普段の終わり
いつからだろうか、何事も自分で決められなくなったのは。
いつからだろうか心の底で退屈だと感じていたのは。
いつからだろうか失うことばかりを恐れていたのは。
「はぁ…」
失いかけた意識の中で妻に、子供に申し訳無いと呟く。
死ぬことを予感している。
事故にあってしまった。冷たい雨が降る夜道。腹を貫通する
鉄筋。鉄筋を積んでいるトラックが横転し無数の鉄筋が降り注ぎ身体を貫いた。
幸運な事に35年の人生で死ぬことを今まで意識したことなどこれ迄なかったが、今、静かにそして強烈に迫り来る死を予感していた。
走馬灯に思いを馳せる暇もなく、そして案外大した事を考える余裕もなく、男は意識を失った。
「あれ?」
白い部屋?いや、部屋じゃない
「なんだここ?」
白い空間?何もないし何も感じない。
「すいませーん死んだんですけどー?」
案外と記憶はしっかりしている、死んだということも結構自覚がある。
「あれあれあれ?君、ダメだよ!どうやってここに入ったの??」
「えっ!すいません!ってあれ?声だけ?どこ?」
「あぁ…よかった、見えてないんだね!ならいいならいい!
いや、よくはないのだけれどもね、」
苦笑いしたような声で俺に話しかけてくる。因みに若い感じの女性の声だ。
「あのー、ここは…どこでしょうか?目が覚めたらここにおりまして…」
できるだけ低姿勢にお伺いをたてる。
「ここは、僕の部屋なんだけれどもね、君、人間?」
「人間以外に見えます?」
「あぁ!そうかそうか、分かった。地球だ!」
「へ?」
「地球の人だろう?」
「はぁ、火星の隣の地球出身です。」
「いやいや、申し訳無い申し訳無い!少しの手違いがあったようでね、君はここに来るべきではないのだよ。
今すぐ記憶を消し飛ばして我がティラに転生させよう。」
「ちょ、ちょっと待ってください!なんか怖い!
できれば説明を頂けると…」
「ごめんねぇ、今僕すごく忙しくて時間がないのだよ。
説明をする暇さえ惜しいのだよ。あ、不味い」
不味い?なんか嫌な予感が…
「ダメだ転生させる時間すらなくなった、このまま落とすから、人里目指してなんとか生きて!サービスで少しの若返りはプレゼント!それじゃぁね!」
身体から光が溢れ出す。「キサマぁぁぁぁぁ」
「あれ!?ここは」
薄暗い森に1人たたずんでいた。