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アキラの過去

 全員がリビングに集まってくれた。

 先ほどの醜態を思い出しカナタの顔を見ると少し赤くなる。


「まぁそんな硬くならずに聞いて欲しい…よくあ…いやよくあったら困るな。まぁ世にある一つの不幸だと思う…それと俺が犯した罪を受け入れられない人は言ってくれ俺は大人しく身を引く」


 俺の言葉に全員が沈黙で返した。

 そして俺は過去を話始めた。


 俺は生まれから特異だった。

 生みの親は清水聖歌…国民的大女優であり歌姫であり…みんなに愛されていた。

 しかしそんな存在にある男が目を付けて牙を剥いた。


 その男は無駄に権力を持ってる男だった。あの手この手を使い母を手籠めにした。

 しかし、母の不幸はそれだけでは終わらなかった。

 俺を身ごもっていたのだ…多忙な上に元々の体質も重なり気付いた時にはすでに堕ろせる期間を過ぎていた。


 そして母はしばらく芸能活動を休み俺を生む事にした。

 その為にまずやったのは自身をこんな目に合わせた男への接触だった。

 一夜の遊びだったつもりの男は決定的な証拠を残してしまったのだ。


 その男はそれを公表されればすべてが終わる。

 そうならないようにするには母の願いを叶えるしかなかった。

 母曰く最初は口封じをしようとしたそうだが、返り討ちにしたそうだ。

 しかも何かあった時はこの事実が公表されるように細工済み。

 この話を聞いた時に俺は目の前の母には絶対に逆らってはいけないと本能的に察した。


 そして男はあらゆる手段を講じてこの事実を隠匿した。


 そうなるよう仕組んだ母だったが、母が生んだという事実を消す為には、違う母親を用意する必要があった。


 そして用意されたのがもう一人の母親である暁京香だった。

 その時の彼女はミステリー漫画家としてはまだ芽が出ずにいた。

 そんな、彼女だが母とは小さい頃からの幼馴染であり親友だった。


 そんな彼女に母は代理母を頼んだのだ。天涯孤独の身であることも頼んだ理由の一つであった。


 その時の育ての母はこう言っていた

「なんだか2人の子どもみたいじゃん、いいよ代わりに生んだことにしても」

 と軽く返事をしたそうだ。


 母はその時、全く後先も考えずに…と心底心配をして心底感謝をしたそうだ。


 そして俺の生まれた日…母(聖歌)が生んだ俺を母(京香)が生んだ事になった。

 ダブルマザーに育てられる事になった俺は多忙でほとんど家にいない母(聖歌)の帰りを待ちながら母(京香)に育てられた。


 何が切っ掛けだったのかわからないが母(京香)は漫画家として売れだした。

 創作者にとっては非日常な経験が刺激になったと後に言っていた。


 ある程度育つと母(聖歌)からトレーニングメニューという名のスケジュールを渡してきたそうだ。

 私の子なのだから出来ると言われた時はよくわかっていなかったと思うのだが頷いていたそうだ。

 そのトレーニングのおかげなのか親からの遺伝なのか俺の身体は完璧な身体と言って良い程に仕上がっていた。


 これに関しては今になっても感謝しかない。

 当初は、母(京香)が難色を示していたそうなのだがこれが最終的には俺の為になると言って押し切ったそうだ。


 幼少期に培われた身体によって小学校に入ってからは無双状態だった。

 運動では負け知らずだった。

 多忙な生活をしていたにも関わらず週に1度は絶対に顔を出してくれていた母(聖歌)には本当に感謝している。


 勉強も2人から徹底的に叩き込まれた。

 そもそもふたりとも有名大学の卒業生なので先生としては申し分ない存在だった。

 二人共多忙ではありながらも俺に尽くしてくれていた。


 物心がついた頃には父のことを聞いたらお互いがお互いを指を指したそうで、揉めたそうだ。

 そんなこんなで有耶無耶になりいつの間にか死んだという事になっていた。

 まぁそんな出生の秘密を抱えているとは思ってもおらず幼少期は父親がいないけど母2人に育ててもらっていることを幸せに思っていた。


 そんな生活ではあったが無事に高校生になった。

 地元でもそれなりの高校に進学をすることが出来た。

 頭の出来に関しては2人には及ばなかったが…運動面ではそれなりに結果を残すことが出来た。


 しかし団体競技では一人の力で引っ張るには限界があり県大会止まりであった。

 高校に入って一番の事件は、母2人から出生の秘密を打ち明けられた件である。


 実際、母(京香)は女性としては欠陥が多く、部屋は汚い、服は着回し、身だしなみもざっくりと女性らしさの欠片もなかったのでよく男と付き合えたなと思っていた。ただ、大きくなるにつれて自分の顔が母(聖歌)に似てきているのは感じていた。

 そのせいで本当に母2人で子どもを作ったのではないかと疑っていた。

 しかし出生に関してはかなり複雑な事を知り正直受け止めるには時間がかかった。

 それでも母(聖歌)は、幸せな妊娠ではなかったけど私はお前を愛しているよ…と言われた事が救いでもあった。

 自分の中で折り合いが付き色々詳しく聞いたが、子どもを作るつもりはなかったそうで一生独身で過ごすつもりだったそうだ。


 望んだ妊娠ではなかったが、自分の中にいる命に興味がでたそうだ。

 こうなったらとことん利用してやろうと実の父にはかなり動いてもらったそうだ。

 休止の理由も喉の不調という診断書まで捏造させ、隠遁生活も快適だったと言っていた。

 実際口封じされそうだったと聞いた時は殺意を覚えたが、今後関わり合うことはないという条件だから今後、俺が会うことはないと言われ名前もどういう人なのかも聞かせてもらえなかった。

 ただ、とんでもない権力者だという情報だけだった。


 そんな事件もあったが、世間的に見ても俺は恵まれた生活を送っていたように思う。

 家族の愛情という点については二人共多忙だったせいか少なかったかもしれないが俺としてはそんな関係を心地よく感じていた。


 顔が完全に母に似てきて何かと声をかけられることも増え出歩く時は深めのパーカーやキャップなので顔を隠す事が増えたのは不便だったがまぁこれも母からの贈り物だと思い諦めた。

 学校でも何かと告白されたりしていたのだが母たちの女性像のせいか付き合う気にはならなかった。


 常に完璧を求め他者にもそれを要求する母(聖歌)と自分に甘々で何事もだらしないがやるべき事はきっちりやる母(京香)と完全に正反対の2人のせいで女性観が歪んでいた。


 ぶっちゃけると日和と母(京香)は似ている部分が多く初めてあった時から既視感を感じていた。


 高校に入ってからは子育てで抑えていた反動か2人の母は仕事に没頭していった。

 元々忙しかった母(聖歌)は海外公演なども積極的に行い日本にいない事が増えた。母(京香)は元々持っていた連載に追加で原作の仕事をするようになったそうで一層だらしなくなった…。


 2人の母が有名人である事を俺は誇りに思っている。

 忙しく飛び回る母(聖歌〉も忙しく頭を抱えている母(京香)も俺は愛していた。

 それだけは間違いない。





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