ゴブリンナイト
先ほどの事もあり、気まずさが残る。
まぁお互いに役割分担して俺はテントの設営、ミレイは料理を担当しているので特に会話はなかった。
しかし、なんとなくではあるが空気が変なのは感じていた。
ここ最近二人で行動することがふえあまり考えないようにしていたが、ミレイのことを異性として意識してしまっていた。
しかし、そんな考えがよぎっても自身の生い立ちを考えるとそんな資格があるとは思えない。そういった事を考える為にアイツの顔を思い出す。アイツの事を思い出すとそういった行為に対して嫌悪感が湧いてくる。
だからこそ俺にはそんな資格はないとそういった感情を振り払う。
落ち着きを取り戻しいつも通りの気持ちに落ち着いた所でミレイも食事の準備ができたようだ。
「こっちの準備はOKだ」
「こちらも終わりました」
食事を取りながら明日の話をする。
「明日は、ゴブリンを変更した後は探索をメインにしますか?」
「そうだな、多分あと数匹で終わりだから達成した後は、座標地点の捜索かな」
そもそも座標地点があるかも分からない。
1階層にあったのもたまたまかもしれない。
あるかもしれない物を探すのはなかなか骨が折れる仕事だった。
「そもそもあるかもわからないですからね…」
それはミレイもわかっているようだ。
「明日の夕方まで粘ってなかったら一度戻るか」
「そうですね、長期探索をするのは沙月がいないと難しそうです…」
あちらのスライム狩りを待って、移動したほうが良さそうだと昨日今日の探索で感じていた。
「ああ、そうなると明日の変更先はどうするか…」
「6階層がスノーリザードなんでリザードでいいんじゃないですかね?」
6階層はスノーリザードという白い大きなトカゲが出現するのを確認していた。
「そうだな、それをカナタと一緒に狩る感じにするか、あっでもパーティは別じゃないとダメだな」
あちらは3人がレベルを上げる必要があるので俺orカナタと沙月は固定される。
「それも明日戻って相談ですね…」
そもそもあちらの狩るスピードが早いと言っても俺の3倍狩る必要がある以上しばらくはスライム狩りになる。
レベル上げという面では合流して一緒に狩るという択もあるが先行して6階層よりも下を確かめるという択もある。
まぁどちらにしても相談してからだ。
「そうと決まれば今日は、もう寝るか」
時間的には21時を超えている。
寝るには早いのだが、色々あって疲れていたのもあってふたりとも寝袋に入りそのまま眠りについた。
翌朝、軽く朝食を取り、そのままゴブリン狩りを再開した。
昨日、かなり狩っていたこともあって10体ほど狩ったら討伐特典を達成した。
「今から、選ぶけど昨日と同じ感じになりそうなので正面に立つのは無しで」
「そうですね。横にいるようにします」
ミレイはそういって俺の横に立つ。
そして、昨日の打ち合わせ通り、リザード系を選択した。
『ボーナスモンスターが出現します』
現れたのは鎧を纏った、ゴブリンだった。
今回は、攻撃を加えずにミレイに任せる。
一瞬でミレイは魔眼でゴブリンを魅了状態に変えた。
「かかりましたけど、昨日も言いましたけど恐らくあまり持ちません」
そういってミレイは分身をけしかけた。
攻撃がヒットしたが消える気配はないが、ダメージはしっかり入ったようで鎧にダメージが入る。
分身の攻撃を見定めた後に顔に思いきり拳を突き出す。
苦戦するかと思いきやその一撃でゴブリンは消滅した。
あまり防御力自体はないみたいで、助かった。
そして残されたスクロールは、『闘気』スキル。
説明文は、闘気を纏う。
という一文のみだった。
「これも、未確認スキルなのでよくわからないですけど、これはアキラ向きでは?」
「闘気ってなんだよ感あるんだけど…」
漫画やアニメでよくある闘気と一緒だというなら話は、早いんだが、使ったら最後取り消しが出来ないのがスキルの怖い所である。
闘気を纏って攻撃力等が上がるだけなら良いが、それが何を消費して闘気にするかが問題だったりする。
「魔力を闘気にだったら洒落にならないからなぁ…」
「ああ、それは確かに…」
結局保留にして、座標地点を探しまわることになった。
数時間探索地図を埋めてみたがオブジェクトを見つけることは出来なかった。
「実際あれはどういう条件であるんだろうな」
「決まった階層にあるのであれば新宿の1階層にももしかしたらあるのかもしれませんけど」
「でも新宿の1階層なんて探索されまくってるだろ?生命感知とかもあるし」
そういえば昨日、偶然見つけたと言っていたがあれだけスライムがいたら生命感知でわからなかったのだろうか?
「生命感知は、密閉空間は感知できないんですよ。昨日の1階層みたいに完全に壁に埋もれてるとかの状態だと感知不可です。気配察知や危機感知なんかも同様で完全密閉空間だと感知できないんですよね。それを利用しての罠もありますから」
「案外不便なんだな」
「でも基本的に完全密閉空間なんてそうはないんですよ。空調なんかでつながってますし、だからこそ最初に支給されたんだと思います。」
確かに、ダンジョン内はどうかわからないが基本的に地上では密閉空間なんてものは存在しないのではないだろうか?
空気が通る以上密閉はされていない。どの程度の密閉具合なら感知出来ないのか試して見たい所ではあるが。
ダンジョン内にはそういうギミックとして密閉空間が存在するという認識が正しいのかもしれない。
そんな話をしつつ1階層の大穴にたどり着く。
時間もあったので今回は帰還石を使わずに帰ろうとなったのだ。
50万を浪費するのは良くない。
時間も遅かったせいか沙月達もいなかったので大穴の前で2人で立ち尽くす。
「これを登るんです?」
上を見上がるとすごく高い。
まぁ高層ビル位の高さなのだから当然だが天辺は見えない。
「一個やってみたいことがあってさ、最悪ミスっても空間軌道あるしちょっと背中に背負ってもいいか?」
「はい…」
嫌な予感がしているのかミレイの反応が悪い。
ミレイを背負うとそのまま壁に向かって走り出す。
「えっちょっとアキラ!?」
慌てたミレイが声を上げるが構わず壁に足をついてそのまま上へと走る。
落ちる前に前に出せばいけるだろ理論だったのだが、やはり垂直は厳しい数メートルで後ろに落ちそうになった。
それを無理矢理こらえて今度は斜めに走る。
正直大した硬度のない壁なので無理矢理踏み込めば壁は凹み足場となる。
それを繰り返して壁を走って登っていく。
スピードに乗ってしまえば楽なもんで普通に地面を走るのと変わらなかった。
高さが200mあっても斜めに走ったせいで距離は伸びたが所詮200m。走る距離としては大した距離でもない。
数秒で走り抜き、地上に到着した。
「うし、楽勝!これなら今度から帰還石使わなくてもいいかもな」
「嘘でしょ…」
そんな状況に驚いていたミレイだったがこちらとしては余裕で登りきれたことに感動していた。
そしてダンジョンを出て宿舎へと戻った。
仕事が忙しくなってきてしまい、更新不定期になります。
大変申し訳ございません…




