魔法
結局実力を見るならこれが一番とサキと対峙してる辺り俺はとことん戦闘脳らしい。
「ほんとにいいんですか?」
「ああ、回避能力に関してはそれなりのもんだから気にしないで打ってきていいぞ」
「わかりました…とりあえずそこそこの魔法からやります」
そうはいっても不安なようで手加減してくれるようだ。
まぁ見せれば分かってもらえるだろう。
「まずは水魔法を使いますね」
他の魔法は覚えたばかりなので対人に打つのは不安なのだろう。
今まで使っていた水魔法からなのだろう。
魔法スキルは別に口に出す必要はないが味方への誤射を予防する為に名前を発して発動する場合が多い。
それに発したほうが魔法のイメージもしやすく威力も上がる。
だが彼女は複数の魔法をすでに発動させ空中に待機させていた。
以前沙月が複数発動して撃ち落としていたが本人曰く魔力量に物を言わせて物量で押し潰しただけと言っていたのでコントロールについてはほとんどしていないと言っていた。
そんな魔法を複数種類、しかも空中に待機状態にしている。
「これは気合い入れないとな!」
「では行きます!」
そういって最初に動いたのはウォーターボールだった。
3つのウォーターボールが一斉にこちらに飛んでくる。
「これ位なら!」
速度は恐らく時速50キロから80キロといった所、緩急がついているのがいやらしいがこの程度の速度なら避けるのは容易い。
しかし飛んでくるウォーターボールの様子がおかしい事に気付き大きく回避する。
俺のいた場所にはウォーターボールの着弾痕と俺が最初に回避しようと思っていた場所に小さいウォーターボールが着弾した痕が2箇所存在していた。
「凄いですね。避けられたの初めてです!」
「ウォーターボールからウォーターボール出てきたんだが」
「これ実はウォーターボールを二重発動して魔法の中に魔法を隠してるんです」
「そいつは凄いな」
威力も申し分なかった。
「これ大きな敵にはそのまま当てれば2倍のダメージになりますし小回りの効く敵には不意をつけるので便利なんです」
簡単に言っているがこれだけでも本当に魔法を使いこなしているのがわかる。
「あんな事言った手前いきなり当たるわけにもいかないからな次いいぞ」
正直あのままウォーターボールの連射されるだけできつそうだがスピードはそこまでなので最悪回避はできそうだ。
「じゃあ次はこれです!」
次はウォーターランスのようだが様子がおかしい。
動きに注意していると…
「回ってる?」
そしてそのまま恐ろしい速度で発射された。
拳銃並の速度がでていたのでは無いだろうか、注意してみてなかったら躱せなかった。
「今のも避けるんですね…」
「ああ、っても今のは当てる気なかったな」
「当てると危ないので速度だけ見せるつもりだったんですけど…」
着弾したのは俺がいた場所から左に逸れた所だった。
射線を読んでいたのでこのまま立ってても大丈夫だと思ったが念の為、右に回避したのだが…あちらもまさか読まれるとはみたいな顔をしている。
着弾点が抉れていたので回転してたのは気の所為ではなかったようだ。
「それでもギリギリだったけどな、これ以上速くなるのか?」
「これ以上速くすると着弾する前に消えちゃうんですよね…」
「回転量をもっと増やしてもダメなのか?」
「よくわかりましたね。あれ以上は魔法としての原型が止められなくなって霧散しちゃうんです」
「よく出来てるな…」
ここまで見ただけでも相当使いこなしているのがわかる。
「じゃあ次は当たっても痛くはないですけど怒らないでくださいね」
そう言って今度は先ほどのウォーターボールより二回り位大きな水の玉飛んでくる。
先ほどまでの攻撃と比べると脅威は感じない。
スピードもないが…すごくいやな予感がする。
俺の直前で水の玉が弾けた。
そこから無数の水滴がこちらに飛んでくるがさすがに回避することはできない。
まぁ前もって用意をしていたのだが…
触手を展開してガードした。
そして触れた瞬間にこの水の正体がわかった。
「これはなかなか嫌な技だな」
「これも防ぐんですね…怖い…」
この技の正体は粘性が高い水。つまり粘液を飛ばす技だったようだ。
付着すれば行動に制限が入るのは間違いない。
なんせ俺の触手についている粘液よりも粘性が高いのだから…。
「ってかそのウネウネしてる物は一体…」
「これか?触手スキルさ、色々便利なんだ…」
「触手スキル!?便利!?」
顔を赤くして口を抑えている。
なにやら勘違いしているようだが俺はやましいことに触手を使ったことはない。
勘違いしないで欲しいもんだ。
「まぁ見た目はアレだけどこうやってさっきの攻撃も防げた訳だし」
そういってウネウネと動かしていた。
「確かにそうですけど…」
「さて次はどうする?」
ここまでの攻撃ですでに実力が確かな事はわかったのだが…まだ本命が残っている。
「他にも色々あるんですけどどれも効果なさそうなので本命いきます」
そういったサキの周りには氷の氷柱が現れる。
そしてそれが俺の周りへと広がりだす。
その数まさに数え切れないという表現が合っているレベルだ。
「先は丸くしといたので当たっても痛いだけだと思いますけど…」
今度のはさすがに回避は難しいので前置きを入れられる。
「そう言われるとなんか燃えるじゃん」
今度は回避だけではなく迎撃できるように構えを取る。
「じゃあ行きます!」
今度は無数の氷柱が四方八方から飛んでくる。
回避できそうなものは回避するが当たりそうな物は拳で迎撃する。
それでも回避できない物は触手で叩き落とす。
まともに触手に当たると触手が消える程度のダメージはありそうだったのでうまいこと当てないといけないので難しい。
どれくらい時間が経ったかわからないが周りにさらに氷柱が追加される。
飽和攻撃ってやつか…。
望む所だ!
そこからしばらくして…
「止めます!」
サキの合図をもってすべての氷柱が動きを止めた。
「さすがにこれ以上は無理だったわ、止めてくれてサンキュー」
さすがに疲労して息があがっていた。
深呼吸して呼吸を整える。
「再開してもいいぞ!」
「いやそういう意味で止めたんじゃないんですよ…」
困惑気味の顔を浮かべるサキだった。




