大罪系スキルと美徳系スキル
勧誘する所までうまくいくのは予想外ではあったが、ソフィアはこちらの話に食いついた。
こちらの情報はある程度秘匿してくれるそうだ。
アメリカに害を成すつもりがないのであれば情報をすべて伝える必要はないという判断だそうだ。
スキルについては、明日詳しく話すことになると説明した。
基地内であまり多くを話すとアメリカ側に筒抜けになる危険性があったからだ。
ソフィアからは、基本的にこの基地内には監視カメラはあるが音声については録音してないそうで何を話してもアメリカ側に伝わる事はないそうだ。
「ずっとそんな場所に入れられてたら兵士達がストレスでおかしくなるわ」
そう言われてしまえば確かにそうだ。
場所の出入りに関しては機密等があるので管理しているが音声まで録音していては兵士達は喋ることすら難しくなってしまう。
まぁそれでも部屋の中を盗聴しようと思えば物理的に盗聴は可能な為、詳しくはダンジョン内でということで落ち着いてくれた。
本当はすぐにでも聞き出したかったようだがそこは用心の為、ということで納得してくれた。
「勧誘までしてきてくれるとは助かりました」
沙月から感謝される。
「思ってた以上に食いつきが良すぎてな…」
クールな感じの人かと思ったらかなりオタク気質でこちらの提案後は恐ろしいほどの早口で自身の夢を語りだし困ったレベルだった。
「本当に大丈夫なんですよね…後半少し怖かったんですけど…」
提案した後は、かなり食い気味に詰め寄られてミレイは困っていた。
「大丈夫です!あのスキルは七大美徳の名を持つのに相応しいスキルですから」
「その美徳スキルって他にも確認されてるのか?」
「その辺については私がするよ、秘匿されてるスキルもあるから」
そういって日和が交代した。
大罪系スキルと美徳系スキルは、確認されているのが大罪系は2つと美徳系が3つ世界で確認されている。
スキルの内容については、既存の鑑定石では鑑定することが出来ず効果は自力で調べるしかない。
それぞれ所有者は、一人ずつで大罪系と美徳系で効果は使える効果のモノと使えないモノで分かれている。
大罪系で判明しているのは『憤怒』と『嫉妬』
『憤怒』は、戦闘中に攻撃力が上がっていく。
『嫉妬』は、経験値を独り占めしてしまう効果がそれぞれ確認されている。
美徳系で判明しているのは『博愛』『信仰』『節制』
『博愛』は、同じパーティメンバーのダメージをすべて自分が受ける効果
『信仰』は、他者の力をまとめて強大な力にして行使することができる
『節制』は、ドロップ品が0になることが確認されている。
『憤怒』、『博愛』、『信仰』スキルはかなり重宝されているそうだが。
逆に、『嫉妬』、『節制』は、ハズレスキルとされている。
幸いといっていいかわからないが、このスキルの保有者はそれぞれ一人のみであり掲示板などで話題の上がることはない。
なぜなら、所有者が一人ということを鑑みて一般には能力は伏せられているからだった。
『憤怒』と『博愛』スキルについては、所有者がみずからこういうスキルだと公表してしまっている為、世間一般に浸透しているが、残りの3つのスキル持ちはどこの誰かすらわかっていない。
日和からの説明を受けそれぞれのスキルについて理解したが、聞いた限りでは『信仰』スキルについては、強力なスキルだとわかるが他のスキルはかなり癖があって使いにくそうに感じた。
「多分、他のスキルも隠された効果を理解してない可能性が高いですね…」
「そうなのか?」
「ソフィアさんのスキルを見た感じとんでもない効果を内包していたので…」
「つまり、いま確認されている効果は常時発動してる効果だけってことか?」
「恐らくそういうことだと思います」
こういう話を聞くと沙月の叡智スキルがチートスキルだと感じる。
このスキルが無ければ、こんな状況に…あれ?もしかしてこのスキルがトラブルメーカーだったり?とちょっと思ったが、以前の生活よりも楽しめてる以上文句を言うのは筋違いだろう…
「スキルについては、明日私が説明しますから大丈夫です。探索者として活動したいなら超有能なスキルなのは間違いないですから!」
沙月がそういうのなら間違いないのだろうがドロップ品0になる効果が発動してしまう以上かなり制限がかかる気がするのだが…貧乏性故に、ドロップ品0は精神的にクるものがある。
「ドロップ品0に関しては大丈夫なんですか?」
ミレイが不安そうに聞く。
これでダメでしたでは、味方になってくれるどころか一転して敵になってしまいそうな勢いだったソフィアのことを考えて心配して聞く。
「あれは、隠れてる効果の副次的効果の影響なので問題ありません。交渉がうまくいかなかった場合は、情報を小出しにして言うことを聞かせようと思ってたので」
どうやらドロップ0に関しては解決できるようで、なし崩し的にソフィアを仲間に入れようと企んでいたようだ。
沙月…恐ろしい子…
そんなやり取りをしながらも明日以降の計画を立てる。
「ソフィアが合流して色々確認した後は、どうする?」
「当初の予定通りレベル上げ班と探索班に分かれましょう」
「そっちは4人が5人になるってことで良いんだよな?」
「はい!その予定です」
「そうなると俺とミレイは、探索でいいのか?」
「そうですね、でも当面はゴブリンを狩りながら2階層の探索をして貰えれば大丈夫です」
当初は、座標地点を探す予定だったので探索がメインだったのだが座標自体は見つかったのでゴブリンの討伐を進め特攻モンスターの変更まで狩ってしまうのが俺とミレイの目的となった。
「うーん、入口まで登るのめんどうだし数日は泊まりで狩るか…」
あの大穴を上がるのは面倒な上に帰還石を毎回使うのは勿体ない。
そういってミレイに相談すると
「そうですね、数日籠もったほうが効率的だと思うので数日分の食料とテント等を用意しましょうか」
ミレイの言葉に、沙月が訝しい目を向けているがダンジョンで泊りがけで狩った時は、沙月のアイテムボックス頼りだったので必要な用意がわからない為、経験者であるミレイに任せるのは悪い判断ではないはずだ。
その後、ミレイに聞きながら、テントや食料をリュックに詰め込み明日の準備を完了した。
「やっぱりアイテムボックスって便利だよな」
準備する品の多さと重さにアイテムボックスの凄さを再認識することになった。
「でも普通はあんな大きさの物を入れたら魔力消費が凄いことになるので普通はあんな運用はできないはずなんですが…」
沙月のせいで忘れているかもしれないがアイテムボックスは、燃費が悪すぎて質量の大きな物を運ぶには向かない。
だが、沙月は回復量のほうが上回ってるそうで本当に規格外な魔力を持っているのがわかる。
「魔力がBでも本格運用すると1時間程度でもかなりの魔力を消費するそうですからね…」
ダンジョンの入口が横穴式であればトレーラー等で運搬することも出来たのだが竪穴式ではそうもいかずつくづく探索にむかないダンジョンだなと文句を言いつつ明日に備えて早めに就寝する。
――――ソフィア視点――――
一方、その頃、自身の願いが叶うかもしれないという、ドキドキで眠れないソフィアがベッドの中で悶々とした夜を過ごしていた。
「明日…ようやくワタシの想像していた未来に近づける…」
心を病み、部屋に引きこもり空想の世界に思いを馳せていた日々。
ダンジョンが現れて夢が叶うかと思った矢先にハズレスキルのせいでまともに探索ができない日々に絶望しながらも解決策を模索していた。
そんなワタシの願いが叶う…そう思うと眠らずには居られず、一番好きな本を胸に抱きながら目を閉じ探索者として活躍する姿を想像していた。




