ミレイside
アキラがちょっと気持ちを落ち着かせてくると言って部屋に戻った。
「はぁあああああああああああ」
大きなため息が出る。
あんな風に言い争いをするつもりはなかった…だけどアキラの様子を見ていたら言わずにはいられなかった。
それでもあんなキツイ言い方はなかったのではと自問自答する。
「やりやがったな」
「やりましたね」
「やっとですか」
「ほえぇぇぇ」
4人がミレイを見ながら言葉を発した。
あの言い争いからのキスを黙って見守っていた3人はミレイを見る
「とんでもない抜け駆けですね…やっぱり年上の人たちはこういう時に遠慮とかないんですかね~」
わざとらしく沙月がぼやく。
「まぁ早いもん勝ちって訳でもないしいいんじゃないか?これであいつが考えを改めるっていうなら私は構わんよ」
「お二人に完全に先を越されたのは不本意ですけどそれには同意です…ただキスまでする必要ありました?」
「あああああああああ」
思い出すだけで顔から火がでそうだった。
あそこまでするつもりはなかった。
話してる間にどんどん弱っていくアキラにキュンとしてしまった。
完全に弱った所を狙った状況となってしまったが、こちらも感極まってしまい止める事が出来なかった。
今、思い出しても目の前にアキラの顔と唇の感触…
「なんか思い出して惚けてませんか?」
沙月からツッコミが入る。
「そんなことありません!」
「いやどう見ても今、耽ってませんでした?いやらしい顔してましたよ」
「そんなことないです!」
「いや恍惚な顔してたから思い出してただろ…」
相棒から的確なツッコミが入る。
「…」
図星を突かれたことで顔を伏せる。
一気に顔が赤くなり体温が上がる。
「ほら図星だ」
「姉さんの癖をよく分かってますね」
「何年相棒してると思ってるんだ」
長年の相棒と妹がいては誤魔化しようがなかった。
「そうですよ!そう!思い出してましたーー!」
自白するしか道はなかった。
「羨ましい限りですねぇ…こっちは遠慮してたのにまさかキスまでしちゃうなんてねぇ」
沙月とは互いの気持ちを確認して抜け駆けはしないように話していたが今回は完全に裏切る形となってしまった。
「それに関しては…ごめんなさい…」
まだあの能力の影響が残っていたのだろうかそれとも弱っている男に惹かれる質だったのだろうか…やってしまった後では謝るしかなかった。
「こっからはもう残りの権利を争奪戦って訳ですね…」
「残りの権利?」
カレンが疑問を発する。
「一つ確認したいのですが…全員アキラさんに好意を持ってますか?」
その言葉に全員が言葉に詰まる。
「ワタシは好意という程では…憧れみたいなものは感じてますけど」
ソフィアは付き合いが短い上に関わりも少ない。
これで好きになっていると言われたらアキラは異性を引き寄せる能力がカンストしてるに違いない。
いや、ほとんど関わっていないのにこの好感度はおかしいのではないか?
「私は好きだぞ…独り占めしたいって訳じゃないけどな」
カナタは今まで飄々としていたが、アキラに対して好意を抱いているのを先程確認した。
「姉さん達ほどかって言われると自信無いんですけど…私は好きですよ。身近な男性っていうのもありますけどアキラさん優しいんですよねぇ…」
カレンはちょこちょこアキラの元で体術訓練を行っていた。
そもそも身体を動かすのが得意だったといってもそれは戦う為の物ではなくスポーツをする技術だ。
カレンが戦闘で動けるようになっているのはアキラの指導のおかげだった。
アキラの指導は基礎がしっかりしているおかげか非常にわかりやすい。
一連の動きに至るまでの筋肉の動き、力の流動。
それに伴う結果までアキラは指導してくれる。
アキラの指導のおかげでみんな体術のレベルは格段にアップしている。
軍隊格闘を学んでいるソフィアに至ってもアキラとの訓練は非常に勉強になるというレベルである。
正直、探索者になる前にアキラの指導を受けていれば怪我をする確率は大幅に下がると思う。
アキラはカレンに対して巻き込んでしまった罪悪感を感じていた。
だからこそ一際丁寧に教えていた。
カレンが惹かれたのも恐らくそのせいだろう…。
姉妹で同じ男に惹かれてしまうとは…血は争えないという事だろうか。
「私もアキラが好きです…自分の命と同じ位に…だからアキラにも同じように思ってもらえたらと思って…」
私と同じように思ってもらえたらアキラもあの無茶を止めてくれないかと思ったからこその行動だった。
「皆さんの思いも想いもよく分かりました…こっから先は恨みっこ無しです。正妻の座は渡しません」
沙月は静かに宣言した。
「まぁ決めるのはアキラだしな」
そういってカナタは笑った。
「新参者なんで遠慮してましたけど私負けるの嫌いなんですよね」
カレンは、昔からこういう子だった事を思い出した。
負けず嫌いで私にかけっこで負けても何度も挑戦してくる子だった。
「私も負けません」
自分の為でもあるけどアキラはこれくらい積極的にいかないと恐らく本人はその気になってくれないとこれまでの付き合いで感じていた。
焦りもあるがこれだけ好かれているアキラを好きになれたことに喜びも覚えていた。
「修羅場は勘弁してくださいねー」
とソフィアからにっこり笑顔で牽制される。
「まぁ最終的には全員もらってもらいましょう。せっかく一夫多妻国家にきたんですし」
沙月の宣言も尤もでここは一夫多妻が認められているアメリカ。
「まぁ揉めるのは私もごめんだからな…そういうのは無しにしようぜ」
「そんなつもりはありませんよ…自分の魅力で振り向いてもらいます」
この3人相手に正妻を勝ち取れるのだろうか…それとは別に何か嫌な予感もしれてたりする。
3人で…済むのかな…。
正妻戦争の開始と共に言いようのない不安が過っていた。