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白い手
空から、声が降ってきた。
冷たい雨とは対照的な、人の、温かい声。
その声に引き寄せられるように、抱えている膝に埋めていた顔をあげた。
目の前には、白い外套をまとった人が立っている。
さめざめと雨が降る中、静かにこちらを見下ろしている。
そのフード下の顔には、見覚えがあった。
でも、ここにいる理由が思い当たらない。
どうしてこんなところにいるのか、わからない。
状況が読み込めず呆然としていると、白い外套の中から手が伸びてきた。
雨にさらされた白く綺麗な手が、頬に触れてくる。
腫れて痛む頬が、温かな手で包みこまれる。
……おそらく、そのときだったのだろう。
彼女が、私の特別になったのは――。