発見
最悪の目覚めを迎える。
意識を手放した後に殺される可能性もあったことを考えれば生きて目覚められただけでマシだと考えよう。
しかし、状況がさらに俺の頭を抱えさせる。
何も着ていない状況で横で寝息を立てる裸のシトリー。
明らかに事後…
「嘘だろ…」
魔力枯渇による気絶をしていた俺に意識は全くないのだがこの状況は完全にその後だろう。
身体の匂いを嗅ぐ…特段匂いはしない。
未遂か…未遂であってくれ…さすがに初めてが記憶にないのは…と色々と思うところもあったが…
まぁここまで来たら慌ててもしょうがないか(諦め)と切り替えて横に脱ぎ捨ててあった服と荷物を拾う。
記憶にないならノーカンだ、ノーカン。
何時間くらい気絶していたのかとスマホを確認するとおよそ8時間…
結構長い時間気絶していたようだ。
魔力消費による気絶は今回が2回目だが前回とは違い頭痛等がない。
恐らく完全に枯渇して回復して目覚めたからだろう。
しかし一気に魔力が抜けていく感覚はとても気分が悪い。
出来ればこんな事はしたくなかった。
魔力が減った段階でシトリーの能力の効果が薄くなっていたのでもしかしたらそこからどうにか出来たかもしれないが、あの状況ではそんな微調整する余裕もなく一気に放出するしかなかった。
「なんでこいつはこんな無防備に寝てられるんだ…」
猫耳を生やしすやすやと寝息を立てている女性を見て頭を抱える。
そして見渡して気付いたがものすごく豪華な部屋だった。
変な汗をかいたのでシャワーを浴びようと思い風呂場に向かう。
そもそもお湯は出るのか?と思い蛇口をひねると問題なくお湯が出てきた。
「やっぱりここ暮らせるんじゃないか?」
そんな事を言いながらもシャワーを浴びた。
シャンプーやリンスまで備え付けられているのでせっかくならと使ってみたのだがとても高級な匂いがした。
プラシーボ効果かもしれないがとても肌がすべすべになり髪もいつもよりツヤがある気がする。
身体を拭いて着替えていると…
「普通は女性が起きるまで隣にいるのが礼儀だと思うのだけど?」
そういってふてぶてしくも脱衣所の扉を開けてシトリーが入ってきた。
「いいから服を着るか出ていけ」
「そんなこといってここは正直…なんで反応してないのよ」
「自制心って言葉を知ってるか?」
下手に意識すれば反応してしまいそうだが必死に違う事を考えて気を逸らす。
「ほんと、面白い男」
そんな事を言いながら普通に入ってくるので入れ替わりに脱衣所を出る。
「一緒に入らないの?」
「もう入ったの見てわかるだろ」
「つまらない男」
「どっちだよ…」
そうぼやきながらも俺は身支度を整えた。
備え付きのソファーに座りこの後どうするか考える。
(うわっめっちゃ良い座り心地)
雑念が頭をよぎるが考えをまとめる。
今のうちに帰還石を使うというのも手だった。
没収されているかと思ったが身につけていたものはすべて無事だった。
丁寧に脱がされたことを考えるとなぜか悪寒がしたがまぁ不幸中の幸いだった。
しかしまだ聞きたい情報はたくさんある。
思いの外気に入ってくれているようだし、このまま情報を引き出すのも悪い手ではない。
この機会を逃せばこんな機会は二度とないかもしれない。
そう考えればこのまま帰還石を使うのは勿体ないと感じてしまった。
でもなぁ…みんなに連絡をしないと心配かけてるよなぁ…
そんな考えを巡らせて悩んでいると…
「へぇ…逃げなかったんだ」
そういって俺の後ろから抱きついてくるシトリー。
「おい、ちゃんと髪乾かしてから出てこいよってか服を着てこい」
出るの早くね…それでもしっかりいい匂いがしてるのでムカツク。
「いいじゃない…このまま…」
そういって首に手を回し胸を押し付けてくる。
この女は俺の何が気に入ったのだろうか…しつこく誘ってくる状況に少し自制心が揺らいでいたしなんなら若干好意を持ち始めていた。
しかし、さすがに得体のしれない相手だと邪念を振り払う。
そしてそこに思いも寄らない乱入者が現れた。
突然扉が破壊され現れたのはカレンだった
まさか助けに来るとは思ってもみなかったので硬直していると…
「ハ…ハ…ハ…ハレンチです!!!!」
俺とシトリーの状況を見て目の前のカレンではなく廊下で声が響いた。
そして目の前のカレンは消えてしまった。
恐らく分身スキルだったのだろう。
「マジかよ…」
「あら…大変」
完全に他人事を決め込むシトリーの様子に頭を抱える。
「一応聞いておくが害する気持ちはあるか?」
「あなたのツレでしょ?そんなつもりはとっくに無いわ」
「じゃあ能力を使うのはやめてくれよ…俺以外には多分普通に効くから」
「りょーかーい」
そんなやり取りをした後、廊下に出て叫ぶ。
「問題ないからこっちにきてくれー」
そう言ったらミレイとカレンと日和が現れた。
今、思えばなんとなくではあるが日和の存在を感じる。
これに気付いていればと後悔が襲う。
こちらに向かってくるミレイの目には明らかに動揺と怒気が籠もっていた。
説明してどうにかなるのか…実に悩ましい…
まぁ正直に話すしかない。
部屋の中に目をやると未だに裸のシトリーが立っていた。
「ってお前ふざけんな!さっさと服着ろ!」
「ええ、いいじゃない別に」
「ダメに決まってんだろ!」
「ワタクシは裸にするのも裸でいるのも好きなの」
そんな訳のわからない自論を展開するシトリーにバスローブを出して投げつける。
それを受け取ったシトリーは仕方ないといった表情でそれを羽織った。
そんなやりとりをしている内にミレイ達が部屋に入ってきた。
「説明をしてもらえるのですか?アキラ…」
目だけではなく声にまで怒気が…気が重いが説明するしかないと覚悟を決めてこれまでにあった出来事を説明した。




