カナタside
沙月とミレイに捕まり部屋を出る。
かなり動揺しているようだ。
この2人は本当に面白い…アキラを狙っているのは自分たちだけだと思っているのだから爪が甘い。
私がアキラに最初に好意をもったのは別に劇的な何かあった訳では無いと思う。
ただ、一緒に食事をし、一緒にダンジョンに潜り、モンスターと戦い色々な経験をしただけ。
まぁもちろん第一印象でかなり好みだったのは確かにでかかったがそれだけで好きになるほどミーハーではない。
だけど一番の心を揺さぶられたのは、アキラが自分の命を大事にしていないと気づいてから…それからは目が離せなくなった。
それは心配だったのかそれとも自分の命を粗末にしているアキラへの怒りだったのか最初の気持ちははっきりしない。
私は今まで誰かとまともに付き合ったことは無い。小学生の頃は、勉強漬け…高校に入ってからのツレとはそういった関係になるには至らなかった。
まぁ親分として君臨してたせいかそういう対象として見られていなかったせいもある。
昔から色々と面倒をみていたせいか放っておけないと思ってしまうとずっと気になってしまう。
アキラの隣、いや守れるように強くなりたいと思った。
一緒にいればどんどん強くはなれる。
それでもアキラの強さには追いつけなかった。
自分を犠牲にしてもいいと感じているせいかアキラの攻撃には一切の躊躇いはない。
その躊躇いの無さは相手への踏み込みの一歩となり、攻撃の鋭さとなる。
アキラに追いつくにはそこにたどり着く必要があった。
しかし、そこに辿り着く事は…私にはできなかった。
いや辿りついてはいけなかった。
そこは自身への守りを捨てた自己犠牲の結果だ。
私はたどり着くのをやめアキラをそこに行かせないように努めようと決めた。
しかし強敵との戦いの時には必ずアキラは前に…自分を犠牲にしようとする。
アキラを止められるほどに強くなる。
アキラの為に強くなる。
それが私の今の目標。ダンジョンに潜る目的がないとは言ったがあれは嘘だ。
今の私はアイツを受け止められる位に頼られる存在になりたい。
そう思っていた私の気持ちは今回…アキラを置き去りにすることになったことで完全にブレーキが壊れた。
沙月とミレイが好意を持ち2人でアプローチをかけていたのはわかっていた。
私は2人から一歩引いてそれを観察していた。
2人のアプローチが成功して恋仲になったら私も混ざるか程度に思っていたのだが今回のことでアキラは何かあればどこかに行ってしまうと強く感じた。
だからこそ私は今回アキラに踏み込んだ。
さすがに告白に至る勇気は出なかったが、アキラは私が支えると伝えたかったのだ。
まぁあの2人が踏み込んでくるのも想定はしていた。
2人でだらだらとやってる所を横から掻っ攫わせてもらおう。
実際の所、カレンからも相談を受けていた。
まぁ近場にいる男があれほどイイ男なのがいけない。
今後あれ以上の男に会えるとは思えない。
(男性の価値観変わっちまったよ…)
(さてとりあえずアキラへのアプローチはできたし今後はガンガン攻めますかね…)
(とりあえずはこの2人への説明からかな…)
「カナタさん…どうしてアキラさんと…」
沙月からはどうやら予想外だったようで非常にあわてていた。
「カナタ…あなたもアキラに?」
「まぁあれほどの男だし…2人に遠慮してたんだけどこのままだとアイツ何かの弾みで死んじまいそうだし繋ぎ止めようと思ってな」
「なるほど…そういうことですか…」
沙月としては覚えがあるようで納得がいったようだった。
「今回のことで私も2人に遠慮するのは辞める…アイツが私の元に帰ることが生きる目標になれるように動くつもり」
「そこまでですか…」
「私は好きになったら止まらないぞ。だけどあいつのあれは何か事情があるんだろ?」
沙月に探るような視線を送る。
「気付いてたんですか」
「まぁなんとなく察してた感じかな…それでも本人がみんなに話すって言ってたからみんなを集めて話をしないか」
「みんなにですか…」
「やっぱり何か知ってるな?」
沙月の様子は明らかに何かあるのを知っている様子だった。
「正直、話すにはかなり重い内容です…私もまだ裏取りは取れていません」
「それを自分で話すといってくれた以上答えるのが仲間の役目じゃないか?」
「下手するとこのパーティが瓦解する話しかもしれませんよ」
「それこそ心配無用だろ?何かあったからってアキラから離れられるのか?」
「「絶対離れません」」
2人揃って全く同じ言葉を発するあたりかなり依存してる気もするが…まぁ私も人の事は言えないか…出来れば私に依存させたい所だが恋愛初心者には難しいな…
「そうと決まれば2人を呼んできてくれ」
「「わかりました」」
2人は頷くとカレンとソフィアを呼びにいった。
「ふぅううううう…なんとか誤魔化せた」
2人からの追求を上手く躱せたことに安堵していると…
(先走ったとは言えあの2人のアキラへの想いはかなりのもの正直このまま何があったと詰められるのは結構恥ずかしい…)
そんなことを考えていると2人からメッセージが入る。
「「それはそれとして抜け駆けの件は追求させてもらいます」」
全く同じ文章が2人から送られてきた。
(あの2人怖い…)
恐怖を感じつつもこれで私も同じ男にハマった一人…追求は受け入れるしかないか…まぁこれも一つの友情かと思いつつ少しニヤけながらアキラの部屋へと目を向けた。
 




