武器
さっきまでここでどんな会話が行われていのかは定かではないがシトリーの事を報告する。
「まだいてくれてよかったよ。シトリーだ」
「よろしくぅ~」
気の抜けたように挨拶をするシトリーだが完璧な所作でカーテシーを行っていた。
皆驚いた顔をしていたがその勢いのまま吸魂玉の説明を行った。
「というわけなんで今後は俺とセットみたいな感じになるからよろしく頼む」
説明してる間も俺にまとわりついてきたのだがそのせいか若干空気が悪い。
先ほどのカナタやミレイの対応を見て気付かないほど俺は鈍感ではないつもりだ。
女性陣に好意を持たれている自覚はしたのだがそこから先に進めるほど吹っ切れてはいなかった。
ミレイとのキスを思い出すと顔が赤くなるレベルだが…今はそんな事を考えている場合じゃないと振り払う。
「つまり彼女とは離れられないってことですか?」
沙月から質問が入る。
「吸魂玉を俺から離せば彼女は存在できなくなるらしいが誰かに渡しても意味はないそうだ」
「なるほど…色々言いたい事はあるのですが彼女がいればダンジョンについては質問できるってことです?」
「そういうことだな」
そこからは沙月が色々質問して今日はお開きとなった。
身体を動かし足りなかった俺はダンジョンに行こうとすると…。
「ダンジョン行くなら私もいきます!」
カレンが付いてくるとことになった。
沙月何やら日本との打ち合わせがあるそうで居残り。
ミレイは夕食の準備。
カナタは俺が頼み事をしたの件で急ぎではなかったのだがすぐに出来そうだからと吸魂玉を持って部屋に籠もってしまった。
その際にシトリーが訝しい目を向けていたのを見送る。
本当はソフィアも来たかったそうだが呼び出しがあり基地に帰っていった。
カレンにはたまに体術を教えているのでその延長でダンジョン内で軽く組み手を行った。
「アキラさん、私ってどんな武器を使えばいいと思いますか?」
これについては色々と考えていた事だった。
現状は体術オンリーで戦闘をしているカレンだが固有スキルの事を考えるとある程度の距離を保てる武器の方が都合が良い。
背後から攻撃する時も真後ろに現れるのと距離を置いて現れるのでは危険度も変わってくる。
「ある程度距離を保てる武器ってなるとミレイと同じ槍とか?」
「あれ振り回してると自分を傷つけそうで怖いんですよね…」
「まぁ確かに…」
「あの長い棒みたいな武器ってどうなんですかね?」
「ああ、棍の事か?三節棍とかその類か…」
「あれなら戦端に刃物ついてないですし良いかなと思ったんですけど長い棒は部活で使ってたのでそれなりに使えますし」
カレンは部活が陸上部だったそうで棒高跳びであの手の長物を使用するのはそこまで苦ではないそうだ。
「うーん…」
「何か問題ですか?」
「あの手の武器って強度と重さの問題があってな…ダンジョンドロップの武器なら大丈夫なんかなぁ」
棍は基本的に取り回しを考えるとある程度の重さに抑える必要がある。
しかし攻撃力を考えると重みも必要になる。
そして強度問題。
この3つを上手く成り立たせる必要がある為、メイン武器で使うとなるとある程度の調整が必要な武器だった。
「恐らく既存の棍だと俺達の力でぶん殴ったら折れる」
「ああ、確かに地面なんかに叩きつけたら折れそうですね…」
「ダンジョンドロップの武器であればある程度強度は大丈夫そうだが…今度色々届くらしいし一緒に頼んで置けばいいんじゃなか?」
「そうします!三節棍って扱い難しいです?」
「あれこそ強度が問題になるけどまぁダンジョン産の武器なら大丈夫だろ」
「他におすすめの武器ってあります?」
「一番良いのは銃なんだけどな…」
「銃ですか」
ダンジョンが出来てから銃は役立たずという印象を拭えない。
モンスターにはほとんど効果がないからである。
「遠近で使える武器でしかも威力もある。携帯も容易でカレンの能力と合わせれば割と無敵感ないか?」
「銃本来の威力が出るのであれば確かに…」
背後から拳銃でズドン。弱い訳がないのだ。
しかし割とポピュラーな武器種の癖に銃のダンジョン武器は存在しない。
なんとかダンジョンでも使えるように当初は試行錯誤していたそうなのだがそもそもの弾が問題という身も蓋もない問題に直面した。
モンスターにダメージを当てるには弾自体の強度上げる必要があるという結論に達したのだ。
俺達もモンスターもパワードスーツを着ているような状態だ。
そしてそのパワードスーツは現存する弾では貫通できないという状況だったのだ。
低階層のモンスターであれば効果があるのはまだパワードスーツの膜が薄いせいであり10層より下のモンスターは貫通することはできないので出来て怯ませるくらいだ。
「銃みたいな武器があればいいんだけどなっていう妄想だな」
「この調子でスクロール落としてたらそのうち武器作成も出来そうですけどね」
「確かにその時まで期待しとくか…棍については武器として使うのは賛成だぞ。届いたら少し齧った程度だけど教えてやるよ」
「ありがとうございます」
体術訓練をしながらそんな会話をして宿舎に戻ろうとダンジョンを出る。
ダンジョンから宿舎の道すがら…
「アキラさんから見て私ってどうですか?」
「ああ、凄いと思ってるぞ。運動神経も良いし戦闘カンも悪くない俺の攻撃を目で追える位の動体視力もあるみたいだしな」
「いやそうじゃなくて女としてって事です」
「はぁ?どうした急に」
「ほら男性ってアキラさんしかいない訳ですし私3年も眠ってたから気になるんですよ女子的評価が」
難しい質問が飛んできた。
まぁこの手の質問の答えは母から学んでいる。
「俺は母のせいで目が肥えてる自信はあるけどそんな俺から見てもカレンは魅力的だと思うぞ…」
「むぅ…それ言われたら何も言えないじゃないですか…先に行きます」
「やはりこれは効果バツグンだな…昔から母(聖歌)を引き合いに出せばこの手の質問は大体いける」
偉大な母をもった事に感謝しつつ俺は帰路についた。