国の現状
食堂は、夕食時ということもあって少し混み合っていた。
メニューを選び席を探していると、少し離れた所で手を振っている日和を見つけた。
「お仕事終わったんです?」
「まぁ今日はそんなに報告することもなかったからね。すんなりと終わったから」
「お疲れさまでした」
「そっちもよくあんな長時間探索した後なのに全然平気そうね」
「鍛えてるんで」
そういって力こぶを作る沙月だった。
実質6時間ほどの探索だったが、お互いに特に体に異常はなく、どちらかといえば体力的には元気になっている気がしていた。
恐らくレベルが上がったおかげかもしれない。
「スキルを使うと魔力を消費するから疲れるはずなんだけどね」
生命感知を多用していた沙月だったがさすがの魔力値Aってことで全く疲労はしていなかった。
「魔力を使って疲れるってどんな感じなんですか?」
「うーん、テスト勉強明けみたいな疲労」
「それは嫌ですね・・・」
学生あるあるだったようで、共感して何かを思い出したようで二人で眉間にシワを寄せていた。
「如月さんは、待ってる間は何をしてたんですか?」
俺達が探索してる間ずっとダンジョンにいたとの事だったが、その場にずっと待ってるだけっていうのは恐らく性格的に無理そうだったので聞いてみた。
「ああ、その如月さんっていうのはやめて日和でいいよ。職場の人間はみんな呼び捨てにするから如月って呼ばれ慣れてなくて・・・待ってる間はオフラインでできる資料の作成とか、後はゴブリンの間引きしたり、馴染みの探索者と話したりとかかな」
思ってたよりも色々していたので沙月は驚いていた。
「じゃあ俺もアキラで良いです、暁さんとかこそばゆくて」
「じゃあじゃあ私も沙月でお願いします」
「アキラと沙月ね、こちらこそよろしく」
三人でそんな話をしながら食事を終え、各自の部屋へと戻った。
それから今日買った品の整理や洗濯をしつつ風呂に入りゆっくりしていたが、身体を動かし足りないなと思い少し散歩をすることにした。
21時を回っていたせいか人はほとんどいなかった。
「確かトレーニング室があったはずだが・・・」
案内された時にトレーニングルームがあるとはきいていたので探すことにした。
明日以降はそこで運動した方が良さそうだ。
職員用の宿泊施設ということもあって、散歩しようにも少し気を使う。
少し歩くと目的のトレーニングルームを見つけた。
このゲストカードで使えるとのことだったので翳してみると入室することが出来た。
中には一般的なトレーニング機材が配置されていた。
一人、休憩してる人を見つけたが、よく見たら知り合いだった為、声をかけることにした。
「氷川さん、こんばんわ」
「やぁ、暁くん。こんな時間にトレーニングとは精が出るね」
タオルで汗を拭いているが、トレーニングウェアを来ているせいか身体のラインがよくわかる。
スーツを着ている時にも感じていたがかなりの筋肉量をしていた。
「ちょっと運動したりなくて散歩ついでに明日からの下見です」
「今日1日探索したのに運動したりないとは、君はかなり探索者向きみたいだね」
「昔の名残ですよ、体力だけは自信あるので」
「そうか、今日一日潜ってみてどうだったかね」
「まだスライム叩いてるだけなんでなんともいえないんですけどね、収入的には一人になったとしてもなんとかなるかなとは思ってます」
今日の成果は、沙月のスキルの恩恵が大きかったが、沙月がいなかったとしても恐らく最低限の収入は得られそうだった。
「それはなによりだ。探索者が増えてくれるのは嬉しい限りだ」
「やはり国としては探索者を増やしていきたいんですよね」
「そうだね。嫌な話になるが国の抱えている探索者の強さはそのまま国力につながっている」
「そこまでなんですか?」
「大げさに聞こえるかもしれないが一般人と探索者には超えられない壁が存在する。現在世界で確認されている最高レベルは50だが、このレベルになると拳銃も効かない。そもそも動きを捉えることすら難しい。なのに向こうの一撃でこちらは死に至る。そんな探索者を抱えている国と戦争になった場合どうなると思う?」
そもそもそれは戦闘にならない。その人物を一人都市に派遣するだけで都市は壊滅することになる。
白兵戦では決して止まらず、さらに魔法スキルなんかを使用されればほんとにひとたまりもない。
沈黙を答えと受け取ったのか氷川は話を続ける。
「日本人の気質的には探索者が難しいことはわかっているのですが、高レベルの探索者を作ることは国の安全の為にも必要なことなのです」
「確かにその話を聞いてしまうと探索者の育成は急務に感じますね」
「なので、日本では自衛隊が率先して探索を行っている現状ですね。警察官も同じで、定期的にダンジョンに潜りレベルをあげています」
高レベルの探索者を取り締まる為には、高レベルの探索者が必要になる。
治安維持する為にもそういった取り組みが必要なのだろう。
「そういう訳で探索者を増やすことは、国としては頑張っているいる状態ではあるんですが、まぁなかなか成果はあがりません」
「その恩恵は受けている身なので助かってます」
それからも喋りながら設備の説明を受けつつお互いに汗を流した。
氷川さんも探索者だったそうだが、年齢の事や前職のこともありこちらで仕事をしているそうだ。元探索者ということもあってか動きにキレがあったがそれ以上に身体は均整の取れたキレイな筋肉の鎧を纏っており只者ではないと感じた。
「さて私はそろそろ休もうと思いますが、やっていくなら説明しますか?」
「いえ、大丈夫です。使ったことがある機材ばかりなので問題ないです。それに今日は下見に来ただけなので」
「そうですか。あっ一つだけ珍しいものがあるので教えておきますね」
そう言って連れられた場所にあったのはパンチングマシーンだった。
「これは・・・」
昔の自分を思い出し少し言葉に詰まってしまった。
「レベルが上がったことがわかるには数字に出たほうがわかりやすいので設置してるものです。ここのスイッチを押せば計れるので是非」
「ありがとうございます。また明日試しにやってみます」
「では、私はこれで失礼します」
そういって氷川さんは、退室していった。
氷川さんを見送った後にやはりパンチングマシーンを見つめ思う所があり、色々と吹っ切れる為に今日、やっていこうと思いスイッチを押した。
計測準備が整い準備完了のランプが点灯する。
本気でパンチングマシーンを殴る。
探索者でも大丈夫ということでかなり頑丈に作ってあるようだ。市販のマシーンとは少し感触が違った。
「まぁこんなものか」
測定値を確認し、機械のスイッチを切り、そのままトレーニングルームを後にした。
測定値には300と表示されていた。
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