勇者と賢者の娘たち
ミラ・ジュンとアックスはミカ・ルヤの案内で彼女達が暮らしている教会へたどり着いた。
「此処であたし達は世話になっています」
ミカ・ルヤが言っていると、一人の女性が教会から駆け寄って来る。
「ミカ・ルヤ、今まで、何処に行っていたの」
「あ、メリメさん、御免なさい」
ミカ・ルヤが謝っていると、メリメと呼ばれた女性は、一組の男女に気がつく、彼女はその男女に何故か懐かしさを感じて、よく見ると、二人共、彼女がよく知っている人達によく似ていた。
「すいませんが、あなた達はもしかしたら、アイオリス様とメテアク様やボルトさんと何か関係はありませんか」
ミラとジュンは又かと思った。一方のアックスは笑う。
「あなたは、勇者アイオリス様や賢者メテアク様とボルト殿に会われたことがあるのですか」
「はい、私はこれでも、勇者アイオリス一行の一人、僧侶メリメですよ」
メリメは少し声を押さえて言った。
「そうですか、ボクはミラ・ジュン・グラクスです」
「俺は、アックス・リバートです」
二人が名乗り終えると、メリメは笑う。
「そうなの、ミラちゃんとジュンちゃんにアックスさんですか」
その言葉にミラ・ジュンは驚いた。
「どうして、ワタシタチがツインズ・ハートだとわかったのですか」
「やっぱりそうなの、そんな気がしていたから、カマをかけてみたのよ」
メリメが笑う。
「どうして、彼女がツインズ・ハートってわかったわのですか」
アックスが訊ねると、メリメは答えた。
「ただなんとなくだけどね」
「そうですか」
ミラ・ジュンはただ呟いていると、メリメが彼女に近づいて、耳元で囁く。
「あなたって、アリタさんによく似ているわね」
そのことを聞いたミラ・ジュンは驚いた。
(なんで、この人は、お母さんの名前を知っているのよ)
《私にもわからないよ》
ミラとジュンの二人は慌てた。
「やっぱり、あなたはアイオリス様の娘でしょう」
メリメはその様子を見つめて言う。
「そんな筈はないでしょう」
ミラ・ジュンは一瞬戸惑ってしまった。
《今のは、ちょっとまずかったようね》
(ボクもそう思う)
「その様子だと、やっぱり、そうなのね」
メリメが笑うと、ミラ・ジュンは諦めることにする。
「そうです。ワタシタチは勇者アイオリス様の娘です」
「そうなのね、アリタ様とクリス様は元気ですか」
メリメは彼女に訊ねた。
「どうして、今の父の名前を知っているのですか」
「だって、あなたのお父様は、メテアク様でしょう」
メリメは笑った。その言葉にミラ・ジュンは驚く。
「と言うことは、ミラ・ジュンさんは勇者様と賢者様との間に産まれた人なの?」
ミカ・ルヤが驚いていると、アックスはやっぱりという顔をした。
「ところで、アックスさん、あなたもしかして、ボルトさんの息子さんなの」
彼女がアックスに訊ねる。
「いえ、違います。俺もボルト殿に会いたいと思っていますけど、いまだに会えていません」
アックスが答えていると、メリメは彼の顔を見て、なにかを悟った顔になった。
その時、教会の扉が開いて、数人の子供が飛び出して来る。
「魔導師なんか、此処から出ていけ」
その子供達の一人が、ミラ・ジュンを睨んだ。
「どうゆうことですか」
ミラ・ジュンが小声で、メリメに訊ねる。
「それが」
メリメは彼らが魔導師を嫌っているわけを教えた。
「そうだったのですか」
ミラはなにを思ったのか、服に手をかける。
《ミラ、なにをしているの》
(なにって、服を脱ぐつもりだけど)
ミラはジュンの言葉に言葉に答えた。
《なにを考えているよ。ミラ》
ミラはジュンが止める前に、魔導師を証明する為の上着を脱ぐと、その下には普通の服を着ていた。そのことをジュンはすっかり忘れていた。
《忘れていた。そうしていたのを》
(姉さんたら)
ミラは子供達の方を見た。
「これで、此処に泊めてくれるかしら」
それでも、子供達は彼女を睨みつける。
「ダメなのね、それなら、もう一枚脱ぎますか」
ミラはもう一枚に手をかけようとすると、子供達の中にいた女の子達が慌てだした。
「なにを考えているのですか?」
「え、だって、あなた達は、魔導師が嫌いなのでしょう」
ミラが笑う。
「それはそうだけど」
女の子達は答えに迷った。
一方の男の子達は程よい大きさのミラ・ジュンの胸に見とれる。
《ミラ、あなた、今、どうゆう状態かわかっているの》
ジュンとミラは男の子達の視線を感じた。
(えーと)
ミラは暫く考える。
(あぁ、まだ大丈夫だよ)
ミラは笑った。
「ミラ・ジュンさん、そんなことをしなくてもいいですよ」
メリメが彼女が脱いだ魔導師の服を手渡す。
「ミラ・ジュンさん、あたしたちがみんなを説得するから」
ミカ・ルヤが言った。
「有難う、ミカ・ルヤ」
ミラ・ジュンは笑顔でミカ・ルヤを見る。
ミカ・ルヤの説得で、子供達はミラ・ジュン達を受け入れることにした。
「お姉さんは、どうして、威張らないの」
子供の一人が、ミラ・ジュンを見つめて訊ねる。
「威張る?、どうして、威張る必要があるの」
ミラ・ジュンは首を捻った。
「そうだよ。強い魔力を持つ者は、偉いのだぞって、ある人が言っていたの」
「ひどいことを言う人もいるのね」
ミラ・ジュンは苦い顔をする。
「お姉さんの魔力も凄いのでしょう」
一人の女の子がミラ・ジュンに声をかけた。
「そんなに強くはないよ」
彼女は誤魔化す様に笑うと、子供達はさらに訊ね様としたので、メリメはみかねて言う。
「みんな、お腹が空いてはいないの」
その言葉に子供達はお腹が空いていることに気がついた。
「あぁ、お腹が空いた」
子供達はお腹が減っていることを思い出して騒ぎ出さす。
「じゃあ、食事の妖異をしましょう、あ、ミラ・ジュンさん、手伝ってくれますか」
メリメは彼女の方を見る。
「はい」
ミラ・ジュンは頷いた。
「それなら、俺は力仕事をしましょうか」
アックスは周りを見て、近くに置いてある斧を手に取って、薪割りを始める。
「じゃあ、お願いいたします。ミラ・ジュンさん行きましょうか」
メリメは改めてミラ・ジュンの方を見た。
「はい」
ミラ・ジュンは笑う。