交渉
更新遅れて申し訳ございませんでした。
明日からまた2回更新させて頂きます。
ハワイは、以前は、アメリカに属していたのだがダンジョン災害の折、ハワイ島は大打撃を受けた。その際に、日本に管理を依頼したのだ。
その名残であそこは日本でもありアメリカでもある特区となっている。
しかし、あそこは色々問題を抱えておりダンジョンは存在するが攻略はほとんど進んでいない。
そのおかげで今回、こちらの条件を呑む候補としてはうってつけの場所であった。
モーガン氏は、こちらを探るような表情をしながら
「まぁその通りだ。色々不便な場所ではあるが可能な限り便宜を図らせてもらうよ」
それに呼応して総理からも
「こちらからも援助は惜しまない」
こちらから間接的にハワイ島のダンジョンを要求したのだが、かなり問題のある場所だ。
それなりに援助がなければ生活することすら難しいのがわかっていた。
だからこそ、2国の援助が出来る上で安全なハワイを選んだ。
ちなみにモーガン氏と沙月は初対面だが、沙月はある程度の予測を立てていた。
確実に何か交渉事に有利なスキルを持っていると。
まぁ入って会った瞬間にそれは、沙月の叡智で確認済みだった。
念話で伝えられたスキルは『未来視』と『看破』だった。
『未来視』
・数秒先の未来が見えるスキル
・自身の行動によって未来を変更可能
『看破』
・相手の嘘を見抜く
・仕掛けられた罠を見抜く
未来視で相手の反応をみてから提案内容を変えれる上にこちらの嘘を見抜くことができる。
交渉にはかなり役に立つ能力だった。
前回の交渉の時からおかしいとは感じていた。
恐らく俺の反応を見て言い換えた時にこの能力を使用していたのだろう。
交渉事で、あちらとやり合うのは得策ではないとこちらで結論付けた。
もちろん無理矢理回避しようとすることは、可能だ。
間を空ければいい。
しかしあまりに露骨にそれをしてしまうとスキルを把握してることがバレてしまう。
こちらとしてはすでに目的を達成している為、大人しく流れに乗ることした。
ハワイ島…ダンジョン災害前だったら超有名なリゾート地だったのだが、ダンジョン災害の影響を諸に受けてあそこは壊滅している。
元々火山の多い地方だった事も災いしダンジョン災害で複数の火山が噴火し美しかったハワイの町並みは壊滅的打撃を受けた。
地理的な面で復興も難しく3年経った今もほとんど放置されている。
というのが対外的な情報だ。
本来ならそんな不便なダンジョンは願い下げなのだが俺たちには、メリットが多い。
現在のハワイ島はそもそも普通は上陸許可が出ない。
日本とアメリカの共同基地が設置されているがそこしかないのだ。
当然外部からの侵入者などすぐに気付かれる。
そして何よりダンジョン内には他の探索者は、いない。
俺達の秘密がバレる心配がないというのが大きなメリットになる。
レベルに関してはバレてしまっている以上何かしらのスキルを抱えている事はすでにバレているのだが、すべてを明かすのはリスクが高い。
デメリット部分に関しては食料などの調達になるが、そちらに関しては援助が約束されれば問題は解消される。
細かいデメリットはあるがメリットと比べれば些細な問題である。
「ハワイ島の現状も知っていると思って話していいのかな?」
総理から確認が入る。
「大丈夫ですよ、まぁ正確な状況は出来ればそちらから、説明頂けると助かりますね」
この話も事前にミレイからある程度聞いていたが、人の住める状況じゃないと聞いていた。
そんなとこに移住させられても普通の人間であれば困る。
まぁそれについても俺達なら対応可能ではあるのだが…
双方から聞いたハワイ州の状況は
・人が住める所は一部のみで他は壊滅状態。
・今も火山活動が活発で近づけない島もある。
・ダンジョンのあるハワイ島は比較的安全で日米の基地もそこにある。
・インフラ施設が壊滅しており基地周辺しか生活するのは難しい。
「辺鄙な所に押し込む形になり、気分が悪いとは思うがこちらとしては、最大限の援助はするつもりだ。食料等の生活物資についても基地で受け取れるようにする手筈だ」
モーガン氏からもフォローが入る。
まぁこちらからハワイを希望したようなものなので、こちらとしてはそれほど悪感情はないのだが、事前に状況を聞いてなければ、悪感情を抱いても仕方ない状況だ。
向こうとしては支援内容等を話しつつ、提案したかったはずなのだが、先にこちらが出してしまったせいで言い訳のようになってしまった。
「こちらとしては特に問題はありません、可能であればネット環境位は用意して頂ければ助かります」
「そちらについては基地周辺であれば問題ない」
その言葉にそっと胸を撫で下ろした。
現代人にネット無し生活は厳しい。
「それとこちらからもあるスクロールを提供したいと考えている」
モーガン氏からの思いもよらぬ提案に沙月が驚いている。
「よろしいのですか?」
「ああ、正確には持っててもらわないと困るスキルだと思ってくれ、『翻訳』のスクロールを提供させてくれ」
「ああ、なるほど…それはないと困りますね」
『翻訳』
聞いた言語を理解し喋ることが出来るスキル。
片方が所持していれば相手の言語にあわせて喋ることが可能だ。
流暢に日本語を喋っているモーガン氏も所持している。
「さすがに基地の全員が所持している訳では無いのでね、これは全員取得しておいて欲しい」
「結構なレアスキルなのに感謝します」
沙月は頭を下げた。
この翻訳家泣かせのスキルは、日本ではほとんどドロップしないスキルだったりする。
逆にアメリカのような多民族国家は比較的ドロップするのだがそもそものドロップ率が低いので1つ大体200万前後で取引されている。
「ぶっちゃけそれなりにドロップ数はあってな、我が国の大事な輸出利益の品だから渋ってるだけさ」
各国独自のスクロールは、意外と多い。
もちろん日本独自のスキルも存在し海外では需要が高く重要な輸出品となっている。
「なるほど、そういう背景がありますか。後は移動に関してなのですが…」
「それに関してはこちらから説明させて貰おう」
総理が声を上げた。
総理から受けた説明は以下の通りだった。
・移動に関しては日本国内に関しては、自由にしてもらって構わない。
・アメリカへの移動は、特定地域を除き可能だが同行者あり。(ただし、日和に関しては全地域不可)
・緊急の移動以外はアメリカと日本には、定期便が出ているのでそちらを使用。
緊急時は、要相談。
まあこちらとしては何も問題はなかった。
日和の入国できないのは、当然の結果のため文句はない。
日本から説明を行ったのは、日和に関しての事があったからだろう。
おおよその条件についてはこれで合意となった為、後は正式に契約を結ぶだけとなった。
一度、日本とアメリカでの調整があるそうなので、俺達は一度、部屋を出て別室で待機することになった。




