思惑
打ち合わせの日の朝、昼に待ち合わせなのでそれまではカレンと日和のレベルを上げようという話になりスライム狩りをすることになった。
ミレイはコンテナで待機で他の5人でスライム狩りを行う。
経験値はすべてカレンと日和に配分しているので二人のレベルがガンガン上がる。
「討伐特典が無いのさみしいな…」
「だよなぁ、マシーン系終わらせてからやりたかったわ」
カナタはマシーン系が終わったらスライムをやる予定なので本来ならいま倒してるのも討伐数に入る。
「まぁ仕方ないだろ。まぁスライム位ならすぐ終わるから大丈夫だろ」
「いうても沙月がいないとこんな速さでは狩れないからな、生命感知スキル買っとくのもありかもな」
「それもそうだなぁ」
現状感知系スキルは沙月しか持っていない。
6人という人数になった為、全員での行動が難しい以上、もうひとり位感知持ちがいても良かった。
「まぁでも使うにしてもあれは結構魔力使うからアキラとか日和は論外として私も微妙だ」
感知系スキルは実は思った以上に魔力消費をするらしく低魔力値だと頻繁に使用することができないそうだ。
沙月の生命感知は、現状常時展開してるそうでとんでもない勢いでレベルがあがっている。
以前、他のパーティを見つけて避けていた時、こちらに気付いていなかったのは沙月の感知範囲が異常だったせいだ。
「それなら私が覚えたらいいですかね」
カレンが会話に混じる。
「確かに適役かもな」
カレンの魔力値はBでかなり多い。
しかも『超回復』で魔力の回復も早い、適役かもしれない。
「スクロールってそういえばどこで買うんだ?」
スクロールはすべて自前でゲットしていたので購入したことがない。
「ああ、そうかその辺のことも知らないんだな。レベルだけ高い初心者だもんな」
基本的な事をすっ飛ばしているせいで割と常識的なことを知らない。
その後、カナタからスクロールの買い方の説明を受けた。
専用の窓口に購入希望のスクロールと希望金額のお金を提出する。
基本的にスクロールはオークション形式になるので一番高い金額を付けた人が落札となる。
レアなスクロールは大々的に告知される為、世界中から購入希望が殺到する。
それと比べて人気のないものはたまにかなりの低価格で購入できることもあるそうだ。
感知系スキルは数もかなり出回るが先ほどいったように魔力消費の高さと需要の低さも相まって安い。
「まぁパーティを組んで一番最初に買うのが感知系スキルって感じだな」
「なるほどね」
そんな話をしつつ俺達が打ち合わせに行っている間に買えそうなら買ってくるという話になった。
と無駄話をしているとスライムが変な物をドロップした。
「なんだこれ」
突然のドロップに驚く。それもそうでここまで恐らく1万は狩ってるスライムだが、魔石以外の物を落としたのは初めてだった。
アイテムは丸いガラス玉のような物体だった。
沙月が早速アイテム鑑定石で確認すると…
「だめですね、これランク高いアイテムみたいで鑑定できないです」
どうやら鑑定外のアイテムだった。
「ってことはかなりのレアアイテムってことか?」
「きっとそうなんですけど効果がわからないので、とりあえず預かっておきます」
持ってて効果がある物だと困るのでとりあえず沙月のアイテムボックスで保管することになった。
後で日和に調べてもらおう。
そんなハプニングもありながら時間になったのでダンジョンを出て待ち合わせ場所に向かう。
日和とカレンは結界を張ってダンジョン内に待機。
カナタとミレイはダンジョンを出てすぐの所で何かあればすぐ動けるようにしていてもらう。
本当は安全を考えれば沙月もダンジョン待機なのだがこの交渉は沙月に一任していた。
前回とは違う部屋へ氷川さんに案内される。
前回と同じ轍を踏まない為か、入口には氷川さんが待機し他にも警備の人間が数人配置されていた。
中にはすでにモーガン氏と西園寺さん、そしてモニター越しではあるが総理大臣も待機していた。
「待たせてしまいましたか?」
「いや、こちらはこちらで話し合いがあったので…予定の時間より少し早いですが始めましょうか」
どうやら三者で何か話があったようだ。
何を話していたのか気にならない訳ではないがここで突っ込むのも野暮なので黙っている。
「そちらの女性が沙月小林かい?初めましてモーガンだ。今日はよろしく頼む」
モーガン氏は沙月を見つけるとにこやかな顔で手を差し出す。
「こちらこそ、ミスターモーガン。よろしくお願いします」
それに応え沙月も手をだし握手する。
その後、軽い挨拶を全員で交わし話し合いが始まった。
「そちらの要求である、6人のアメリカでの国籍+専用ダンジョンを与える事は本国でも了承をもらった」
「その条件でこちらは毎月、鑑定石を100個、帰還石を10個をそちらに提供するということで問題ないですか?」
今日は交渉はすべて沙月にまかせてあるので口を出さず沙月の隣で黙っている。
「そうですね、それで問題はありません。ダンジョンについてはすでにご存知の場所になりますのそのつもりでお願いします」
提供されるダンジョンは、日本とアメリカの共同管理しているダンジョンということで一つしか存在しない。
「ハワイ州のハワイ島ですよね?」
沙月のその言葉を聞き、モーガン氏はにっこりと微笑んだ。




