魔力を持つ者達
マイクの言葉にエイガと呼ばれた魔法使いはミラ・ジュンを見た。
「バカなことを言うなよ。あの娘はツインズ・ハートだぞ、たぶん、交代しながら戦っていたのだろう」
「いや、噂で聞いたことがある。片方は桁外れの魔力を持ち、もう片方は桁外れの闘気を持つツインズ・ハートの魔導師がいると」
マイクがそう言うと、エイガは驚く。
「それが、あの娘だというのか」
そんな二人の話しを耳にいれながら、ミラ・ジュンは笑った。
(あぁ、ばれたみたい)
《そうみたいね》
ミラの言葉にジュンが答える。暫くすると、ミラからの返事がなくなる。
《ミラ、どうしたの》
すると、ジュンに眠気が襲ってきた。
(もしかすると)
ジュンは自分がカラダのコントロールができるので、ミラが眠っていると感じる。
「あ、アックス、ミラたら、眠ってしまったみたい」
ジュンはアックスにそのことを伝えた。
「ジュンか、何時変わったのだ」
アックスは少し驚きながら訊ねた。
「たった今よ。確か此処は、宿屋も兼ねていたと思っていたけど」
ジュンは瞼を擦りながら言う。
「あぁ、その様だな、店主、少し彼女を休ませたいのだが」
その様子を見たアックスは店主を呼び出して、頼んだ。
「あ、はい、すぐに用意させますので、少しお待ち下さい」
店主はウェートレスに部屋を用意するように言う。
「部屋の用意を頼む」
「はい、すぐに用意します」
彼女は部屋を用意をする為に駆け出す。
暫くすると彼女が部屋の準備ができたと戻って来たので、アックスはミラ・ジュンに肩を貸して、彼女を部屋に連れて言った。
『アイオリス、まずは、お前を動けなくして、お前の愛する者達を目の前で、苦しめて、お前が我の足元へ跪かせて、命ごいをさせてやる』
闇の中から再び声が響く。
此処はある教会の部屋の中で、一人の歳は九歳前後の黒髪の少女が、数人の魔導師の服を着ている男達に囲まれていた。
『おい、見ろよ。なかなかいい魔力だ」
その中の一人がある水晶を見ながら笑う。
「駄目だ。こいつはツインズ・ハートだ」
彼らのリーダー格である赤毛の男性は渋い顔をした。
「なぁ、本当にいいのか、トーガ、お前には、スカウトの資格がないのに、こんなことをして」
「かまわないさ、誰もオレを止めることはできないさ」
仲間の問いに、トーガと呼ばれた男性は笑う。
その時、その部屋のドアが開き、一人の茶髪の女性が入って来た。
「アナタタチは、誰なの」
「あ、メリメさん」
その少女は部屋に入って来たその女性に助けを求めた。
「なんだ。お前は」
「私の名前は、メリメ・イラミ、この教会で保母をしています」
「ほぉ」
男性の一人があの水晶を手にして、メリメに近づいてその水晶を彼女の額に近づける。
「やめて下さい」
メリメはその男性の手を払い除けた。
「ふん、たいしたチカラもない」
男達が立ち去ろうとしたので、メリメは彼らを睨みつける。
「アナタタチには、スカウトの資格がないのでしょう」「そんなのは、お前には関係ないことだ。たいした魔力しかないのに、このオレに意見をするな」
トーガがメリメを払い除けた。
「メリメさん」
男達に囲まれていた少女が彼らから逃げ出して、メリメに駆け寄る。
「大丈夫よ。ミカ・ルヤ」
ミカ・ルヤと呼ばれた少女は頷いた。
「もう此処には、用はない、さっさと行くぞ」
男達か部屋から出ると、その教会で世話になっている子供達が、彼らを睨む。
「そんな目で我等を見るな、我等は偉いのだぞ、お辞儀をしろ」
と言いながら、立ち去った。
「なんてゆう人達なの」
メリメはある人達のことを思い出す。
(あの人達は、あんな態度はとらない、あの三人なら)
「メリメさん、お腹が減ったよ」
一人の子供の声で、メリメはふと、周りを見た。
「あ、そうだったね、じゃあ、みんなで作りましょう」
「うん、そうだったね」
子供達は元気なく、返事をする。
「あんな男達の言うことなんて、気にしないで」
メリメは子供達を元気づけた。
「だけど、僕達、魔力なんて持っていないよ」
「そんなことないわ、まだ目覚めていないだけよ」
メリメは微笑む。
「メリメさん、本当なの」
「そう、本当だから、元気を出して」
「ハイ」
子供達は元気を出して、返事をした。
「じゃあ、食事を作りましょう」
「はーい」
子供達は笑顔で答えて、メリメと共に食堂へ食事を作る為に向う。