スライム狩り
ダンジョンに入り、以前案内された場所に着いた。
「さてここからは私は手助けできないから、二人で頑張ってもらうことになるんだけど準備は大丈夫?」
日和はここまで付いてきてもらったが、研究者といっても頻繁にダンジョンには潜っているそうで、それなりにレベルが高いそうだ。
道中で話を聞いた限りでは、ダンジョンが出来て初めの頃から研究者としては珍しくダンジョンでの探索をメインで仕事をしていたそうだ。
最近は、研究者としての仕事や色々と問題が多く潜れていないそうだが、一度あがったレベルは下がる事はないので問題はないとのことだった。
「大丈夫」
「大丈夫です」
昨日から覚悟はしていた為、特に躊躇うことはなかった。
「じゃあ後は、これを渡しておくわね」
そういってスマホのような物を渡された。
「ダンジョン内ではスマホは使えないのでは?」
今持っているスマホは二人共ここに入った時点で圏外だった。
「ええ、でもこれはダンジョン内のみで使えるスマホというよりはデータ端末みたいなもんでね。色々スキルデータベースとかのデータをそのまま入れてあるの。まぁでもダンジョン内でもこの端末同士なら連絡も取れるから」
「えっ!?そんなことできたんですか?」
「まぁまだ実験中だからね。端末もこれと私の持ってる2台しかないから今後普及させてく予定なんだけど・・・まだ放出する電波量とかに問題があってね・・・」
確かに基地局も無しに電波をやり取りする物としてはトランシーバー等がある。
だが、トランシーバーも距離が離れれば出力をあげる必要がありそれには色々と問題が発生する。
確かダンジョン内でもトランシーバーは有効という事だったが確か持ち込みをする際は申請等が必要で特殊な事情がない限り持ち込みは出来ないそうだ。
少し目を逸らしながら答えてくれた。これも実験の一貫らしい。
「了解しました。ダンジョン内ってことは日和さんもダンジョン内にいるんですか?」
沙月が質問すると
「そうね手助けはできないし、1階層には危険なモンスターもいないからね。2階層への入口で待たせてもらうから、帰る時とか何かあった時は連絡を頂戴」
2階層への階段付近にはゴブリンが出るらしいのでそこには近付かないようにと注意を受けた。
俺のスキルの関係で確かにいきなりゴブリンに挑むのはリスクが高く、国としても認められなかったのだろう。
今日はスライムだけ狩ることになりそうだ。
「じゃあ行ってきます」
そういって日和に手を振りながら昨日と同じ横穴を目指した。
「とりあえずガンガン、スライムを狩りましょうか」
沙月は張り切っているようで警棒を握りながら隣を歩いていた。
スライムを狩るというか実質スライムを狩ることしかできないっていうのが正しいんだが。
「生命感知でスライムの場所がわかるのでとりあえずそっちにいきましょうか」
「場所がわかるのは助かる、いこうか」
当てもなくスライムを探すにはダンジョンは広すぎる為、沙月の持ってる生命感知はとても役に立つことがわかった。
「確かに人とモンスターとか見分けるのにコツがいるんですけど、この階層は人がほとんどいないみたいなんで感知するのが楽ですね」
「そうなんだ、でも便利そうだね」
さすが100万円と思ってしまったが、やはりスキルは使うのにコツがいるそうで、所々で頭を悩ましている様子をここにくる道中でも見ていた。
人が多い所だと制御が難しいようだ。
「こっちです」
沙月の案内にしたがって進んでいくとスライムが壁に張り付いていた。
「じゃあ倒すのは俺が」
そういってスライムに警棒を叩きつけた。
さすがの特攻スキルということもあって、一撃でスライムは溶けて消え小さな魔石が残った。
「さすがの特攻スキルですね」
「まぁこれしか役に立てないからね、まかせて」
これで役に立てないと本当に存在意義が無い。
「じゃあこの調子でガンガンいきましょう。私もガンガン見つけます」
そういって沙月はドンドン奥に進みながらスライムを見つけていく。
沙月の生命感知はとても便利で、潜ってから2時間位ですでにスライムの討伐数が30匹を超えていた。
これは当初8時間潜って50匹といっていたので、二人で潜っているということを差し引いてもかなりのハイペースだった。
「しかし全然人に会わないですね」
2時間経っても全く人に会うこともなく、ひたすら沙月がスライムを見つけ俺が叩くの繰り返しのみである。
ドロップもずっと魔石のみの為、ほとんど変化はない。
「そうだね~まぁスライムは美味しくないモンスターだしね」
スライムはモンスターとしての価値は最底辺であり、探索者になった者は試しに最初に狩るだけで、後はすぐにゴブリンに移っていく。
美味しくない理由としては、まずは物理耐性のせいで倒しにくいというのがある。
通常の武器の場合、スライムには耐性がある為、一撃で倒すことが難しいということもある。ある程度レベルをあげないとスライムを物理攻撃で倒すのは難しい。魔法であれば一撃で倒せるそうだが、魔法を使えるのであればわざわざスライムを狩る必要はない。
それに加えてドロップするのは100円の魔石のみ。誰が倒すんだという話である。
モンスターによっては魔石以外にもドロップする場合もあるそうだが、全世界でスライムだけは魔石以外のドロップを聞いたことがないとのことだった。
まぁそんなモンスターの特攻スキルを得てしまった俺は不幸だなと思うしか無い訳だが・・・
「少し休憩しようか?」
2時間経ったこともあり沙月に休憩を提案した。
「そうですね、少し休憩しましょう」
ダンジョン内で休憩する場合はどうするか?それはピクニックと同じでシートを引き座って休むのが基本系になる。
大荷物を持つわけにもいかない為、軽いシートと弁当や飲み物を持参して食べるのが関の山である。
深く潜る探索者はキャンプ用の道具などを持ってるそうだが、1階層を潜るのにそんな装備は必要ないため、今回はシートと食堂で買った弁当と飲み物のみである。
「もうお昼時だし弁当を食べようか」
「わかりました」
元の大きな空洞に潜り二人で同じシートに座り食事休憩を行う。
「しかし、生命感知は便利だね。それがなかったらこんなに倒せなかったよ」
「でも、生命感知だけでもそんなに倒せなかったと想いますよ。特攻スキル様々ですね」
言ってることは正しいが、ここまでに倒したスライムの数は33匹、魔石を売っても3300円。時給換算するとかなり安い。
「まぁこれしかできないからね」
「もっと自信持っていいと思いますよ」
「世間の評価はハズレスキルだしね・・・」
「その評価をひっくり返しましょう。さて続き行きましょうか」
弁当を食べ終わり、すぐにスライム狩りを再開した。
沙月の生命感知も慣れてきたのか、ガンガンスライムを見つけ狩っていく。先程よりもペースがあがり、2時間ほどで40匹狩ることに成功した。
「しかしこんなに狩ってるのにスライムは枯れないんだな」
かれこれ70匹以上狩ってることになるが、スライムが枯れる感じはなくずっと倒している。
「弱いモンスターほど復活が早いらしいので、それが原因かもしれませんね。人がいないっていうのが一番の理由かもしれませんが」
軽く水分補給を行ってさらに狩り続けた。
先ほどからずっと感じていたが、沙月が焦っているように感じていた。




