西園寺side
久々に早く帰れると思ったらとんでもないメール来てる…
「これは各方面に連絡するしかないかー」
すぐに総理に連絡を入れる。
「あまりうれしくない方からのご連絡ですね…どうしました?」
「簡潔に3点…日和さんが離脱、ダンジョン管理者、ダンジョン攻略特典」
「なんか頭が痛くなる話ですね…すぐに時間を作ります」
総理との電話が切れて会談が可能になったのは19時を過ぎていた。
「おまたせして申し訳ない…」
「いえいえ一国の代表を呼び出したのですから仕方ないです」
「そうは言っても完全にオフモードに感じますが?」
「こちらは連日激務なんですよ…早く帰って休みたい…」
「エルフは長寿なんですから大丈夫じゃないんですか?」
「それはエルフ差別ですよ…こんな仕事ばかりしてたら早死しそうです」
「ハハ…御冗談を…」
冗談ではない。他国では全く仕事を与えられてないエルフもいるというのにこの国は中枢で仕事をさせているのだからかなりの横暴だと抗議したい。
まぁ自分でコントロールしやすいようにこの役職を希望したのだから仕方ないのかもしれないが…ここまで激務になるとは聞いてない。
「さて談笑はこの位にして内容を共有しましょう」
「わかりました」
ダンジョンの概要について総理に説明を行った。
日和が管理者の眷属としてあちら側にいってしまったことも伝えた。
「彼女は…やはり止まりませんか」
「良い鎖だとおもったんですけど残念です…」
彼女がいればもっと情報を得られて精査されていたかと思うと残念にならない。
聞いた情報の中にはなく聞きたい情報がかなりあった。
「時間もなかったそうなので仕方ないのですが…彼女がいればと思ってしまいますね」
「彼女はこの手の情報の精査にかけてはトップクラスでしたからね…」
「しかし、このダンジョンの管理者は公表するべきなのでしょうか?」
「最下層にいかなければ関わることはないのですからそこは伏せてもいいと思いますがそうなると情報の出所が問題ですね…」
情報を公開したとしても出所が重要となる。
動画をとってきてくれたのは助かるがこれを公開するとなるとある問題が浮上する。
「彼女の姿が問題ですね…」
「まさかかなりの有名人だったとは見たら気付く人も多そうですね」
シトリーと呼ばれる悪魔の姿は実際に亡くなった人に猫耳が生えただけの状態。
ダンジョンに吸収した人間をこうやって再利用していたとは私も思っていなかった。
(私達のように囚えてるだけかと思っていたのだけど…まぁ吸収した人数を考えれば…私達と同じとはいかないか…)
彼女の顔を認証をかけた所すぐにヒットした。
ハワイ島で行方不明。
見る人が見ればダンジョン災害で亡くなった人だと気づかれてしまう。
「顔を隠すか加工して流すのがいいと思うわ…余計な詮索は混乱を呼ぶわ」
「上手くいけば探索者の数も増えそうですけど混乱の方が大きいですね…すぐに救出しろといって暴動すら起きかねない」
災害で亡くなったと思っている人が生きているとわかれば救出して欲しいと思うのが人の常。
だが、現状救出方法も救出出来るかもわからない。
そんな状態で希望を見せても暴動が起きるだけだ。
「いっそのこと顔を隠してしまった方がそれっぽいかもしれないわね」
「そうしましょう。声に関しても加工を入れます」
「いい感じに入れてね。フェイク動画みたいになっちゃうから」
「わかりました。発表のタイミングはアメリカにも共有されてるそうなのでそちらと合わせて行います」
「そういえば例の国との交渉はどうなりました?」
「終わったようです。我が国と違って対応が早いですねぇ~あちら側は人的資産を失う位ならスクロールを差し出してくるので交渉がスムーズで助かります」
「日本で交渉してた時は出し渋ってたように思いますけど…」
「恐らく救出しようとしてたからだと思われます…もう希望はないとわかったせいかすぐに送られてきたようですよ。リスト送ります」
総理からすぐにリストが送られてきた。
「希少スクロール15個にそれなりにレアなスクロールも10個…太っ腹ですね」
市場に出回らないようなスクロールが15個の時点で相当な物だが他のそれなりのスクロールも時価1000万を超える物ばかりだった。
「人的資産には替えられないからでしょうね…あそこは人口は少ない国ですから」
「これをすべて彼らに?」
「いえ、一部はアメリカが持っていきますね。一人は向こうで対処しているので…でも希少は10個、レアスクロールも5個は送る手筈になっています」
「それは朗報ね」
「例のモバイルハウスとキャンピングカーも完成したそうだからそちらと合わせて3日後には空輸する予定です。彼女も一緒に向かわせますか?」
「そうですね。準備はできているそうなので…こちらから連絡をとっておきます。ハワイの方にもこちらから伝えておきますね。公表内容については後日ということで」
「よろしくお願いします」
そういって通信が切れた。
まずは彼女にメールを送る。
沙月が欲していた人材の一人だ。
彼女ほど優秀な人物は出来ればこちらで確保しておきたかったのだが仕方ない。
それに彼女たっての希望でもある。
あれほど食い気味に来るとは予想外だった…何が琴線に触れたのだろうか。
こちらのパーティはほぼ解散。
他メンバーは他のパーティと合流し彼に関しては探索者を引退。
トップパーティの末路としては寂しいものがあるが…まぁ仕方ない。
沙月宛にもメールを送り、これで残業は終了…と思っていたのだが…今度はダンジョンで異変という報告があがってきていた。
「勘弁してくれ…」
すぐに氷川に連絡を入れ対処する為に準備を行う。
「今日は早く休めると思ったんですけど…」
氷川からのボヤキが聞こえる。
「すまないね…私もそのつもりだったのだが残念ながら今日は日を跨がないことを祈るほうが建設的かもしれない」
「やることが…やることが多い…」
そういって電話が切れる。
「全くその通りだ…事務能力が高くて探索者としても強い人材を早く見つけなければ…」
と無いものねだりをしながらもその後、対処に追われることになった。
ダンジョンの階層変化…それが色々なダンジョンで始まっていた。