100匹つまり経験値100とされている。
次に必要なのは150、その次は200、その次は400とされている。
その数値の上がり方に既視感を覚えつつ、日和の話に耳を傾ける。
レベルアップによって得られるのは、身体能力の強化が一番大きく、レベル1上がると個人差はあるが握力や走力が明らかに増えたりタイムが減ったりする。
体力については個人差もあるが、疲れにくくなったりと増加していることがわかっている。
肉体の強度に関しても強くなっており、実験するのが難しい為、明確な数値は出せないが高レベルの冒険者になると銃弾すら弾くようになるそうだ。
「銃弾を弾くってことは、注射とかそういうのも刺さらないってことですか?」
沙月は気になったのか日和に質問を投げかける。
「いい質問ね。もちろん本人が弾こうと思えば注射とかも刺さらないんだけど、本人が許可すれば刺さるのよね」
「へぇ、じゃあ本人の意思で防御力が変わるってことですか?」
「簡単に言えばそういうこと。この事から恐らくレベルアップで得られる力はいわば外付け、身体の周りにパワードスーツみたいなもので強化してる印象を持つのが一番わかりやすいかも」
そう言われると妙にしっくりきた。
レベルアップ後に感じていた違和感は、意識と身体の差異によって感じていたが、パワードスーツが強化されていたと言われその違和感について納得が出来た。
「つまり本人の意思によって力が制御できるってことですか?」
「そういうこと。じゃないと高レベル冒険者になったら日常生活が送れなくなっちゃうじゃない?」
言われてみればそうだ。どんどん握力や走力があがっていったら、軽く握っただけでも何かを壊してしまったり、走ったら車のようになってどこかにぶつかってしまうことだって考えられる。そうなってしまえば日常生活を送ることも困難になってしまう。
「ようするに、レベルアップによって得られた力はパワードスーツの力みたいに思ってもらえればわかりやすいのよ。自分の意思で脱ぐこともできるからね」
実にわかりやすい説明だった。
他にレベルアップで得られる恩恵としては魔力値も上昇する。
ただ、魔力値については個人差が大きくでる為、人によって上がり幅が違うそうだ。
「まぁレベルアップに関してはこんな感じね」
「やっぱり恩恵がかなりでかいみたいですけど、ゲートとかに鑑定石を設置しないんですか?かなりモチベーションアップになりそうですけど」
昨日探索者不足の話を聞き、このレベルアップの現象を使えばそれなりにみんな頑張るのではないかと考えた。特に毎日目に見えて成果がわかればやる気にもつながる。
「うーん、それなんだけどね。鑑定石自体は消耗品でね。特にレベルの鑑定石に関しては使用回数が少ないうえにドロップが少なくて」
「えっ」
それは寝耳に水の話だった。鑑定石が消耗品だとは思ってなかった。
「基本的に鑑定石自体は消耗品でね。ある一定回数使うと壊れちゃうんだけど、まぁこれは大きさに依存してて、大きければ大きいほど使用回数が多く、正確に測定できるようになってるの」
そういう仕組だったのかと思った。だからこそ鑑定石などのドロップ品の買取が行われているのだと納得もいった。消耗品じゃなければいずれ需要がなくなってしまう。
「レベルの鑑定石は大きい物のドロップがないっていうのもあるしね。大きさにもよるけど、大体50回も計ったら使えなくなってしまうからね。しかもドロップ率は、この新宿のダンジョンでも産出されるのが月に多くて5個、とてもすべての探索者に自由に使わせてあげることはできないわね」
そんな事情があったことを知り、ゲートに設置することは難しいのだということも知った。
そしてそれが現状だとすると、スキルを使えばその情報を見ることができる沙月の能力が、さらに価値を増したように思った。
「さて、レベルアップについてはこんな感じだね。良い時間になったし夕食に行こうか」
時刻は18時になるかどうかという所だった。それから日和を少しだけ待ち、3人で検査室をでて食堂に向かう。




