閃光パーティ(サキside)
そんな時、ある噂を耳にした。
ドラゴンへの特攻スキルを持つ探索者の噂である。
その噂に光は興味を持っていた。
そんな折、偶然にも噂の人物と接触することに成功した。
この機を逃すまいと光は声をかけた。
私としてはもっとレベルや装備を整えてから挑みたかったのでここで光が調子に乗って挑もうとしないか不安だった。
その予想は良い意味で裏切られることになった。
勧誘した2人はかなり慎重で、連携の確認も含め装備を整えてから挑む事に決めてくれた。
特に光は女の私から見ても綺麗なミレイに惚れたらしく言うことを素直に聞いていた。
順調に準備を整え私達はドラゴンを討伐する事ができ大きな喝采を浴びた。
しかしそれがいけなかった。
周囲からチヤホヤされ出してから光の悪い所が表面化してきた。
自身の感情をすぐに表に出し仲間を貶したりイラつきを口にするようになった。
そんな状態でもドラゴンで儲けが出ている間は良かったが、今思えばドラゴンはボスであり繰り返し狩るには不向きな敵だった。
一度ドラゴンを突破したパーティーは21階層での狩りで安定した収入を得ていた。
ドラゴン狩りのコスパが悪くなり私達も21階層の探索に移り事件は起きた。
カナタの特攻スキルの欠陥が発覚したのだ…これにはすでに悪癖を隠さなくなっていた光は我慢できなかった。
ほどなくその不満は爆発しカナタを追い出してしまう。
しかし、それに連れ添うようにミレイも離れてしまった。
私としてはこんなパーティーでいるよりもミレイ達の為だと思い引き止めることはしなかった。
後で謝りの連絡を入れる位しか出来なかった。
ミレイが抜けるのは光としては予想外だったようで、その後も何度かミレイに絡もうとしていたのを私は、それを阻止することしか出来なかった。
時間が経ち吹っ切れたのかパーティーメンバーが揃ったせいか、ミレイの事を断ち切るように不特定多数の女性と関係を持つようになっていた。
2人がいなくなった後からパーティーの事の運用もほぼ私に丸投げ。
物資の調達も予定の計画もすべて私。
それはパーティーメンバーが増えても変わらなかった。
勧誘したメンバーは光の友達らしく入った当初は私やもう一人のメンバーにもちょっかいをかけてきたが冷たい態度を取っているうちに絡んでこなくなった。
私ともう一人は完全にビジネスライクな関係で他の3人とプライベートで関わることはほとんどなかった。
日々お金を稼ぐためだけの関係それが私達。
何も楽しくないし何も感じない。
日々お金を稼ぐためにダンジョンに潜っていた。
無価値で無意味…私の世界は灰色に変わっていった。
そしてあの日が訪れた。
いつものように集まりダンジョンに潜ろうとした時に見知った顔を見つけたのだ。
こちらの静止する暇もないほどのスピードで絡みにいく光。
案の定揉め事になりそうだったので止めようとした時にふとある人物が目に入った。
カナタの後方にいたその人物に一瞬で目を奪われ世界が色付いたように見えた。
そのせいで止めるのが遅れたのは、2人に申し訳ないことをしてしまった。
後ろ髪を引かれる思いだったが、その日は注目されてしまったこともありそそくさとダンジョンに潜った。
ロビーでの出来事のせいかダンジョン内でも光の機嫌が悪く何かと悪態をついていた。
そのせいもあり、21階層での混雑が耐えられなかったようだ。
「こんな混んでて狩るのだるいし次の階層行こうぜ」
本来ならそんな予定にない行動を取らないのだが、すでに他パーティーとも揉め事を起こし居づらくなってた事もあり、提案に乗り次の階層に向かう。
すぐに退避できるように入り口付近で狩りをしていたのだが、調子に乗った光が奥に向かってしまう。
この階層の恐ろしい所は高い防御力と攻撃力を持つが故に、数匹に絡まれるとパーティーが崩壊する所だった。
だからこそ人気がなく人が少ない。
光が奥に行ったせいで複数のモンスターに囲まれる結果となってしまった。
生命感知でも確認出来たのは、モンスターのみタンクが重傷を負い連携が崩壊し、一巻の終わりかと思ったがその時、生命感知の索敵範囲外から救援が現れた。
ミレイとカナタだった2人はあっという間にモンスターを蹴散らしてくれた。
そして、ロビーで見かけたあの人も一緒に助けに来てくれた。
その動きに見惚れているとまた光が無駄に絡みに行っていた。
出遅れた事を申し訳なく思いながら光を止める。
このままでは撤退もままならない為、護衛をお願いした。
引き受けてくれた上に報酬も不要と言われてしまった。
普通はかなりふっかけられたりするのだが、彼は紳士だった。
無事に帰還出来たら必ずお礼をしようと心に決めた。
ダンジョンから戻りパーティーメンバーの様態を確認したが、やはり欠損を元に戻すにはかなり高価なポーションが必要と言うことになりそれを買うだけの貯蓄を彼は持っていなかった。
私達のパーティーは光の提案で完全分配性を取っておりパーティーの活動費といったものは用意していない。
各自自己責任であり食料などの物資は私が一律で用意した上で後で報酬から引いているがポーションの類は各自で用意する事になっている。
なので今回の一件は良くいえば自業自得である。
タンクという役割は危険が伴うとして彼の分配は多めにしてある。
それも注ぎ込んで遊んでいたというのだから救いようがない。
彼は恐らく引退か、もしくはお金を借りての再出発する事になるが探索者はお金を借りるのは難しい。どこかには自身の身体を担保にお金を貸してくれる所もあるそうだが…同情はするが自業自得である。
そうは思っていても口に出すことはできない為、一応管理者としての道を進めておいた。
恐らく欠損していても探索者としてあげたレベルは健在だ。
探索者は出来なくてもそれなりに就職先は存在する。
生きていくだけなら困ることはない。